著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:Journal of Computing Research and Innovation

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

麺づくりでは、こねた生地をローラーに何度も通して薄い帯状に延ばす「シーティング(圧延)」という工程があります。研究チームは、この工程が麺の品質と生産効率を左右する最も重要な段階だと位置づけています。この工程では、生地の厚さがそろわない、表面にひび割れが出る、生地がべたつくといった問題が起こりやすいと著者らは指摘しています。厚さのむらはゆで時間や見た目に影響し、べたつきは作業の滞りや機械の不具合につながるとされます。

生地のべたつきや扱いやすさを整える方法として、小麦粉を加える方法が一般的です。ただし、どれだけ加えるかは作業者の経験に大きく依存しており、常に正確とは限りません。そこで研究チームは、生地の状態から加える小麦粉の量を判断する「ファジィ論理」による制御システムをソフトウェアとして作りました。主な対象として想定しているのは、麺を製造する中小企業です。

ファジィ論理で何を組み立てたか

ファジィ論理は、「厚い」「ひびが多い」のような境目のあいまいな言葉を、0から1までの「当てはまり具合」として数値で扱う考え方です。たとえばある厚さが「中くらい」にどの程度当てはまり、「厚い」にどの程度当てはまるかを同時に表せるため、熟練者の経験的な判断を規則として組み込みやすいとされます。

研究チームは、先行研究で示された項目をもとに、入力として「生地の厚さ」と「表面のひび割れの程度」の2つ、出力として「加える小麦粉の量」を選びました。それぞれを「薄い・中くらい・厚い」「少ない・中くらい・多い」のように3段階の言葉で区分し、各区分の範囲を三角形や台形の形をした関数で定めました。設定した範囲は、厚さが5〜45、ひび割れの指標が0.08〜0.5、小麦粉の調整量が0〜65です。

そのうえで、厚さ3段階とひび割れ3段階のすべての組み合わせに対応する9つの「もし〜ならば」形式の規則を作りました。たとえば「厚さが中くらいで、ひび割れが多いならば、小麦粉は多めに加える」といった規則です。システムは数値計算ソフトMATLABの専用ツールで構築され、規則を総合して一つの具体的な調整量を導く方式(マムダニ型推論と重心法)が使われています。評価はコンピューター上のシミュレーションで行われ、さまざまな入力の組み合わせに対して出力が論理的に一貫し、安定しているかが確かめられました。

主な結果

論文では、入力の組み合わせに対する計算例が示されています。厚さ20ミリ・ひび割れ0.35の生地では小麦粉の調整量が19.2グラム、厚さ7ミリ・ひび割れ0.14では5.01グラム、厚さ45ミリ・ひび割れ0.50では32.5グラム、厚さ39ミリ・ひび割れ0.09では5.02グラムと算出されました。

著者らは、生地が厚くひび割れが大きいほど調整量が大きくなり、入力が小さい場合は調整量も小さくなるという、規則に沿った傾向が出力に表れていると報告しています。また、入力と出力の関係を立体的に描いた図では、入力の変化に応じて調整量がなめらかに移り変わっていたとしています。研究チームはこれを、生地の性質が徐々に変化しても安定した判断ができることを示すものだと解釈しています。

一方で、この評価はあらかじめ決めた範囲と規則を用いたシミュレーションに限られており、実際の製造現場のデータによる検証や、ニューラルネットワークなど他の手法との比較は行われていないことを、著者らは限界として明記しています。

研究の意味

この研究は、職人の勘に頼りがちだった「小麦粉をどれだけ足すか」という判断を、生地の厚さとひび割れという2つの手がかりから言葉の規則として整理し、計算で導けるようにする道筋をシミュレーション上で示したものです。著者らは、正確な数式モデルを作りにくい食品加工の現場でも使える意思決定の支援手段として、こうした仕組みが製造の安定化や人の判断への依存を減らすことに役立ち得ると論じています。

原著論文の著者・所属:Suzanawati Abu Hasan(Faculty of Computer and Mathematical Sciences, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Perlis Branch, Arau Campus, 02600 Arau, Perlis, Malaysia)、Aina Irsalina Itqan Rosli(Faculty of Computer and Mathematical Sciences, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Perlis Branch, Arau Campus, 02600 Arau, Perlis, Malaysia)、Yeong Kin Teoh(Faculty of Computer and Mathematical Sciences, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Perlis Branch, Arau Campus, 02600 Arau, Perlis, Malaysia)、Diana Sirmayunie Mohd Nasir(Faculty of Computer and Mathematical Sciences, Universiti Teknologi MARA (UiTM) Perlis Branch, Arau Campus, 02600 Arau, Perlis, Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Suzanawati Abu Hasan, Aina Irsalina Itqan Rosli, Yeong Kin Teoh, et al. Development of a Fuzzy Logic Control System for the Noodle Dough Sheeting Process. Journal of Computing Research and Innovation 2026-09-01. DOI: 10.24191/jcrinn.v11i2.561. 原著ライセンス:CC BY.