この研究は、ブラジル、スペインの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Meat Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

脂肪と塩分を一緒に減らす難しさ

ハンバーガーのパティは、脂肪や飽和脂肪酸、ナトリウムを多く含むことがあり、配合を見直す対象として注目されています。研究チームは、論文の導入で世界保健機関(WHO)の推奨に触れています。総脂肪は総エネルギー摂取量の30%以下、飽和脂肪酸は10%以下、ナトリウムは1日2000mg未満とされていますが、世界の平均ナトリウム摂取量はその2倍を超えると推定されています。

ただし、脂肪と食塩を同時に減らすのは簡単ではありません。脂肪は肉の構造や食感、ジューシーさ、風味の感じ方に関わります。食塩は肉のたんぱく質を溶かし出して水分を保ち、塩味を生み出します。両方を同時に減らすと影響が互いに絡み合うため、品質を保つのが難しくなります。

そこで研究チームは、二つの手法を一つの豚肉バーガーで組み合わせる方法を検討しました。一つは、脂肪の一部を水を多く含むゲルに置き換える方法です。もう一つは、食塩の一部を別の成分に置き換える方法です。あわせて、ゲルの水分の割合によって仕上がりがどう変わるかも調べました。

何をどう比べたのか

脂肪の置き換えには、サイリウムという食物繊維素材を使いました。サイリウムは水を吸ってゲル状の網目をつくる性質があります。研究チームは、サイリウムと水の比率を1対2、1対4、1対6の3通りにしてゲルを作り、豚の背脂の50%をこのゲルに置き換えました。

減塩には、通常の食塩2.0%の代わりに、3成分を合わせた1.8%の配合を使いました。内訳は、ふるいで細かい粒だけを集めた微粒化食塩1.0%、塩化カリウム0.5%、うま味調味料のグルタミン酸ナトリウム0.3%です。塩化カリウムは塩味を補う素材としてよく使われますが、多く使うと苦味や金属的な味が出ることがあります。グルタミン酸ナトリウムはその欠点を和らげる役割として、微粒化した食塩は口の中で溶けやすく塩味を感じやすくする狙いとして、それぞれ論文で説明されています。

比較したのは8種類のバーガーです。背脂20%と通常の食塩2%の基準品に加え、減塩配合だけを使ったもの、3種類のゲルだけを使ったもの、ゲルと減塩配合を組み合わせた3種類を用意しました。研究チームは、成分組成、脂肪酸、ナトリウムとカリウムの量、加熱後の重量の残り具合(加熱歩留まり)、色、機器で測った硬さなどの食感を調べました。さらに、訓練を受けた15人のパネルが、味や食感を項目ごとに評価しました。

主な結果

サイリウムのゲルを使ったバーガーでは、基準品に比べて脂肪量が33.6〜43.8%減り、飽和脂肪酸もおよそ34〜44%減りました。減塩配合を使ったバーガーでは、ナトリウムが100gあたり825mgから469〜471mgへと約43%減り、カリウムは299mgから561〜587mgへ増えました。ナトリウムとカリウムのモル比(物質量の比)は、4.69から1.36〜1.42に下がりました。

論文によると、ゲルを使った配合は欧州の「脂肪低減」と「飽和脂肪低減」の表示基準を満たしました。減塩配合を使ったものは「ナトリウム低減」の基準を満たしました。その結果、両方を組み合わせた配合は三つの表示基準すべてを満たしました。

加熱歩留まりについては、減塩配合だけのバーガーが74.2%で、基準品の82.0%と統計的な差はありませんでした。ゲルを使った配合は84.2〜90.2%で、減塩配合だけのものより高い値でした。ただし、基準品より有意に高かったのは1対2のゲルだけを使った配合に限られます。

食感は、主にゲルの有無で変わりました。ゲルを使った配合では、基準品に比べて硬さが43.5〜65.3%、噛みごたえを表す値が65.7〜83.8%低下しました。一方、減塩配合が機器で測った食感に与えた影響は小さいものでした。色では赤みに有意な差がなく、一部のゲル入り配合で明るさが基準品より低くなりました。

官能評価では、1対4のゲルと減塩配合を組み合わせたバーガーが、やわらかさやジューシーさと結びついていました。1対6のゲルと減塩配合の組み合わせは、ナトリウムが少ないにもかかわらず塩味と結びついていました。ただし論文は、これは評価全体の中での相対的な位置づけを示すもので、基準品と同じ強さの塩味だと示したわけではないと述べています。

この研究が示すこと

研究チームは、背脂の50%を置き換えるという条件の生の豚肉バーガーで、サイリウムのゲルと減塩配合を組み合わせれば脂肪とナトリウムを同時に減らせることを、技術的に実現可能な方法として示しました。ゲルの水分比率と塩の配合の組み合わせによって、栄養、加工特性、食感や味わいの特徴が変わることも分かりました。

一方で、著者らは、保存中の品質の安定性や一般の消費者に受け入れられるかどうかはまだ評価しておらず、実用性を判断するにはその確認が必要だとしています。

著者:Leticia Pereira Correa(Universidade Federal de Santa Maria, CEP 97105-900, Santa Maria, Rio Grande do Sul, Brazil)、Jose Manuel Lorenzo Rodriguez(Area de Tecnología de los Alimentos, Facultad de Ciencias de Ourense, Universidade de Vigo, 32004 Ourense, Spain)、Roberto Bermúdez(Centro Tecnológico de la Carne de Galicia, Adva. Galicia n° 4, Parque Tecnológico de Galicia, San Cibrao das Viñas, 32900 Ourense, Spain)、Laura Purriños(Centro Tecnológico de la Carne de Galicia, Adva. Galicia n° 4, Parque Tecnológico de Galicia, San Cibrao das Viñas, 32900 Ourense, Spain)、Paulo Cezar Bastianello Campagnol(Universidade Federal de Santa Maria, CEP 97105-900, Santa Maria, Rio Grande do Sul, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Leticia Pereira Correa, Jose Manuel Lorenzo Rodriguez, Roberto Bermúdez, et al. Psyllium gel combined with a micronized NaCl–KCl–glutamate system for simultaneous fat and sodium reduction in pork burgers. Meat Science 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.meatsci.2026.110234. 原著ライセンス:CC BY.