著者の所属・活動拠点の国は、アルゼンチンです。
掲載誌:Applied Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
健康に役立つ可能性のある成分を含む食品への関心が高まり、パンやパスタなど穀物を原料とする食品に、植物由来の成分を加える試みが広がっています。ただし、小麦粉の一部を別の植物素材に置き換えると、ゆでたときの崩れやすさや食感など、パスタとしての品質が損なわれることがよくあります。
アルゼンチンの研究チームは、ポリフェノールなどの抗酸化成分を多く含むことで知られるハーブのバジル、ローズマリー、オレガノに注目しました。植物素材を加えたパスタの研究は多いものの、香草をパスタの栄養的な素材として調べた例は少ないと著者らは述べています。そこで、これらのハーブ粉末をパスタに加えたとき、調理品質を保ちながら抗酸化成分を増やせるかを調べました。
どのように調べたか
研究チームは、乾燥させて粉にしたバジル、ローズマリー、オレガノの葉で、パン用小麦粉の2.5%、5.0%、7.5%を置き換え、フェットチーネ状のパスタを作りました。比較には、ハーブを加えない通常のパスタ(対照)を用いています。
ゆでたパスタについては、ゆで時間、ゆで汁に溶け出した固形分の量(ゆで損失)、吸水量、色、硬さなどの食感を測りました。あわせて、ポリフェノールの総量と、抗酸化能を示す二つの指標を測定しました。一つは不安定な分子(ラジカル)を消去する働き、もう一つは他の物質に電子を与えて還元する力です。
さらに、ハーブを2.5%加えたパスタと対照のパスタについて、口、胃、腸での消化を試験管内で再現する方法を用い、でんぷんの分解の程度と、腸の段階で溶け出して吸収されうる状態になったポリフェノールの量(生体利用可能性の目安)を調べました。
主な結果
ハーブを2.5%または5.0%加えたパスタは、いずれもゆで損失が乾燥重量100gあたり5.5〜8.0gにとどまり、市販パスタの目安とされる8g以下の範囲に収まりました。特にバジルを加えたパスタは、置き換え割合が低い場合に、ゆで時間などの調理特性が対照と近い結果でした。一方、ローズマリーやオレガノでは置き換え割合が高くなるとゆで時間が延び、ゆで損失も増える傾向がありました。ハーブの割合が増えるほどパスタの色は暗くなり、多くの配合でゆでた後の硬さが増しました。ミネラル量は置き換え割合とともに増えましたが、たんぱく質量には対照との有意な差は見られませんでした。
ハーブを加えたすべてのパスタで、ポリフェノール量はゆでたパスタ1gあたり1.23〜3.00mg(没食子酸換算)となり、対照より有意に高くなりました。ラジカル消去能は対照では検出されませんでしたが、ハーブ入りパスタでは1gあたり34.91〜85.61µmol(トロロックス換算)、還元力は2.88〜12.89µmolと、いずれも対照を上回りました。
ただし、抗酸化能はハーブの量に比例して高まったわけではなく、2.5%のパスタが、より割合の高いパスタと同程度か、それ以上のラジカル消去能を示すことがよくありました。ゆでたパスタの段階ではローズマリー入りが最も強い抗酸化能を示した一方、消化を再現した後の腸の段階では、バジル入りがポリフェノールの溶け出しやすさと還元力で最も高い値を示しました。
また、2.5%のハーブを加えたパスタはすべて、試験管内でのでんぷん分解が対照より有意に少なくなりました。著者らはこの結果について、食後の血糖値の上昇を抑えられる可能性を示唆するものと述べています。なお、今回は味や香りを人が評価する官能評価は行っておらず、消費者の受け入れやすさは検討課題として残されていると著者らは記しています。
研究が示すこと
この研究は、身近なハーブの粉末を少量加えることで、パスタの調理品質を大きく損なわずに抗酸化成分を増やせる場合があることを、試作と分析によって示しました。同時に、効果は加える量を増やせば単純に高まるものではなく、ハーブの種類によって、調理品質や、ゆでた後と消化後の抗酸化能の現れ方が異なることも明らかになりました。栄養面を改善したパスタづくりでは、どのハーブをどれだけ加えるかの組み合わせが重要であることを伝える研究です。
原著論文の著者・所属:María Belén Vignola(Centro UTN i + d Ingeniería de Procesos Sustentables (InProSus), Facultad Regional San Francisco, Universidad Tecnológica Nacional, Av. de la Universidad 501, San Francisco CP 2400, Córdoba, Argentina; Consejo Nacional de Investigaciones Científicas y Técnicas (CONICET), Godoy Cruz 2290, Ciudad Autónoma de Buenos Aires CP 1425, Buenos Aires, Argentina)、Mariela Cecilia Bustos(Instituto de Ciencia y Tecnología de los Alimentos Córdoba (ICYTAC, CONICET-UNC), Av. Filloy s/n, Córdoba Capital CP 5000, Córdoba, Argentina)、Alfonsina Ester Andreatta(Centro UTN i + d Ingeniería de Procesos Sustentables (InProSus), Facultad Regional San Francisco, Universidad Tecnológica Nacional, Av. de la Universidad 501, San Francisco CP 2400, Córdoba, Argentina; Consejo Nacional de Investigaciones Científicas y Técnicas (CONICET), Godoy Cruz 2290, Ciudad Autónoma de Buenos Aires CP 1425, Buenos Aires, Argentina)、Gabriela Teresa Pérez(Instituto de Ciencia y Tecnología de los Alimentos Córdoba (ICYTAC, CONICET-UNC), Av. Filloy s/n, Córdoba Capital CP 5000, Córdoba, Argentina)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):María Belén Vignola, Mariela Cecilia Bustos, Alfonsina Ester Andreatta, et al. Evaluation of Quality, Antioxidant Capacity, and In Vitro Digestibility of Wheat Pasta Fortified with Basil, Rosemary, and Oregano. Applied Sciences 2026-10-21. DOI: 10.3390/app162010415. 原著ライセンス:CC BY.