著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Chemistry X

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

黄金茶(Huangjincha)は、中国の茶の遺伝資源のなかでも重要とされる集団です。挿し木ではなく種子で増える(有性繁殖の)ため、個体ごとに見た目や遺伝的な性質の幅が大きいのが特徴です。この集団からは、国が認定した優良品種が6つ、品種保護を受けた品種が14生まれています。

研究チームは、この黄金茶集団がどのような成分の特徴を持つのかを、多数の系統について数値で示すことを目指しました。あわせて、機械学習を使い、黄金茶とそれ以外の茶品種を見分ける手がかりになりそうな成分を探しました。

何をどのように調べたか

2024年3月下旬から4月中旬にかけて、中国湖南省の茶研究所の試験圃場で、黄金茶232系統と比較用の茶品種13品種から新芽(一芯二葉)を摘み取りました。比較用の品種は中国各地に由来し、遺伝的背景や葉の大きさ、芽吹きの時期などが異なるものが選ばれています。すべての茶樹は同じ圃場で、同じ栽培・灌水・施肥の管理を受けていました。

摘んだ新芽はすぐに液体窒素で凍らせ、凍結乾燥して粉末にしました。その上で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:混ざった成分を分けて量を測る分析法)を用い、茶の渋み・苦み・うま味などに関わる35種類の成分を測定しました。対象は、渋みのもとになるカテキン類、カフェインなどのアルカロイド類、フェノール酸類、テアニンをはじめとするアミノ酸類の4つのグループです。

得られたデータは、ばらつきの大きさを示す変動係数などの統計手法や、多数の成分をまとめて比べる多変量解析で分析しました。さらに、ランダムフォレストなど10種類の機械学習の手法で「黄金茶か比較品種か」を判別するモデルを作り、どの成分が判別に大きく効いているかを調べました。

主な結果

黄金茶の測定成分全体のうち、カテキン類が52.83%を占めて最も多く、なかでもEGCGが最も多い成分でした。カテキン類は系統間のばらつきも大きく、著者らはカテキン類が黄金茶集団の成分の違いを生む主な源になっていると述べています。

比較品種と比べると、黄金茶はカテキン類とフェノール酸類の合計量が有意に少なく、アミノ酸類は有意に多いという結果でした。アルカロイド類には有意な差は見られませんでした。たとえば、うま味に関わるテアニンの平均含有量は、黄金茶が乾燥重量1グラムあたり23.37ミリグラム、比較品種が9.28ミリグラムと報告されています。アミノ酸類は系統間のばらつきが比較的小さく、4グループのなかで最も安定していました。

多変量解析の一つであるOPLS-DAでは、2つのグループを分けるうえで重要な15成分が挙がりました。そのうち、1,2,6-トリガロイルグルコースとエピカテキンを除くすべてが、黄金茶で有意に多い成分でした。

機械学習では、10種類の手法のうちランダムフォレストが最もよい判別性能を示しました。このモデルで判別への寄与が大きかった10成分は、メチオニン、チロシン、プロリン、1,3,7-トリメチル尿酸、アスパラギン酸、リシン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、テアニンでした。このうちメチオニン、チロシン、プロリンは、黄金茶の中でのばらつきが比較的小さく、比較品種との差もはっきりしていたため、有力な候補とされています。ただし、成分の重要度の順位はモデルや評価方法によって変わったとも報告されています。

研究から分かること

この研究は、多数の黄金茶系統の成分を数値で示し、「カテキンが主体でありながら、アミノ酸が多く安定している」という集団の特徴を明らかにしました。著者らは、このアミノ酸の豊富さが黄金茶のすっきりとした味わいの化学的な基盤になっていると考えています。

一方で、著者らは結果の受け止め方にも注意を促しています。比較品種は13品種と少なく、産地や遺伝的背景、樹の形や芽吹きの時期の違いも成分の差に影響した可能性があります。そのため、見つかった差をすべて黄金茶であることによるものとは言えません。判別性能や候補成分も、今回のデータの範囲で得られたものです。未知の茶サンプルに当てはめられるかどうかは、別の試料での検証を経て確かめる必要があるとしています。

今回挙がった成分は、黄金茶らしさを示す目印(マーカー)として確立したものではなく、あくまで今後検証していくための候補です。それでも、一つの成分だけでなく複数の成分を組み合わせて茶の特徴をとらえる手がかりを示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Yang Zhao(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)、Jiawei Yan(College of Horticulture, Northwest A&F University, Yangling, Shaanxi 712100, China)、Furong Qu(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)、Yibing Chen(College of Information Engineering, Northwest A&F University, Yangling, Shaanxi 712100, China)、Peidi Yang(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)、Zongjie Wu(College of Horticulture, Northwest A&F University, Yangling, Shaanxi 712100, China)、Yang Cheng(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)、Wenmin Fan(College of Horticulture, Northwest A&F University, Yangling, Shaanxi 712100, China)、Pengjie Wang(College of Horticulture, Northwest A&F University, Yangling, Shaanxi 712100, China)、Zhen Liu(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)、Saijun Li(Tea Research Institute, Hunan Academy of Agricultural Science/Yuelushan Laboratory, Changsha 410125, Hunan, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yang Zhao, Jiawei Yan, Furong Qu, et al. Metabolic profiling and machine learning-based identification of key metabolites in 232 Huangjincha accessions. Food Chemistry X 2026-10-28. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104708. 原著ライセンス:CC BY.