著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。

掲載誌:Herald of Khmelnytskyi National University Technical sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ヒヨコマメ(学名 Cicer arietinum L.)は、たんぱく質や食物繊維、ミネラル、生理活性をもつ成分を多く含む豆類として知られています。一方で、フィチン酸やトリプシンインヒビターといった「反栄養因子」も含んでいます。反栄養因子とは、ほかの栄養素の利用されやすさを下げる働きをもつ成分のことです。フィチン酸はミネラルと結びつきやすく、トリプシンインヒビターはたんぱく質を分解する消化酵素の働きを妨げます。

こうした欠点を補う方法の一つとして、豆を発芽させる処理が注目されてきました。ただし、著者らによると、これまでの研究の多くは発芽による変化を一部の指標ごとに調べたものでした。食品素材としての使いやすさに関わる性質や、硬さのような物理的な性質まで含めて変化を総合的に評価した例は十分ではありませんでした。

そこで研究チームは、発芽前と発芽後のヒヨコマメを比べ、栄養成分、反栄養因子、加工に関わる性質の変化を調べました。さらに、それらの結果を一つの「総合品質指数」にまとめて評価することを目指しました。

どのように調べたか

研究チームは、同じ商品ロットのヒヨコマメを洗浄して選別し、20〜22℃の水に6時間浸しました。その後、温度30℃、湿度約90%に保った装置の中で6日間発芽させ、12時間ごとに霧吹きで水分を補いました。発芽後は不良な粒を取り除き、蒸気で3〜5分間加熱してから氷水で急速に冷やしました。この加熱は、酵素の働きを止め、微生物面の安全性を高め、生の豆特有の青臭さを抑えるためのものです。最後に、粒を3〜5ミリ程度の粗い粒に刻みました。

比較した項目は次のとおりです。成分では、たんぱく質、食物繊維、フェノール化合物の総量、フィチン酸、トリプシンインヒビターの活性を測りました。加工に関わる性質では、水を保持する力(保水性)、水を吸ってふくらむ度合い(膨潤係数)、加熱処理後の硬さを測りました。成分の値は、水分を除いた乾物あたりで示されています。

次に、指標ごとに発芽前と発芽後の比を求めました。値が増えると望ましい指標と、減ると望ましい指標の両方があるため、どちらの場合も「1より大きければ好ましい変化」と読めるように比のとり方をそろえています。そのうえで、指標を「栄養価」「反栄養因子」「機能・加工特性」の3群に分け、群ごとの指数と全体の総合指数を計算しました。発芽後に水分が大きく増えたことは、豆が水を吸った結果であり品質の向上とはいえないため、総合評価からは外されています。

主な結果

論文によると、発芽によってたんぱく質は10.4%、食物繊維は10.8%、フェノール化合物の総量は67.6%増えました。反対に、フィチン酸は54.3%、トリプシンインヒビターの活性は68.9%減りました。著者らはこの結果を、反栄養因子の面で原料の性質が改善したことを示すものとしています。

加工に関わる性質も変化しました。保水性は35.9%、膨潤係数は43.0%高くなりました。加熱処理後の硬さは57.4%低下し、豆がかなり柔らかくなったことが示されました。

群ごとの指数は、栄養価が1.271(27.1%の改善に相当)、反栄養因子が2.652(165.2%)、機能・加工特性が1.659(65.9%)でした。8つの指標すべてをまとめた総合品質指数は1.688で、発芽によって調べた性質が全体として68.8%改善したことに相当すると報告されています。改善の度合いが最も大きかったのは、反栄養因子の群でした。

この研究が示すこと

この研究は、発芽と、その後の加熱などの下処理によって、ヒヨコマメの成分と加工特性が同時に、しかもそれぞれ異なる方向に変わることを、一つの指数でまとめて示しました。著者らは、発芽がヒヨコマメの栄養面と加工面の性質を意図的に変える方法として有効であると結論づけています。また、発芽させたヒヨコマメは、複数の原料を組み合わせてつくる食品の植物性原料として使える可能性があると述べています。

原著論文の著者・所属:МАРИНА СЕРДЮК(Національний університет біоресурсів та природокористування України)、ІГОР КАЛЮЖНЯК(Національний університет біоресурсів і природокористування України)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):МАРИНА СЕРДЮК, ІГОР КАЛЮЖНЯК. ДОСЛІДЖЕННЯ ВПЛИВУ ПРОРОЩУВАННЯ НА ЗМІНИ ХАРЧОВИХ І ФУНКЦІОНАЛЬНО-ТЕХНОЛОГІНИХ ВЛАСТИВОСТЕЙ НУТУ. Herald of Khmelnytskyi National University Technical sciences 2026-10-15. DOI: 10.31891/2307-5732-2026-369-7. 原著ライセンス:CC BY.