骨や歯を支えるミネラルといえばカルシウムが有名ですが、その相棒として欠かせないのが「リン」です。骨や歯の硬さをつくる成分はカルシウムとリンが組み合わさったもので、リンは体内でカルシウムに次ぐ量で存在するミネラルでもあります。それだけでなく、食べたものをエネルギーに変える代謝や、細胞の膜を構成する素材としても全身で働いています。日本人の食事摂取基準では、女性(30〜49歳)の1日の目安量を800mg、耐容上限量(これ以上は摂りすぎとされる上限)を3000mgと設定しています。不足よりも加工食品由来の摂りすぎが問題になりやすいミネラルとして知られています。
では、食品成分表のデータでリンが多い食品の上位には何が並ぶのか。予想外の顔ぶれが揃っています。
第1位 ベーキングパウダー 3700mg
ベーキングパウダーは、重曹(炭酸水素ナトリウム)にリン酸塩やでん粉を混ぜた膨張剤です。リン酸塩を多量に含むため、100gあたりの数値は耐容上限量(3000mg/日)の約1.2倍に達し、100gそのままでは上限を超えてしまいます。ただし実際に菓子や料理1回で使うのはせいぜい数gで、成分の密度と実際の使用量は大きくかけ離れています。
同率第2位 とびうお 焼き干し 2300mg
とびうおの焼き干しは、長崎をはじめ九州地方で伝統的にだし取りに使われてきた乾物です。水分が抜けることで成分が凝縮され、リンだけでなくカルシウムも際立って高い値を示します。実際にはだし取り用にごく少量を使う食材で、一般的に一度に多く食べるものではありません。
同率第2位 かたくちいわし 田作り 2300mg
正月のおせちでおなじみの田作りは、かたくちいわしを炒って甘辛く仕上げた一品です。同率2位の焼き干しと同じ値ながら、田作りはつまんで食べるおせちや和え物として実際に口にしやすく、一度に食べる量は約10〜15g程度です。小魚を骨ごと食べることで、リンとカルシウムをまとめて摂れるのが乾燥小魚ならではの特徴です。
第4位 米ぬか 2000mg
米ぬかは、玄米を白米に精白するときに取り除かれる外皮と胚芽の部分です。リンのほかビタミンB群も豊富で、精白米にはほとんど残らない栄養素が詰まっています。そのままでは食べにくく、主にぬか漬けの床として使われる食品です。
第5位 かたくちいわし 煮干し 1500mg
煮干しは、和食のだしを支える台所の定番です。同率2位の田作りと同じかたくちいわしを原料としながら、「煮てから干す」製法の違いによりリン含有量に差が生まれます。だし取りに使う量はごく少量ですが、そのままかじって食べる習慣があれば、骨ごとリンとカルシウムを摂れる手軽な一品になります。
乾燥・精白・添加、3つのリン濃縮
上位5品を見渡すと、大きく3系統に分かれます。焼き干し・田作り・煮干しは乾燥・加熱で水分が飛び成分が凝縮した食品です。米ぬかは精白工程で分離される外皮と胚芽であり、乾物とは異なる仕組みでリンが高密度に含まれます。そしてベーキングパウダーは製造段階でリン酸塩が添加された加工品です。魚の乾物は少量でも密度高くリンを摂れる一方、ベーキングパウダーは1回の使用量が限られるため、食卓での存在感は全く異なります。
日常でリンを意識するなら、煮干しや田作りのような小魚の乾物が手軽な選択肢です。おやつに煮干しをかじる、おせちや和え物に田作りを添えるなど、少量でも継続して食卓に取り入れやすい食べ方です。一方で加工食品や清涼飲料水を多く摂る食習慣では、リン酸塩からの摂取が知らぬ間に増えることもあります。データを手がかりに、自分の食生活を一度振り返ってみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。