著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Veterinary Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
薬草の「残りもの」を羊の飼料に
黄芩(オウゴン、コガネバナ)はシソ科の多年草で、乾燥させた根は伝統的な中国医学で広く使われています。根を収穫すると大量の茎や葉が残ります。研究チームによれば、中国ではこの茎葉(以下「黄芩わら」)が年間およそ6万3000トン発生し、多くは廃棄されるか焼却されています。一方で、黄芩わらはトウモロコシや小麦のわらよりも粗たんぱく質が多く、根と同じくバイカリンなどのフラボノイド類を含むため、飼料としての利用が期待されています。ただ、羊肉の品質を高めるには飼料にどれだけ混ぜるのがよいかは分かっていませんでした。
肉のおいしさに関わる成分の一つに、うま味物質のイノシン酸(IMP)があります。筋肉内のイノシン酸の量は、それを作ったり分解したりする複数の遺伝子の働きと関係することが、これまでの研究で報告されています。ただし、こうした研究は鶏や豚、魚が中心で、羊などの反すう動物では限られていました。そこで研究チームは、黄芩わらの配合割合を段階的に変えて羊に与え、肉質、脂肪酸やアミノ酸の組成、イノシン酸の量、イノシン酸に関わる遺伝子の働きを調べ、最適な配合割合を探りました。
6段階の配合で80日間飼育
実験には、生後4〜5か月、体重約27キロのバインブルク種の雄の子羊60頭を使いました。10頭ずつ6群に分け、飼料の乾物に占める黄芩わらの割合を0%(対照群)、6%、12%、18%、24%、30%としました。どの群の飼料もたんぱく質とエネルギーの量はそろえてあり、黄芩わらが増える分、主にアルファルファ乾草や小麦わらを減らしています。飼育期間は、飼料に慣らす10日間を含めて80日間でした。
飼育後、各群から5頭を選んでロース部分にあたる背中の筋肉(胸最長筋)を採取しました。肉の酸性度(pH)、色、加熱したときに失われる重さの割合(加熱損失)、たんぱく質などの成分を測定したほか、脂肪酸とアミノ酸の組成、イノシン酸の量を分析しました。さらに対照群、24%群、30%群の3群については、イノシン酸の合成や分解に関わる6つの遺伝子がどの程度働いているか(遺伝子発現量)を調べました。
24%配合の群で目立った変化
論文によると、最も多くの変化が見られたのは黄芩わらを24%配合した群でした。この群は対照群に比べて肉のpHが高く、加熱損失は小さくなりました。肉の色では、赤みを示す値が高く、明るさと黄色みを示す値は低くなりました。肉に含まれる粗たんぱく質も対照群より多くなりましたが、脂肪や水分の量には群の間で差がありませんでした。
脂肪の質にも違いが現れました。24%群では、パルミチン酸やステアリン酸といった飽和脂肪酸が減り、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸といった不飽和脂肪酸が増えました。アミノ酸では、アミノ酸の総量、体内で十分に作れない必須アミノ酸、それ以外の非必須アミノ酸のいずれも、24%群で対照群より多くなりました。
うま味物質のイノシン酸は、24%群で対照群と30%群よりも多く含まれていました。遺伝子の働きを見ると、24%群では、これまでの研究でイノシン酸の量と正の関係が報告されているPRPS1、ADSL、ATIC、AMPD1の4遺伝子の発現が高まりました。一方、負の関係が報告されているADSSL1とIMPDH1の2遺伝子の発現は低下しました。
多くの指標では、配合を30%まで増やすと24%群で見られた違いが小さくなり、対照群との差がはっきりしなくなる傾向がありました。研究チームは、配合量には適切な範囲があるとみています。
廃棄物を良質な羊肉づくりに生かす可能性
著者らは、黄芩わらを24%配合すると、肉へのたんぱく質の蓄積、不飽和脂肪酸の割合、イノシン酸の代謝が改善され、羊肉の栄養と風味の質が高まると結論づけ、バインブルク種の雄羊の生産にはこの配合割合を推奨しています。この研究は、これまで捨てられてきた薬草の茎葉が羊の飼料として使え、配合量によって肉のうま味成分や脂肪の質、その背景にある遺伝子の働きが変わりうることを示しています。
原著論文の著者・所属:Yuxia Yang(Institute of Feed Research, Xinjiang Academy of Animal Science; Xinjiang Key Laboratory of Herbivorous Livestock Feed Biotechnology, Xinjiang Academy of Animal Science)、Jiaojiao Gao(Institute of Feed Research, Xinjiang Academy of Animal Science; Xinjiang Key Laboratory of Herbivorous Livestock Feed Biotechnology, Xinjiang Academy of Animal Science)、Minghui Zhang(Institute of Feed Research, Xinjiang Academy of Animal Science; Xinjiang Key Laboratory of Herbivorous Livestock Feed Biotechnology, Xinjiang Academy of Animal Science)、Liangzhong Hou(Institute of Feed Research, Xinjiang Academy of Animal Science; Xinjiang Key Laboratory of Herbivorous Livestock Feed Biotechnology, Xinjiang Academy of Animal Science)、Tongjun Guo(Institute of Feed Research, Xinjiang Academy of Animal Science; Xinjiang Key Laboratory of Herbivorous Livestock Feed Biotechnology, Xinjiang Academy of Animal Science)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuxia Yang, Jiaojiao Gao, Minghui Zhang, et al. Scutellaria baicalensis straw improves nutritional and flavor quality of mutton via regulating the expression of IMP-related genes. Frontiers in Veterinary Science 2026-09-23. DOI: 10.3389/fvets.2026.1928789. 原著ライセンス:CC BY.