著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Gizi dan Dietetik Indonesia (Indonesian Journal of Nutrition and Dietetics)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ学校の飲み物に注目したのか
インドネシアでは、やせなどの栄養不足と、過体重・肥満などの栄養過多が同時に存在する「栄養不良の二重負荷」が課題となっています。研究チームによると、全国健康調査では若い世代で糖の処理能力の低下(耐糖能異常)がみられる割合が高く、思春期の食習慣が将来の代謝の病気につながる可能性が懸念されています。
著者らは、とくに砂糖入り飲料に注目しました。生徒は1日の7〜10時間を学校で過ごし、休み時間には校内の売店(カンティーン)で安い甘い飲み物を手に取りやすい環境にあります。一方、インドネシアの学校売店で甘い飲み物がどれだけ出回っているかを調べた研究は限られていました。そこで研究チームは、都市部の学校売店でどのような飲み物が売られ、エネルギーと糖分がどの程度含まれているかを明らかにすることを目的としました。
どのように調べたのか
調査は2023年8月から11月にかけて、東ジャワ州の州都スラバヤの市中心部に近い公立高校2校で行われました。売店は複数のブースに分かれ、各ブースを個々の販売者が学校の監督のもとで運営していました。研究チームは、ここで売られている飲み物478点を分析対象としました。
店で作る飲み物については、販売者への聞き取りで1杯分のレシピと容量を確認し、実際に使っているカップや容器も見せてもらって、栄養計算ソフトでエネルギーと糖分を見積もりました。市販の容器入り飲料については、商品の栄養成分表示を記録しました。そのうえで、1杯(1食分)あたりの値を飲み物の種類ごとに平均してまとめています。ある時点の状況を記述する調査であり、飲み物と健康との因果関係を直接調べたものではありません。
主な結果
売店の飲み物は、紅茶、乳飲料、インドネシアの伝統的な飲み物、コーヒー、チョコレート飲料、炭酸飲料、エナジードリンクなど10種類に分類されました。最も多かったのは人工的に香りや味をつけた飲み物で、全体の約45%を占めました。店で作る飲み物と容器入りの市販品の両方が並び、価格は1杯2,000〜5,000ルピア、平均的な量は約225mlでした。
1杯あたりの平均エネルギーが最も高かったのは乳飲料(約141kcal)で、エス・コピョールやエス・チャオなどの伝統的な飲み物(約138kcal)が続きました。著者らは、これらが13〜18歳向けのインドネシアの1日の推奨エネルギー量の14〜17%ほどにあたると試算しています。一方、人工的な香味料入りの飲み物は約44kcalと最も低い値でした。
糖分では、伝統的な飲み物が1杯あたり平均約24gと最も多く、論文はこれをWHOの推奨を上回る水準と報告しています。WHOは、添加された糖の摂取を1日の総エネルギーの10%未満に抑え、さらに5%未満を目指すことを勧めており、論文では5%は成人で1日約25gに相当すると説明されています。また、店で作る飲み物は、容器入りの市販品よりもエネルギー・糖分とも平均して多い傾向がみられました。著者らは、レシピや量が決まっておらず、販売者が味を良くするために砂糖や加糖練乳を加えることが一因と考えています。
研究チームは、香味料入り飲料やエナジードリンクのように糖分が比較的少ない飲み物でも、栄養価は低いと指摘しています。また、調査した学校には生徒向けの水道水がなく、飲み物の安さも甘い飲料を選びやすくする要因になりうると述べています。
この研究が示すこと
著者らは、都市部の学校売店が高エネルギーで甘い飲み物にあふれた「甘すぎる環境」になっていると結論づけています。健康によいと思われがちな伝統的な飲み物や、店で作る飲み物にも多くのエネルギーや糖分が含まれうる点は、身近な選択を見直すきっかけになる知見です。
ただし、調査は1つの都市の公立高校2校に限られ、食べ物は対象外であるため、農村部や私立校にそのまま当てはまるとは限りません。そのうえで研究チームは、甘い飲料の販売規制、販売者への研修、無料の飲み水の提供、より健康的な飲み物の普及といった、学校の飲食環境を整える取り組みの必要性を訴えています。
原著論文の著者・所属:Lini Anisfatus Sholihah(Department of Nutrition, Faculty of Sport Sciences and Health, Universitas Negeri Surabaya, Surabaya, Jawa Timur, 60213, Indonesia; Southeast Asian Ministers of Education Organization Regional Centre for Food and Nutrition (SEAMEO RECFON), Pusat Kajian Gizi Regional (PKGR) Universitas Indonesia, Jakarta 13120, Indonesia)、Irvan Adhin Cholilie(Department of Agroindustrial Technology, Faculty of Technology and Industry, Universitas Internasional Semen Indonesia (UISI), Gresik, Jawa Timur, 61122, Indonesia)、Luh Ade Ari Wiradnyani(Southeast Asian Ministers of Education Organization Regional Centre for Food and Nutrition (SEAMEO RECFON), Pusat Kajian Gizi Regional (PKGR) Universitas Indonesia, Jakarta 13120, Indonesia; Department of Nutrition, Faculty of Medicine, Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangkusumo General Hospital, Jakarta 10430, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lini Anisfatus Sholihah, Irvan Adhin Cholilie, Luh Ade Ari Wiradnyani A too sweet environment? An analysis of the energy and sugar content of beverages in urban schools setting in Surabaya. Jurnal Gizi dan Dietetik Indonesia (Indonesian Journal of Nutrition and Dietetics) 2026-07-31. DOI: 10.21927/ijnd.2026.14(4).314-323. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。