この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Novera Journal of Economics and Business
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアのスラバヤでは、抹茶を使った飲み物や食品が数多く出回るようになりました。しかし著者は、選択肢が増えたからといって、消費者がそのまま抹茶製品を受け入れ、選び、買い続けるとは限らないと指摘します。そこで本研究は、消費者が抹茶製品をどう認識しているのか、そしてその認識がどのように購買の判断につながるのかを明らかにすることを目的としました。
著者によれば、先行研究の多くは食品選択を実験的な場面や一般的な文脈で扱ってきたため、消費者が味・香り・健康面の利点・価格・製品の魅力を同時にどう解釈しているのかは十分に説明されてこなかったといいます。本研究はその点を、地域の消費現場に即して検討しようとしたものです。
調べ方
調査は2026年2月から4月にかけて行われました。用いられたのは質的研究の手法で、なかでも「現象学的アプローチ」と呼ばれる方法です。これは、統計的に数を集めて平均を出すのではなく、当事者が体験をどのように意味づけているかを聞き取りから深く理解しようとする方法を指します。
対象となったのは、スラバヤ在住で抹茶製品を飲んだり食べたりした経験があるという条件で選ばれた6人でした。20代の学生・会社員・教員・販売スタッフなどが含まれます。著者は観察、掘り下げた聞き取り、記録資料の収集という三つの方法でデータを集め、内容分析によって、語られた内容を整理し、テーマ同士の関係のパターンを読み取っていきました。
報告された主な結果
著者は、消費者の抹茶に対する認識が五つの側面から形づくられていたと報告しています。製品についての知識、味と香りの体験、健康面での利点の受け止め方、価格と品質の評価、そして見た目や流行としての魅力です。
6人の反応は一様ではありませんでした。強く受け入れる人、おおむね好意的な人、どちらでもない人、そして拒否する人までが含まれていたと報告されています。抹茶を「健康的で今風、見た目もよい」と捉える人がいる一方、「苦すぎるし香りが強い」と最初から関心を持てなかった人もいました。著者は、消費者は中立の状態で体験に入るのではなく、味わう前からすでに期待が形づくられている、と述べています。
受け入れと拒否を最もはっきり分けていたのは味と香りでした。苦みを抹茶らしさと受け止める人にとってそれは魅力ですが、合わないと感じた人にとっては買わない理由になりました。注目されるのは、健康面の利点の扱いです。それは好意的な認識を補強する働きはするものの、味や香りへの拒否感を覆すことはできなかったと報告されています。「体によいと言われるのは知っているが、味が好きでなければやはり欲しくない」という語りが、その例として挙げられています。
見た目や流行についても同様の限界が示されました。SNS映えや話題性は最初の関心を引き出しますが、それが定期的な購入につながるとは限りません。価格は、消費者が抹茶に十分な価値を感じているかを浮かび上がらせる役割を果たしていました。同じ「やや高い」という価格でも、味と品質が伴えば納得できるとする人と、見合わないとする人に分かれたのです。
これらの結果から著者は、「試してみたい」という気持ちと「もう一度買いたい」という気持ちは別のものであり、購買の判断は製品の人気そのものではなく評価の過程を通じて形づくられる、と論じています。その結果として、日常的な購入、状況次第の購入、そして再購入しないという判断が分かれて現れていました。
この研究が示すこと
著者は、抹茶が消費者に受け入れられるかどうかは、健康的なイメージや流行だけでは説明できないと結論づけています。知識という認知的な側面、味や香りという感覚的な側面、利点という機能的な側面、価格と品質という価値の側面、そして社会的な側面が、互いに結びつきながら評価をつくり上げているからです。
著者自身が述べているとおり、本研究は6人の語りに基づくものであり、スラバヤの抹茶消費者全体に一般化することを意図したものではありません。それでも、同じ製品が人によって正反対の評価を受ける理由を、消費者の体験の側から説明した点に、この研究の意味があります。
著者:Ardila Aprillia(Universitas Widya Kartika, Surabaya, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ardila Aprillia. From perception to purchase decision: A multidimensional exploration of consumer responses to matcha-based products in Surabaya. Novera Journal of Economics and Business 2026-09-07. DOI: 10.67964/qr4mjq27. 原著ライセンス:CC BY.