著者の所属・活動拠点の国は、イラクです。
掲載誌:European Journal Pharmaceutical and Medical Research
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
ビタミンDは骨の健康に関わることがよく知られており、不足を早く見つけて防ぐことは成人の医療で大切な課題とされています。ただし、不足の起こりやすさは、住む地域、季節、年齢、肌の色、体格、食事、身体活動などによって集団ごとに大きく異なります。そのため研究チームは、地域ごとのデータが必要だと考えました。
この研究で著者らは、一次医療(かかりつけ医療)を担う保健センターを受診した成人について、ビタミンD不足がどのくらいの割合で見られるかを調べました。あわせて、日光を浴びる時間、身体活動、食習慣、喫煙などの生活習慣と、不足との関連も検討しました。
調べた方法
研究は「横断研究」という方法で行われました。ある一時点で参加者の状態と生活習慣をまとめて調べる方法です。生活習慣を変えるような介入はしていません。著者らは、この方法では関連は分かっても、生活習慣が不足の原因かどうかまでは確かめられないと明記しています。
対象は、選ばれた保健センターに定期受診や予防医療などで訪れた18歳以上の男女400人です。ビタミンDの状態は、体内のビタミンD量の指標として広く使われる血液中の25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の濃度で判定しました。1ミリリットルあたり20ナノグラム未満を「不足」としています。
生活習慣は質問票で尋ねました。毎日の日光を浴びる時間、仕事・移動・家事・余暇での身体活動、魚・卵・乳製品・栄養強化食品などビタミンDを含む食品を食べる頻度、サプリメントの使用、喫煙などが含まれます。食事については、栄養素の量を細かく計算するのではなく、ふだんの食べ方の傾向を調べています。
主な結果
著者らの報告によると、400人のうち281人がビタミンD不足と判定されました。割合は70.3%で、およそ10人に7人にあたります。
生活習慣との関連では、ビタミンDを多く含む食品の摂取に統計的に意味のある差が見られました。摂取が少ない人では不足の割合が75.1%だったのに対し、中程度以上の人では62.9%でした。調べた各要因について、不足の有無との関係を一つずつ比べた分析で、統計的に有意とされたのはこの食習慣だけでした。
ほかの項目でも、数字の上では差がありました。たとえば、女性は男性より不足の割合が高く(73.2%と66.5%)、肥満の人は標準体重の人より高く(75.7%と62.4%)、屋内で働く人は屋外で働く人より高い結果でした(73.8%と64.3%)。日光を浴びる時間で分けると、1日15分未満の人で割合が最も高く73.1%でした。しかし、いずれも統計的に有意とはいえないと報告されています。身体活動、サプリメントの使用、喫煙についても、有意な関連は認められませんでした。
日光との関連がはっきりしなかったことについて、著者らは意外な結果だと述べています。その理由の一つとして、日光を浴びた時間が自己申告であり、実際に受けた紫外線の量を正確には反映しにくいことを挙げています。
研究が示すこと
この研究は、調査した保健センターの受診者でビタミンD不足が多く見られたことを報告しています。また、調べた生活習慣の中では、食事からのビタミンD源の摂取が不足と統計的に関連した唯一の項目でした。著者らは、この結果から、受診の場での栄養に関する助言や教育が重要になると考えています。
一方で、これは一時点の調査であり、因果関係は示せません。生活習慣は自己申告に基づいています。また、特定の施設を受診した人が対象のため、ほかの集団にそのまま当てはまるとは限らないと、著者らは注意を促しています。数字上の差と、統計的に裏づけられた関連を区別して受け止めることの大切さも、この研究から読み取れます。
原著論文の著者・所属:1*Huda Mohammed Yassen AL GBUR, 2Rand Muayad Saadi, 3Sarah Adil Koria Okask
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):1*Huda Mohammed Yassen AL GBUR, 2Rand Muayad Saadi, 3Sarah Adil Koria Okask. PREVALENCE OF VITAMIN D DEFICIENCY AND ITS ASSOCIATION WITH LIFESTYLE FACTORS AMONG ADULTS ATTENDING PRIMARY HEALTHCARE CENTERS: A CROSS-SECTIONAL STUDY. European Journal Pharmaceutical and Medical Research 2026-11-03. DOI: 10.5281/zenodo.23913166. 原著ライセンス:CC BY.