日本関連:この研究は海外機関を中心とする国際共同研究で、日本の研究機関に所属する共著者が参加しています。参加国はタイ、日本です。
掲載誌:Antioxidants
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:色の違う米の米ぬか油を比べる
骨は、骨をつくる細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きのバランスによって、絶えず作り替えられています。論文によると、このバランスが酸化ストレスや慢性的な炎症で崩れると、骨粗しょう症や炎症による骨の減少につながるとされています。そのため、抗酸化作用や抗炎症作用をもつ天然成分が、骨の作り替えに影響しうるものとして関心を集めています。
タイには白米のほか、赤米や紫米といった色のついた米(有色米)があります。米ぬかから得られる米ぬか油には、脂に溶けやすい成分であるトコフェロールやトコトリエノール(いずれもビタミンEの仲間)、γ-オリザノールが多く含まれます。有色米はこれらの成分を白米より多く含むと報告されてきました。しかし著者らによると、白米・赤米・紫米の米ぬか油を、成分分析と細胞を使った評価を組み合わせて体系的に比べた研究はこれまでありませんでした。そこで研究チームは、タイの代表的な品種から得た米ぬか油を比較しました。
何を調べたか
研究チームは、超臨界二酸化炭素抽出という方法で得た9種類の米ぬか油について、まずトコフェロール、トコトリエノール、γ-オリザノールの含有量を測定しました。
次に、細胞を使って働きを評価しました。抗酸化作用は、ヒトの胎児由来の骨芽細胞株(hFOB 1.19)で、細胞内の活性酸素種の発生量を測って調べました。抗炎症作用は、免疫細胞の一種であるマウスのマクロファージ(RAW264.7)で、炎症に関わる一酸化窒素と、それをつくる酵素(iNOS)の量を測って調べました。さらに、成分の量とこれらの作用との関連を相関分析で検討しました。
続いて、代表的な米ぬか油を選び、骨芽細胞で骨の作り替えに関わる指標を調べました。骨形成の目印となる酵素アルカリホスファターゼの活性、骨形成に関わるたんぱく質オステオカルシンの量、破骨細胞を増やす信号となるRANKLの量、その働きを抑えるオステオプロテゲリン(OPG)の量です。あわせて、骨芽細胞がカルシウムを沈着させる「石灰化」の程度を、染色によって評価しました。
主な結果
論文の結論によると、タイの有色米の米ぬか油、とくにKhao' Hom NilとRD69は、白米の米ぬか油よりもトコフェロール、トコトリエノール、γ-オリザノールを多く含んでいました。こうした成分の違いは、より強い抗酸化・抗炎症作用と関連していました。具体的には、細胞内の活性酸素種、一酸化窒素、iNOSの産生が少なくなっていました。
また、代表として選ばれた米ぬか油は、骨芽細胞でアルカリホスファターゼの活性を高め、オステオカルシンとOPGの産生を増やしました。一方でRANKLの量と、RANKLとOPGの比率を下げ、石灰化も促しました。骨の作り替えに関わる指標全体を通じて、Khao' Hom NilとRD69はおおむね同程度の働きを示したと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、タイの有色米の米ぬか油が、抗酸化・抗炎症作用や骨の作り替えに関わる作用をもつ、脂溶性成分の有望な天然の供給源になりうると述べています。ただし、これは培養細胞を使った実験条件下での結果です。
著者ら自身も、いくつかの限界を挙げています。まず、細胞の実験は生体内での骨の作り替えの複雑さを再現しきれません。また、作用の分子レベルの仕組みは調べておらず、破骨細胞の働きも直接は評価していません。さらに、米ぬか油は多くの成分の混合物なので、個々の成分がどれだけ寄与したかは特定できていません。抽出法が違う米ぬか油に結果がそのまま当てはまるとは限らず、用いた濃度を食事やサプリメントで体内に届く量と直接みなすべきではないとも述べています。
この研究は、米の色の違いが米ぬか油の成分と細胞レベルでの働きの違いに結びついていることを、比較によって示したものです。
原著論文の著者・所属:Thanawat Pattananandecha(Office of Research Administration, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)、Sutasinee Apichai(Office of Research Administration, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)、Jakaphun Julsrigival(Department of Pharmaceutical Sciences, Faculty of Pharmacy, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)、Kannika Thiankhanithikun(Department of Pharmaceutical Care, Faculty of Pharmacy, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)、Fumihiko Ogata(Faculty of Pharmacy, Kindai University, 3-4-1 Kowakae, Higashi-Osaka 577-8502, Osaka, Japan)、Naohito Kawasaki(Antiaging Center, Kindai University, 3-4-1 Kowakae, Higashi-Osaka 577-8502, Osaka, Japan; Faculty of Pharmacy, Kindai University, 3-4-1 Kowakae, Higashi-Osaka 577-8502, Osaka, Japan)、Jetsada Ruangsuriya(Department of Biochemistry, Faculty of Medicine, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)、Chalermpong Saenjum(Department of Pharmaceutical Sciences, Faculty of Pharmacy, Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand; Research Center for Innovation in Analytical Science and Technology for Biodiversity-Based Economic and Society (I-ANALY-S-T_B.BES-CMU), Chiang Mai University, Chiang Mai 50200, Thailand)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Thanawat Pattananandecha, Sutasinee Apichai, Jakaphun Julsrigival, et al. Antioxidant, Anti-Inflammatory, and Bone-Remodeling Modulatory Activities of Thai Pigmented and Non-Pigmented Rice Bran Oils Containing Tocols and γ-Oryzanol. Antioxidants 2026-08-07. DOI: 10.3390/antiox15080981. 原著ライセンス:CC BY.