著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:The Journal of Animal and Plant Sciences

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

貯蔵中の穀物は害虫による大きな被害を受けます。従来の殺虫剤は害虫を抑えるのに役立ちますが、害虫が薬剤に強くなる「抵抗性」の問題や、対象外の生物への毒性、環境汚染が課題とされてきました。そのため、より安全で環境への負担が小さい代わりの手段が求められています。

植物の香り成分を濃縮した「精油」は、虫に対してさまざまな作用を示すことが知られています。研究チームは、精油が分解されやすく環境中に残りにくい点にも注目しました。そして、貯蔵穀物の害虫であるココクゾウムシ(Sitophilus oryzae)に対して、どの植物の精油が強く効くのかを調べました。単独での効き目に加え、2種類の精油を混ぜたときに効果が高まるかどうか、さらに効き目を担う成分は何かも明らかにしようとしました。

何をどのように調べたか

研究チームは26種類の植物から、水蒸気蒸留という方法で精油を取り出しました。精油を溶媒に溶かしてココクゾウムシの成虫の体に直接付け、死亡率を調べる「接触毒性」の試験を行いました。効き目の強さは、虫の半数を死なせるのに必要な1匹あたりの量(LD50)で比べています。この値が小さいほど、少ない量で効くことを意味します。

次に、最も効き目の強かった精油を残りの25種類とそれぞれ混ぜました。単独で使ったときの死亡率を足し合わせた予想値と、混合したときの実際の死亡率を比べます。実際の値が予想を一定以上上回れば、混ぜることで効果が強まる「相乗効果」、予想と同程度なら「相加効果」、一定以上下回れば効果を打ち消し合う「拮抗」と判定しています。

さらに、効果の高かった組み合わせの2つの精油について成分を分析しました。主な成分を天然の比率で混ぜた液と、そこから成分を一つずつ抜いた液を比べ、どの成分を抜くと効き目が落ちるかを調べることで、効き目の中心となる成分を探りました。

主な結果

26種類のうち、最も強い接触毒性を示したのは、ショウブ科の植物セキショウ(Acorus gramineus)の精油で、LD50は成虫1匹あたり4.01マイクログラムでした。一方、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)の精油はLD50が163.20マイクログラムで、単独では効き目が比較的弱い部類に入りました。

ところが、セキショウ精油と他の25種類を組み合わせると、最も強い相乗効果を示したのはこのローズマリー精油でした。単独での死亡率から予想された46%に対し、混合では74%の虫が死にました。ほかに相乗効果が見られたのは3種類との組み合わせで、6種類では相加効果、15種類では効き目を打ち消し合う拮抗という結果でした。精油は混ぜれば必ず効果が高まるわけではないことがうかがえます。

成分分析では、セキショウ精油の約70%をβ-アサロンが占め、ほかにイソオイゲノールメチルエーテルとアリストロンが主な成分でした。論文が分析したローズマリー精油では、パチュリアルコールが約64%を占めていました。成分を抜く実験では、セキショウではβ-アサロンを、ローズマリーではパチュリアルコールを抜いたときに死亡率がはっきり下がりました。たとえばローズマリーの場合、精油そのものでは92%だった死亡率が、パチュリアルコールを抜いた混合液では58%にとどまりました。

これら2つの成分を単独で試すと、β-アサロンのLD50は3.82マイクログラム、パチュリアルコールは39.93マイクログラムで、いずれもそれぞれの元の精油より強い効き目を示しました。一方、2つの成分を混ぜた場合は、精油どうしのような明確な相乗効果は確認されませんでした。比率を変えて試すと、1対9の割合のときだけ死亡率の比較では相乗効果と判定されましたが、半数致死量にもとづく評価では相加効果にとどまりました。この混合液の効き目は、β-アサロン単独より弱く、パチュリアルコール単独やローズマリー精油よりは強いものでした。

研究が示すこと

研究チームは、精油どうしでは相乗効果が出たのに、主成分どうしでは相加効果にとどまった点に注目しています。著者らは、精油の効き目は量の多い主成分だけで決まるのではなく、少量しか含まれない成分や単独では効き目の弱い成分も含めた、複数の成分の組み合わせによって生まれている可能性があると論じています。

論文は結論として、セキショウ精油の主な有効成分であるβ-アサロンが、ココクゾウムシを植物由来の手段で防除するうえで有望な成分だと述べています。今回の研究は、植物の精油の中に貯蔵穀物の害虫に強く作用するものがあること、そして精油の組み合わせ方によって効き目が強まることも弱まることもあることを、具体的な比較で示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Bo Kong(College of Forestry, Southwest Forestry University, Address: no. 300, Bailong Temple, Panlong District, Kunming City, Yunnan Province, China. Postcode: 650051)、Xianhui Zhou(College of Forestry, Southwest Forestry University, Address: no. 300, Bailong Temple, Panlong District, Kunming City, Yunnan Province, China. Postcode: 650051)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bo Kong, Xianhui Zhou. SYNERGISTIC CONTACT ACTIVITY CONSTITUENTS OF ACORUS GRAMINEUS AND ROSMARINUS OFFICINALIS ESSENTIAL OILS AGAINST SITOPHILUS ORYZAE. The Journal of Animal and Plant Sciences 2026-10-19. DOI: 10.36899/japs.2027.1.0010. 原著ライセンス:CC BY.