著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。
掲載誌:Journal of Functional Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
カナグリフロジンは、2型糖尿病の治療で広く処方されているSGLT2阻害薬(腎臓で糖を再吸収する仕組みを妨げ、尿中に糖を出させる薬)の一つです。この薬については、骨格筋の再生や、筋肉のもとになる細胞が成熟した筋細胞へ変化する過程(分化)を妨げるという報告があります。
研究チームは、スピルリナ・プラテンシスなどのシアノバクテリア(藍藻)に含まれる色素たんぱく質「アロフィコシアニン」に注目しました。そして、培養したC2C12筋芽細胞(筋細胞のもとになる細胞)が筋管と呼ばれる筋線維の前段階の構造をつくる過程に、この物質がどう影響するのかを調べました。また、カナグリフロジンによる分化の妨げを防いだり元に戻したりできるかも検討しました。
何を調べたか
著者らは、細胞を蛍光で染めて観察する方法と、特定のたんぱく質の量や活性化の状態を調べる方法を組み合わせ、アロフィコシアニンやカナグリフロジンが筋管形成に与える影響と、その背景にある細胞内の仕組みを検討しました。
さらに、細胞が増殖をやめて分化へ進む段階(細胞周期からの離脱)と、細胞の移動する能力についても、それぞれ専用の測定法を用いて評価しました。
主な結果
論文によると、アロフィコシアニンは、C2C12筋芽細胞から筋管への分化を約85%増加させました。このとき、細胞の成長や合成を促す信号の流れとして知られる「IGF-1R/AKT/mTOR経路」と、その下流にあるp70S6Kというたんぱく質が活性化していました。
また、アロフィコシアニンは筋芽細胞の移動を促し、細胞の接着や移動に関わるFAKとパキシリンというたんぱく質のリン酸化(活性の切り替えに関わる化学的な変化)が増えていたと報告されています。
カナグリフロジンを加えた条件では、アロフィコシアニンが筋分化の妨げを部分的に回復させました。研究チームは、この回復にAKT/mTORの活性化と、筋たんぱく質の分解に関わるMuRF1の発現の抑制が伴っていたと報告しています。
研究が示すこと
この研究は培養細胞での実験であり、アロフィコシアニンが筋芽細胞の分化と移動を促すこと、そして糖尿病治療薬カナグリフロジンによる分化の妨げを細胞レベルで一部和らげることを示しました。著者らは、この結果から、SGLT2阻害薬を使う人の骨格筋再生を支える食品素材の開発に、アロフィコシアニンを生かせる可能性があると述べています。
原著論文の著者・所属:Chi-Hsien Huang(College of Nursing, Kaohsiung Medical University, Kaohsiung City, Taiwan; Department of Family Medicine and Community Medicine, E-Da Hospital, I-Shou University, Kaohsiung City, Taiwan; School of Medicine, College of Medicine, I-Shou University, Kaohsiung City, Taiwan)、Tzyh-Chyuan Hour(Department of Biochemistry, School of Medicine, Kaohsiung Medical University, Kaohsiung City, Taiwan; Department of Medical Research, Kaohsiung Medical University Hospital, Kaohsiung City, Taiwan)、Nguyen Kieu Linh(Department of Biochemistry, School of Medicine, Kaohsiung Medical University, Kaohsiung City, Taiwan)、Yong-Han Hong(Graduate Programs of Nutrition Science, School of Life Science, National Taiwan Normal University, Taipei City, Taiwan)、Yu-Kuei Chen(Department of Nutrition, I-Shou University, Kaohsiung City, Taiwan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chi-Hsien Huang, Tzyh-Chyuan Hour, Nguyen Kieu Linh, et al. Allophycocyanin enhances myogenic differentiation and reverses canagliflozin-induced inhibition in C2C12 myoblasts. Journal of Functional Foods 2026-09-15. DOI: 10.1016/j.jff.2026.107505. 原著ライセンス:CC BY.