著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:International Journal of Research in Engineering Science and Management
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期の女子は、急な身体の成長や初経の始まりによって、エネルギーや鉄・カルシウムなどの栄養素がそれまで以上に必要になります。この時期に食事が不十分だと、成長の遅れや骨量の不足、鉄欠乏性貧血などにつながりやすいとされています。インドの部族地域では、地理的な孤立、農業への依存、保護者の教育機会の少なさ、医療へのアクセスの悪さなどが重なり、栄養不足が広く残っていると考えられています。
著者らは、インド・マハーラーシュトラ州ヤヴァトマール県の政府運営の寄宿制学校「アシュラム・スクール」に通う部族出身の女子を対象に、体格、毎日の食事からとる栄養素の量、栄養に関する知識を調べました。あわせて、学校で行う栄養教育プログラムによって栄養の知識がどれだけ伸びるかを確かめることも目的としました。著者らによると、この地域の部族の女子生徒の栄養状態や食事の傾向は、これまで十分に記録されてこなかったといいます。
何をどのように調べたか
調査は、県内10の行政区にある21校のアシュラム・スクールで行われました。対象は、指定部族の出身で、10〜15歳、すでに初経を迎えている女子生徒1,000人です。
研究チームは、身長と体重を測ってBMI(体重と身長から計算する体格の指標)を求め、やせ・標準などに分類しました。食事については、前日の24時間に食べたものを聞き取る方法で記録し、カロリーやたんぱく質、カルシウム、鉄などの量に換算して、インドの公的な栄養基準(ICMR-NIN、2020年)が示す1日の推奨量と比べました。
栄養の知識は、バランスのよい食事、鉄と貧血の予防、カルシウム、たんぱく質、月経中の食事などを問う15問の選択式テストで測りました。最初のテストの後、図表やポスター、絵入りの配布資料、参加型の講義、地元で手に入る鉄やカルシウムの多い食品を使った実演などからなる栄養教育を行い、実施期間を終えた後に再びテストをしました。比較のための別のグループは設けず、同じ生徒の教育前と教育後の成績を比べる設計です。
主な結果
参加者の平均身長は約149.6cm、平均体重は約36.1kg、平均BMIは約16.1でした。全体の45.9%がやせ(BMI 18.5未満)に分類され、残りの54.1%が標準の範囲で、過体重や肥満の生徒はいませんでした。著者らは、このやせの割合がインド全国の思春期の目安とされる25%を大きく上回っていたと報告しています。また、BMIは年齢が高いほど高い傾向が見られた一方、家庭の収入との間には統計的に意味のある関係は見られませんでした。
食事の調査では、たんぱく質、炭水化物、脂質は推奨量を満たすか上回っていた一方、骨や血液をつくるのに欠かせないミネラルが足りていないことが分かりました。カルシウムの1日の平均摂取量は約604mgで、推奨量1,000mgの約60%にとどまりました。鉄は約26.0mgで、推奨量27.5mgの約95%とわずかに不足していました。著者らは、月経による出血が続くことと合わせると、鉄欠乏性貧血のリスクが高い状態だと述べています。年齢が上がるにつれて摂取量は増えていましたが、15歳でもカルシウムの平均は約675mgで、推奨量には遠く届いていませんでした。著者らは、こうした結果を、全体的な量の不足というより、栄養の偏った食事の構造を示すものだと位置づけています。
栄養知識テストの平均点は、教育前の15点満点中約5.7点(正答率37.8%)から、教育後には約11.8点(78.5%)へと、ほぼ倍に上がりました。この伸びは統計的に意味のあるもので、変化の大きさを示す指標でも「非常に大きい」と評価される値でした。
研究が示すこと
この研究は、ヤヴァトマール県の部族出身の思春期女子の多くがやせており、特にカルシウムが大きく不足する偏った食事をしていることを示しました。同時に、学校での体系的な栄養教育の前後で、栄養に関する知識の得点が大きく上がったことも報告しています。なお、論文では教育の実施期間や前後のテストの間隔の長さは示されていません。
ただし、今回確かめられたのは知識の向上であり、体格や栄養状態そのものの改善ではありません。著者らは、知識を健康の改善につなげるには、寄宿制学校の給食にシコクビエやゴマ、緑の葉野菜など地元で手に入るカルシウムや鉄の多い食品を取り入れることや、安全な飲み水、衛生的なトイレの整備などを教育と並行して進める必要があると提言しています。
原著論文の著者・所属:Snehal Paul(Department of Home Science, Matoshree Vimalabai Deshmukh College, Amravati, India)、Sharmila Kubde(Department of Home Science, Matoshree Vimalabai Deshmukh College, Amravati, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Snehal Paul, Sharmila Kubde. Assessment of Nutritional Status, Dietary Intake, and Impact of a Targeted Nutrition Intervention Among Tribal Adolescent Girls in Yavatmal District. International Journal of Research in Engineering Science and Management 2026-10-20. DOI: 10.65138/ijresm.v9i10.3554. 原著ライセンス:CC BY.