著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
マドレーヌは貝殻の形をしたフランス生まれの焼き菓子で、軽く柔らかな食感が特徴です。主な材料の一つは小麦粉です。著者らによると、インドネシアは小麦を輸入に頼っており、その輸入量は増加傾向にあります。そのため、国内で手に入る食材で小麦粉の一部を置き換える工夫が求められているといいます。
研究チームが着目したのは、地元の食材であるかぼちゃ(Cucurbita moschata)です。かぼちゃのピューレは水分と食物繊維が多く、黄色からオレンジ色の色素であるカロテノイドを含みます。そのため、生地の構造や膨らみ、焼き上がりの色や食感に影響する可能性があります。かぼちゃピューレを使った蒸しケーキなどの研究はすでにありますが、マドレーヌで膨らみや焼成中の重量減少と、見た目・味・食感をあわせて評価した例は限られていました。そこで本研究は、かぼちゃピューレによる置き換えがマドレーヌの物理的な品質と官能的な品質(人が五感で評価する品質)に与える影響を調べました。あわせて、最も良い製品になる置き換え割合を明らかにすることを目指しました。
どのように調べたか
研究チームは、小麦粉とかぼちゃピューレを合わせて250グラムとし、そのうちピューレが10%、20%、30%を占める3種類の配合を用意しました。砂糖、バター、卵、レモン、はちみつなど、ほかの材料の量はすべて同じにしました。ピューレは、かぼちゃを10分間蒸してなめらかにつぶして作りました。生地は冷蔵庫で3時間休ませ、型に20グラムずつ入れて、180℃で約10分焼きました。
物理的な品質として、二つの指標を各配合で3回ずつ測りました。一つは膨らみの大きさを示す「膨張容積」です。小さな穀物の粒を容器に満たし、その粒がケーキに押しのけられた量から体積を求める方法で測定しました。もう一つは、焼く前と焼いた後の重さの差を割合で表した「ベーキングロス(焼成による重量減少)」です。
官能評価には、ある程度の訓練を受けた45人の評価者が参加しました。評価者は15人ずつ3つのグループに分かれ、それぞれ一つの配合を担当しました。外側と内側の色、甘さ、かぼちゃの味、レモンとかぼちゃの香り、生地のまとまり(しっかり感)、柔らかさ、気泡の細かさを、1〜5点で採点しました。5点はマドレーヌとして期待される特徴に最も近いことを意味します。ただし、かぼちゃの味と香りについては、5点が「かぼちゃを感じない」ことを示します。つまりこの二項目では、点数が高いほどかぼちゃらしさが弱いということになります。
主な結果
ピューレの割合は、膨らみと重量減少の両方に統計的に意味のある影響を与えました。膨張容積はピューレ10%で113.33%と最も大きく、20%では85.00%、30%では68.33%に下がりました。10%と、20%・30%との差ははっきりしていましたが、20%と30%の間には有意な差は見られませんでした。ベーキングロスは10%で11.43%と最も小さく、20%で12.45%、30%で13.73%と増えました。有意な差が認められたのは10%と30%の間です。
著者らは、ピューレが増えると小麦粉が減り、ガスを抱え込んで生地を膨らませるグルテンも少なくなるため、膨らみが小さくなったと考えています。重量減少が増えた理由については、ピューレによって生地の水分が増え、それが焼いている間に蒸発したためだと説明しています。
官能評価では、内側の色、かぼちゃの味、生地のまとまりの三項目で配合による差が認められました。内側の色は、ピューレが増えるほど黄色みが強まりました。評価上は、10%が淡い黄金色、20%と30%が黄金色とされています。かぼちゃの味は、10%では「やや感じる」程度でしたが、20%と30%では「かなり感じる」と評価されました。生地のまとまりは、10%と20%がよくまとまっていたのに対し、30%では低下しました。著者らは、グルテンが減ったうえにピューレの水分と食物繊維が多くなり、生地がもろくなったためとみています。
一方、外側の色、甘さ、レモンの香り、かぼちゃの香り、柔らかさ、気泡の細かさには、有意な差は見られませんでした。外側はどの配合でも、焼いたときの褐色反応によって黄褐色に仕上がりました。かぼちゃの香りに差が出なかった理由について、論文は、香りの成分が焼成中に水分とともに飛んだ可能性を挙げています。
この研究が示すこと
研究チームは、試した3つの配合のうち、ピューレ10%の置き換えが膨らみ・重量減少と官能評価の両面で最も良い組み合わせになったと結論づけました。そして、マドレーヌの小麦粉の一部を置き換える選択肢になりうると述べています。ただし、この研究には小麦粉だけで作ったマドレーヌ(置き換え0%)との比較が含まれていません。著者ら自身も、10%はあくまで試した範囲の中で最も良かった割合だと断っています。
この研究は、身近な地元食材を焼き菓子に取り入れる際、その量によって膨らみや食感がどのように変わるかを、具体的な数値で示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Fahrani, Shafa(Program Studi Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Jakarta)、Alsuhendra(Program Studi Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Jakarta)、Ridawati(Program Studi Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Jakarta)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fahrani, Shafa, Alsuhendra, Ridawati. PENGARUH SUBSTITUSI PUREE LABU KUNING (Cucurbita Moschata) PADA PEMBUATAN MADELEINE CAKE TERHADAP KUALITAS FISIK DAN MUTU SENSORIS. Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar 2026-10-25. DOI: 10.23969/jp.v11i04.70411. 原著ライセンス:CC BY.