著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

身近にどのような食品店があるかは、人々の食の選択に影響する要因の一つと考えられています。また、食品店の分布は地域の社会経済的な格差を反映している可能性も指摘されてきました。研究チームは、ブラジル北東部パライバ州の州都ジョアンペソアを対象に、地域の社会経済状況と食品小売店の分布との関係を調べました。

ジョアンペソアは、所得の偏りを示すジニ係数が0.629で、ブラジルの州都の中で所得格差が最も大きい都市とされています。ジニ係数は0(完全な平等)から1(最大の不平等)までの値をとる指標です。著者らによれば、ブラジルのこれまでの研究は南東部や南部の大都市が中心で、所得や教育といった単独の指標が使われることが多かったといいます。そこで本研究では、北東部の州都を対象に、複数の側面を組み合わせた社会経済指標を用いて分析しました。

何をどう調べたか

研究チームは、州の財務当局と市役所から提供された2023〜2024年の登録データをもとに、市内の食品小売店を集めました。登録住所はGoogleストリートビューや衛星画像で確認し、閉店していた店や食品販売が主な事業ではない店は除きました。公式記録に含まれない青空市場やキオスク(売店)については、自治体のウェブサイトや地元ニュースを調べたほか、海岸沿いのキオスクは現地でも確認しています。

店は、主に扱う食品の種類によって三つに分類されました。生鮮食品のように加工をほとんど経ていない「未加工食品」、「加工食品」、そして工業的に多くの加工を経て作られる「超加工食品」です。この分類は、個々の店の品ぞろえをすべて調べたものではありません。業種ごとに主に扱われる食品の傾向に基づいて分けています。

地域の社会経済状況の指標には、ブラジルで健康研究のために開発された複合指標「GeoSES」を使いました。この指標は2010年の国勢調査データに基づき、教育、所得、貧困、物質的剥奪(生活基盤の欠乏)、移動性などの側面を組み合わせています。値は−1から+1の範囲をとり、高いほど社会経済状況が良いことを示します。市は12の集計地域に分けられ、地域ごとの店の数と社会経済指標との関係を、地図、相関分析、統計モデルで調べました。統計モデルでは、地域ごとの人口の違いも考慮しています。

主な結果

分析対象となった食品店は5087店でした。そのうち69.9%(3554店)が主に超加工食品を扱う店、24.7%(1259店)が主に未加工食品を扱う店、5.4%(274店)が主に加工食品を扱う店に分類されました。

未加工食品を扱う店は、教育や所得の指標が高い沿岸部や中心部に多く、社会経済指標が低い周縁部では少ない傾向が見られました。こうした店の数とGeoSES全体との間には強い正の相関があり(相関係数0.85)、教育や所得の側面とも同様に強く関連していました。人口の違いを考慮したモデルでは、GeoSESの値が1高いごとに、未加工食品を扱う店の予想数が約2.05倍になる関連が報告されています。

一方、超加工食品を扱う店は市内全域に多く見られました。社会経済指標の低い地域でも、未加工食品の店より多く存在していました。統計モデルでは、超加工食品の店と加工食品の店のいずれについても、GeoSESとの統計的に意味のある関連は確認されませんでした。著者らは、こうした店は地域の社会経済状況にかかわらず、比較的均等に分布していたとまとめています。

結果が示すこと

この研究は、所得格差の大きい都市で、未加工食品を扱う店が社会経済的に恵まれた地域に偏って分布していることを示しました。一方で、超加工食品を扱う店は市内に広く行き渡っていました。ただし、著者らは注意点も挙げています。この研究が見ているのは店が物理的にあるかどうかであり、価格の手ごろさ、食品の質、実際の購買や食事は調べていません。また、地域単位の観察研究のため、因果関係は示せません。さらに、分析単位が12地域と少なく、社会経済指標が2010年のデータに基づいている点も限界として挙げられています。

それでも、どの地域で健康的な食品を扱う店が少ないかを地図上で明らかにした点は、食料へのアクセスの地域格差を考える手がかりになります。著者らは、こうした知見が、不足している地域で未加工食品の店を増やす政策や、都市計画に食環境の視点を取り入れる検討に役立ちうると述べています。

原著論文の著者・所属:Joerika Ciqueira(Observatório das Desigualdades em Alimentação e Nutrição, Departamento de Nutrição, Centro de Ciências da Saúde, Universidade Federal da Paraíba, Campus I, Cidade Universitária, João Pessoa 58051-900, PB, Brazil)、Denise Sales(Fundação Oswaldo Cruz—Centro de Integração de Dados e Conhecimentos para Saúde/CIDACS, Parque Tecnológico da Bahia, R. Mundo, 121, Trobogy, Salvador 41745-715, BA, Brazil)、Patrícia Freitas(Grupo de Pesquisa de Intervenções em Nutrição, Nutrition Building JK Campus—Highway BR 367—Km 583, Universidade Federal dos Vales do Jequitinhonha e Mucuri, Alto da Jacuba District, Diamantina 39100-000, MG, Brazil)、Cecília Craveiro(Observatório das Desigualdades em Alimentação e Nutrição, Departamento de Nutrição, Centro de Ciências da Saúde, Universidade Federal da Paraíba, Campus I, Cidade Universitária, João Pessoa 58051-900, PB, Brazil)、Aline Lopes(Grupo de Pesquisa de Intervenções em Nutrição, Departamento de Nutrição, Universidade Federal de Minas Gerais, Escola de Enfermagem, 190 Alfredo Balena Avenue, Nursing School, Room 316, Santa Efigênia, Belo Horizonte 30130-100, MG, Brazil)、Mariana Lopes(Observatório das Desigualdades em Alimentação e Nutrição, Departamento de Nutrição, Centro de Ciências da Saúde, Universidade Federal da Paraíba, Campus I, Cidade Universitária, João Pessoa 58051-900, PB, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Joerika Ciqueira, Denise Sales, Patrícia Freitas, et al. Food Retail Inequities in the Capital with Greatest Income Inequality in Brazil. Nutrients 2026-10-22. DOI: 10.3390/nu18213472. 原著ライセンス:CC BY.