この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Sinergi Jurnal Ilmiah Multidisiplin
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的と背景
出産後に体が回復していく期間を産褥期といいます。この時期は、傷の回復や母乳づくりのために多くの栄養が必要です。しかし、エネルギーや栄養素の不足が長く続く「慢性エネルギー不足(KEK)」の状態にあると、回復の遅れや母乳の出への影響、感染症などのリスクが高まるとされています。著者らは、食生活の乱れがこの状態の一因になると述べています。
研究チームによると、インドネシア東ジャワ州ボジョネゴロ県では、2024年の産後の母親における慢性エネルギー不足の割合が11.7%でした。研究の舞台となったスギワラス保健センターでは、この割合が2024年の11.85%(270人中32人)から、2025年には14.38%(292人中42人)に増えていました。この論文は、こうした状況のもとで、慢性エネルギー不足と食生活の乱れを抱える産後の母親1人に助産ケアを行い、その経過を記録した症例報告です。
どのような母親に、どんなケアを行ったか
対象は25歳の女性で、2026年3月16日に同保健センターで2人目の子どもを出産しました。妊娠中から、めまいや目のくらみが出たり消えたりを繰り返していました。幼い子ども2人の世話で疲れて食欲が落ち、食事は量が少なく時間も不規則になっていたと報告されています。
初回の診察では、体重44kg、身長152cm、上腕周囲長22cmでした。上腕周囲長は二の腕の太さを測る値で、栄養状態をみる指標です。顔や目の結膜、唇には青白さもみられました。著者らは文献に基づき、上腕周囲長23.5cm未満を、産後の母親の慢性エネルギー不足を判定する主な目安として示しています。助産師はこの測定結果などをもとに、この女性を慢性エネルギー不足の産後の母親と判断しました。
ケアは2026年4月に、3回の訪問を通して行われました。記録には「SOAP」という方法が使われました。本人の訴え、診察の所見、判断、対応を順に記録していくやり方です。ケアでは、体調や血圧などを定期的に確認し、栄養状態もみていきました。そのうえで、貧血予防のための鉄剤と補助食を提供しました。あわせて、食事の「種類・量・時間」の三つを整える「3J」という栄養指導も行いました。さらに栄養士と連携し、食生活の立て直しを支えました。
報告された経過
著者らによると、3回目の訪問時には母親の状態に改善がみられました。体重は44kgから44.8kgに増え、元気そうな様子になり、めまいや疲れやすさの訴えも減りました。また、食欲が増し、より規則正しく栄養のある食事をとり始めたことも報告されています。結論部分では、上腕周囲長も増えたと述べられています。
この報告が示すこと
研究チームは、継続的な記録に基づく助産ケアと栄養士との連携が、慢性エネルギー不足と食生活の乱れを抱える産後の母親に役立ったとまとめています。具体的には、体調の改善と、栄養の大切さへの理解の向上です。これは1人の母親の経過を記録した報告です。それでも、出産後の母親が抱える疲れや食生活の乱れに地域の保健センターがどう寄り添ったかを、具体的に伝えています。
著者:Nandita Rahma Laida Ali(Prodi D-3 Kebidanan Bojonegoro, Poltekkes Kemenkes Surabaya)、Lilik Triyawati(Prodi D-3 Kebidanan Bojonegoro, Poltekkes Kemenkes Surabaya)、Abdul Latip(Prodi D-3 Kebidanan Bojonegoro, Poltekkes Kemenkes Surabaya)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nandita Rahma Laida Ali, Lilik Triyawati, Abdul Latip. Case Report Intervensi Kekurangan Energi Kronik (KEK) pada Ibu Nifas dengan Gangguan Pola Makan di Puskesmas Sugihwaras Kabupaten Bojonegoro. Sinergi Jurnal Ilmiah Multidisiplin 2026-09-12. DOI: 10.66914/67rq8108. 原著ライセンス:CC BY.