著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Frontiers in Ecology and Evolution
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、根にこぶをつくる植物寄生性の線虫Meloidogyne incognitaに感染したトマトで、細菌Bradyrhizobium japonicumの11477株が被害を抑え、生育を支えられるかを調べました。根こぶ線虫は根の内部に寄生して養分を得る場所をつくり、トマトの生育を妨げます。著者らは、細菌の利用による感染の抑制と、植物の光合成やストレスへの防御反応の変化を併せて評価しました。
何を、どのように調べたか
研究チームは温室内で、線虫に感染しやすいトマト品種「Pusa Ruby」を栽培しました。処理条件は、無処理、線虫のみ、細菌の菌体のみ、細菌を取り除いた培養液の上澄みのみ、線虫と菌体の併用、線虫と上澄みの併用の6群です。菌体は1ミリリットル当たり10億個の濃度に調製し、上澄みは希釈せずに使用しました。
線虫感染から45日後に、根や地上部の長さ・重さ、根のこぶの数、クロロフィルなどの光合成色素、光合成速度や葉のガス交換を測りました。また、過酸化水素や、脂質の酸化による損傷の指標となるマロンジアルデヒド(MDA)、酸化によるストレスへの防御に関わる酵素や抗酸化物質、フェノール性化合物も調べました。実験は生物学的に独立した3反復で行い、処理群の間で比較しました。
主な報告結果
著者らによると、線虫だけを接種したトマトでは、無処理群に比べて根の長さが36.15%、地上部の長さが35.00%低下しました。一方、感染したトマトに菌体または培養上澄みを与えると、生育が改善し、根のこぶも減りました。線虫のみの群と比べたこぶの数の減少率は、菌体の併用で38.35%、上澄みの併用で50.68%でした。植物全体の重量は、それぞれ53.10%、99.27%増加したと報告されています。
光合成に関わる指標にも変化が見られました。線虫のみの群では、無処理群より総クロロフィル量が31.08%低下しましたが、感染した植物への菌体処理では線虫のみの群より88.33%、上澄み処理では113.52%増加しました。葉の単位面積・単位時間当たりの二酸化炭素の正味吸収量を示す純光合成速度も、線虫のみの群の2.721マイクロモル毎平方メートル毎秒に対し、菌体併用群で4.312、上澄み併用群で5.408でした。
研究チームはさらに、細菌処理によって、感染に伴って増加した過酸化水素やMDAなどのストレス指標が低下したと報告しました。感染した植物では、菌体・上澄みのいずれの処理でも、線虫のみの群に比べて抗酸化酵素の活性や、グルタチオン、アスコルビン酸などの抗酸化物質、フェノール性化合物が増加しました。
この報告が示すこと
著者らは、この細菌が線虫感染下のトマトの耐性や回復を支えると解釈しています。菌体だけでなく、菌体を取り除いた培養上澄みでも効果が見られたことから、細菌がつくる物質を含めた微生物の働きを、線虫被害の管理に生かす可能性を示す報告です。今回の結果は、特定のトマト品種と細菌株を用いた温室内の45日間の試験で得られたものとして位置づけられます。
原著論文の著者・所属:Roohi Sharma(Department of Zoology, Guru Nanak Dev University)、Parul Chauhan(Department of Bioscience and Biotechnology, Banasthali Vidyapith)、Nitika Kapoor(Department of Botanical and Environmental Sciences, Guru Nanak Dev University)、Puja Ohri(Department of Zoology, Guru Nanak Dev University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Roohi Sharma, Parul Chauhan, Nitika Kapoor, et al. Modulation of tomato health and metabolic responses during root-knot nematode infestation under glasshouse conditions. Frontiers in Ecology and Evolution(出版社:Frontiers Media) 2026-08-11. DOI: 10.3389/fevo.2026.1872830. 原著ライセンス:CC BY.