著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。
掲載誌:Plant Cell & Environment
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:リンを効率よく使う仕組みを探る
リンは作物の生育に欠かせない養分ですが、肥料の原料となるリン鉱石は減り続けています。そのため、植物が少ないリンでうまく育つ性質、つまり「リン利用効率」を高め、肥料への依存を減らすことが重要な課題になっています。
ヒヨコマメは世界で3番目に広く栽培されているマメ科作物で、半乾燥地域のやせた土地でも育つ涼しい季節の作物です。特に開発途上地域では良質なたんぱく質源として重要ですが、リン不足は生育や収量を制限する大きな要因とされています。
植物がリンを効率よく使う方法には、根から土のリンをより多く取り込むことと、体内のリンを無駄なく使い回すことの二つがあります。後者の代表が「リンの再吸収」で、枯れかけた葉からリンを回収して新しい器官へ回す仕組みです。著者らによると、根による取り込みと地上部での再利用がどのように連携しているのかは、これまでよく分かっていませんでした。
何を調べたのか
過去の研究では、ヒヨコマメの根の周りの土に分泌されるカルボン酸類(土に固く結びついたリンを溶かし出す物質)が、栄養成長期より生殖成長期に多くなることが報告されていました。研究チームは、この根の働きの変化に合わせて、葉でのリンの使い方も変わるのではないかと考えました。
研究チームは、中程度のリン不足の条件で二つの仮説を検証しました。一つ目は、葉が光合成のためにリンを効率よく使うこと(光合成リン利用効率)と、葉からリンを再吸収する効率とのあいだに、一方を高めると他方が下がるトレードオフがあるかどうかです。光合成の効率を上げるために葉の中の移動しやすい無機リンを減らすと、再吸収に回せるリンも減る可能性があるためです。二つ目は、生殖成長期には栄養成長期に比べて葉の再吸収効率や光合成リン利用効率が高まり、それが根によるリンの取り込みの増加と連動しているかどうかです。
実験には、以前に266系統の中から再吸収効率の違いで選別されたヒヨコマメのうち、再吸収効率が高い2系統と低い3系統の計5系統が使われました。著者らは、葉のリン再吸収と根のリン取得を、一つの実験の中で生育段階をまたいで同時に調べた研究は、自分たちの知る限りこれが初めてだとしています。
主な結果
論文の報告によると、体の各部分への重量の配分は系統や生育段階によって異なっていました。栄養成長期には主に葉と根に、次いで茎に配分されていました。ただし1系統(ICC9590)は、ほかの系統より根への配分が少なく、茎への配分が多いという特徴を示しました。また、花や莢をつける時期にも系統による違いがみられました。
論文題名が示すとおり、研究チームは、生殖成長期には根によるリンの取り込みと、葉からのリンの再吸収が同時に高まり、それがヒヨコマメのリンの使い方全体の効率向上を支えていると報告しています。
この研究が伝えること
この研究は、ヒヨコマメが実をつける時期に、地下での「取り込み」と地上での「使い回し」の両方を強めてリンをやりくりしていることを示しています。リンの効率的な利用を考えるうえで、根の働きだけでなく葉からの再吸収も合わせて捉え、生育段階による変化にも目を向ける必要があることを伝える研究といえます。
原著論文の著者・所属:Xiaolong Feng(School of Biological Sciences The University of Western Australia Perth Western Australia Australia; The UWA Institute of Agriculture The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)、Shuyan Li(School of Biological Sciences The University of Western Australia Perth Western Australia Australia; The UWA Institute of Agriculture The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)、Jiayin Pang(School of Biological Sciences The University of Western Australia Perth Western Australia Australia; The UWA Institute of Agriculture The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)、Peta L. Clode(Centre for Microscopy, Characterisation and Analysis The University of Western Australia Perth Western Australia Australia; School of Biological Sciences The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)、Hans Lambers(School of Biological Sciences The University of Western Australia Perth Western Australia Australia; The UWA Institute of Agriculture The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)、Kadambot H. M. Siddique(The UWA Institute of Agriculture The University of Western Australia Perth Western Australia Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiaolong Feng, Shuyan Li, Jiayin Pang, et al. Concurrent Increases in Root Phosphorus Acquisition and Leaf Phosphorus Resorption Underpin Enhanced Phosphorus Economy in Chickpea During Reproductive Development. Plant Cell & Environment 2026-08-09. DOI: 10.1111/pce.70797. 原著ライセンス:CC BY.