病気やけがなどで口から十分に食事がとれないとき、チューブを通して直接消化管に栄養を送る「経腸栄養」が使われます。糖尿病のある患者向けの経腸栄養剤には、血糖値への配慮から炭水化物の量を抑える工夫がされていますが、その分エネルギー密度が低くなりやすいという課題があるといいます。少ない量で必要なエネルギーを補えないと、栄養不足につながる恐れもあります。
今回紹介する研究では、こうした課題に対して、地域で手に入りやすい食材である「アワ(Setaria italica)」と「ナマズ(Clarias gariepinus)」を使い、糖尿病患者向け経腸栄養剤のエネルギー密度を高められないかが検討されました。糖尿病の患者数が増える中、経腸栄養を通じて必要な栄養を満たすことは、合併症を防ぐうえでも重要だとされています。
研究でわかったこと
研究チームは、アワ粉とナマズ粉の配合割合を変えた4種類の試作品(F1:アワ45対ナマズ10、F2:アワ50対ナマズ5、F3:アワ50対ナマズ10、F4:アワ55対ナマズ5)を作成し、栄養基準を満たすように成分を調整しました。そのうえで、チューブを通る流れやすさ(流動性)、粘度、味や香りなどの官能評価、色の違い(色差)、そして「MPE(Metode Perbandingan Eksponensial)」という手法を用いた最適配合の選定、さらにタンパク質・脂質などの詳細な成分分析(プロキシメート分析)や食物繊維量の測定が行われました。
その結果、開発された製剤のエネルギー密度は1ml当たり1.01〜1.03kcalとなり、栄養成分の配分は基準に沿ったものだったと報告されています。いずれの試作品も、経鼻胃管(NGT)を7〜9秒で通過できる流動性を示し、粘度は14.30〜16.35mPa·sの範囲でした。官能評価では、香りの項目で試作品間に統計的に意味のある差が見られた(p=0.037)とされています。また色差の測定では、F3が最も濃い色、F2が最も薄い色を示したということです。
最適な配合を選ぶ試験の結果、選ばれたのはF4(アワ55対ナマズ5)でした。F4はNGTを8.18秒で通過し、粘度は14.5mPa·sだったと報告されています。成分としては、100gあたりエネルギー756.80kcal、タンパク質18.61g、脂質10.81g、炭水化物147.67g、食物繊維7.86g、水分20.90%、灰分6.71%が含まれていたとされています。研究チームは、このEN-JEWELという経腸栄養剤、特にF4の配合が、エネルギー密度を高める可能性を持つとまとめています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、製剤の配合や物理的な特性(流動性、粘度、色、官能評価、栄養成分)を検討したものであり、実際に患者に投与してその効果や安全性を確認した臨床研究ではない点に注意が必要です。エネルギー密度を高められる可能性が示されたという段階の報告であり、糖尿病の症状の改善や予防を裏付けるものではありません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点をふまえて読んでいただければと思います。
まとめ
今回の研究では、アワとナマズという身近な食材を使い、糖尿病患者向け経腸栄養剤のエネルギー密度を高める配合の検討が行われました。複数の配合を比較した結果、アワ55対ナマズ5の配合(F4)が、流動性や粘度などの点で選定基準に合致し、一定のエネルギー密度を示したと報告されています。今後、こうした知見がどのように活用されていくのか、続報にも注目したいところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:EN-JEWEL:アワ(Setaria italica)とナマズ(Clarias gariepinus)を用いた糖尿病用経腸栄養剤のエネルギー密度向上(メディア・ギジ・ケスマス・2026年06月)