著者の所属・活動拠点の国は、エクアドルです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
果皮の精油を同じ条件で比べる
オレンジなどのかんきつ類を加工すると、大量の果皮が残ります。果皮には香り成分などが含まれており、そこから精油を取り出すことは、加工の残りものを有用な素材として活用する方法の一つと考えられています。
ただし、精油の性質は果実の種類や産地、熟し具合、取り出し方などによって大きく変わります。これまでの研究では材料や方法がそれぞれ異なっていたため、2種類のかんきつの精油を同じ手順でそろえて比べた例は多くありませんでした。
そこでエクアドルの研究チームは、同国で身近なかんきつであるバレンシアオレンジ(スイートオレンジ)とダイダイ(サワーオレンジ)の果皮から、同じ手順で精油を取り出しました。そのうえで、精油がどれだけ得られるか、抗酸化の働き、食中毒に関わる細菌への抗菌の働きを比較しました。
どのように調べたか
研究チームは、エクアドル国内で入手した果実の果皮を刻み、重曹を溶かした水にしばらく浸してから、水蒸気蒸留で精油を集めました。水蒸気蒸留は、蒸気で植物の香り成分を運び出し、冷やして回収する方法です。
抗酸化の働きは、ABTS法とFRAP法という2種類の化学的な測定法で調べました。ABTS法は、反応しやすい不安定な分子(ラジカル)を試料がどれだけ打ち消せるかを、FRAP法は試料が鉄の化合物をどれだけ還元できるかをみる方法です。仕組みが異なるため、著者らは2つの結果を別々の指標として扱っています。
抗菌の働きは、大腸菌、赤痢菌の仲間(シゲラ属)、黄色ブドウ球菌、セレウス菌の4種類の細菌を対象に、ディスク拡散法で調べました。細菌を広げた培地に精油をしみこませた小さな紙の円盤を置き、その周りに細菌が育たない透明な輪(阻止円)ができるかどうかと、その直径を測る方法です。
抗酸化はバレンシア、抗菌はダイダイ
精油の得られる量は、どちらの果皮でも果皮100グラムあたり1.25ミリリットルで、同じでした。
抗酸化の働きは、2つの測定法のどちらでもバレンシアオレンジの精油のほうが高くなりました。ABTS法ではダイダイの約2.80倍、FRAP法では約2.62倍の値でした。
抗菌の働きでは、結果が逆になりました。ダイダイの精油は4種類すべての細菌に対して阻止円をつくり、その平均直径は16.0ミリから29.5ミリでした。最も大きかったのは黄色ブドウ球菌とセレウス菌に対する29.5ミリです。一方、バレンシアオレンジの精油では、同じ条件でどの細菌に対しても阻止円は確認されませんでした。
なお著者らは、阻止円の大きさには精油のしみ広がり方なども影響するため、直径の大小をそのまま抗菌力の強さの順位とはみなしていません。また、今回の比較は、それぞれ用意した1回分の精油についての結果であり、品種全体の性質を示すものではないと述べています。
取れる量が同じでも働きは異なる
この研究から分かるのは、同じ方法で同じ量の精油が得られても、果実の種類によってその働きがはっきり異なる場合があるということです。今回の条件では、バレンシアオレンジの精油は抗酸化の働きが、ダイダイの精油は抗菌の働きが目立ちました。
著者らは、精油に含まれる成分を直接分析していないため、どの成分がこうした違いを生んだのかはまだ分かっていないとしています。かんきつの果皮をひとまとめの廃棄物として扱うのではなく、種類ごとの性質に応じて活用を考える手がかりとなる結果です。
原著論文の著者・所属:Juan Gaibor-Chávez(Carrera de Agroindustria, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Recursos Naturales y del Ambiente, Universidad Estatal de Bolívar (UEB), Guaranda 020150, Ecuador)、Orlando Meneses-Quelal(Carrera de Alimentos, Facultad de Industrias Agropecuarias y Ciencias Ambientales, Universidad Politécnica Estatal del Carchi (UPEC), Tulcán 40101, Ecuador)、Franz Verdezoto-Mendoza(Carrera de Agroindustria, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Recursos Naturales y del Ambiente, Universidad Estatal de Bolívar (UEB), Guaranda 020150, Ecuador)、Angélica Tigre-León(Carrera de Agroindustria, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Recursos Naturales y del Ambiente, Universidad Estatal de Bolívar (UEB), Guaranda 020150, Ecuador)、Favian Bayas-Morejón(Carrera de Agroindustria, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Recursos Naturales y del Ambiente, Universidad Estatal de Bolívar (UEB), Guaranda 020150, Ecuador)、Sthefany Gaibor-Cruz(Carrera de Agroindustria, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Recursos Naturales y del Ambiente, Universidad Estatal de Bolívar (UEB), Guaranda 020150, Ecuador)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Juan Gaibor-Chávez, Orlando Meneses-Quelal, Franz Verdezoto-Mendoza, et al. Antioxidant and Antimicrobial Activity of Citrus sinensis and Citrus aurantium Essential Oil Against Foodborne Bacterial Pathogens. Foods 2026-10-29. DOI: 10.3390/foods15213867. 原著ライセンス:CC BY.