著者の所属・活動拠点の国は、メキシコ、チリ、ポーランド、スペインです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:成分ごとに適した取り出し方を探る
ローズマリーは地中海地域原産のシソ科の香草で、食品や化粧品の分野で天然素材として関心を集めています。ローズマリーには、ロスマリン酸などのフェノール化合物、カルノシン酸やカルノソールといったテルペン類、1,8-シネオールやα-ピネン、カンファーなどを含む精油成分が含まれています。著者らは、これらの成分には抗酸化作用や抗菌作用などが報告されている一方、性質がそれぞれ大きく異なる点に注目しました。そのため、目的とする成分を効率よく、安定した状態で取り出すには、抽出方法の選び方が重要になります。
この総説の目的は、ローズマリーから有用成分を取り出す従来の方法と新しい方法を分析・比較することです。あわせて、機能性食品や化粧品の開発にどう応用できるかという観点から、各技術の利点と限界を整理しています。
何を調べたか:文献をもとに抽出技術を比較
著者らは、Scopus、Web of Science、PubMedなどの学術データベースで文献を検索しました。対象は、2020年1月から2026年7月までに英語で発表された査読付きの論文と総説です。成分の性質を理解するうえで基礎となる研究については、2020年より前のものも採用しています。
そのうえで抽出法を、加熱して香りの成分を蒸気とともに取り出す「蒸留法」、溶媒に溶かし出す「溶媒抽出法」、超音波やマイクロ波などのエネルギーを利用する方法や新しい溶媒を使う方法の三つに分けて検討しました。著者らは、別々の研究から集めた数値は条件がそろっていないため、技術の順位付けとして読むべきではないと注意しています。
主な結果:成分の性質が方法の向き不向きを左右する
総説によると、精油に含まれる揮発しやすい成分は比較的極性が低く、つまり水になじみにくい性質を持つため、蒸留法で回収しやすいとされます。一方で蒸留法は、フェノール化合物を取り出す力が限られています。水になじみやすいロスマリン酸は極性の高い溶媒で回収されやすく、油になじみやすいカルノシン酸やカルノソールは、極性の低い溶媒や超臨界二酸化炭素を使う方法と相性がよいと整理されています。
エネルギーを利用する方法の例として、植物を水と一緒に加熱して精油を取り出す「水蒸留」にマイクロ波加熱を組み合わせた研究が紹介されています。この研究では、従来の水蒸留で180分かかっていた抽出時間が20分に短縮され、精油の収量はほぼ同程度でした。超音波は、液体中で微小な泡が生じてはじける現象によって細胞壁を壊し、中の成分を出しやすくする仕組みと説明されています。
新しい溶媒として注目されているのが「深共晶溶媒」です。これは複数の成分を混ぜて作る液体で、組み合わせによって性質を調整できます。報告によれば、メントールとラウリン酸からなる水になじみにくい組成はカルノシン酸やカルノソールの回収に、乳酸とブドウ糖からなる組成はロスマリン酸の回収に適していました。ただし著者らは、この溶媒が本質的に環境にやさしいとは限らないと述べています。毒性や生分解性は構成成分によって変わるため、個別に評価する必要があるとしています。
高い圧力をかけて液体と気体の中間的な状態にした二酸化炭素を使う「超臨界流体抽出」についても、多くの研究が紹介されています。この方法では、圧力や温度、エタノールなどの補助溶媒を変えることで、取り出す成分を段階的に切り替えられると報告されています。ある研究では、エタノールを加えた条件でカルノシン酸が高い濃度で得られました。一方、ロスマリン酸の回収ではソックスレー抽出という従来の溶媒抽出法が最も効果的だったとされ、成分によって適した方法が異なることが示されています。
研究が示す意味:万能の方法はなく、目的成分から考える
著者らは、どの状況でも優れた単一の抽出法は存在しないと結論づけています。抽出法を選ぶ際は、全体の収量だけで判断するのではなく、目的とする成分の極性、植物組織内での存在場所、熱への強さを出発点にすべきだとしています。前処理や技術の組み合わせは抽出時間を短縮できる場合がありますが、不要な工程はエネルギーやコストの増加、成分の分解につながりうるとも指摘しています。
また、単独の成分で確かめられた働きが、そのままローズマリー抽出物全体に当てはまるわけではないという点も強調されています。この総説は、ローズマリーを食品や化粧品の素材として活用する際に、取り出したい成分に合わせて抽出方法を選ぶための手がかりを示しています。
原著論文の著者・所属:Abraham Josué Nevárez-Ramírez(Laboratorio de Inmunofarmacología, Unidad Profesional Interdisciplinaria de Biotecnología del Instituto Politécnico Nacional, Av. Acueducto s/n Barrio la Laguna Ticomán, Ciudad de México 07340, Mexico)、Mónica I. García-Aranda(Laboratorio de Inmunofarmacología, Unidad Profesional Interdisciplinaria de Biotecnología del Instituto Politécnico Nacional, Av. Acueducto s/n Barrio la Laguna Ticomán, Ciudad de México 07340, Mexico)、Rene Cabezas(Departamento de Química Ambiental, Facultad de Ciencias, Universidad Católica de la Santísima Concepción, Concepción 4090541, Chile)、Roberto Castro-Muñoz(Department of Sanitary Engineering, Faculty of Civil and Environmental Engineering, Gdansk University of Technology, G. Narutowicza St. 11/12, 80-233 Gdansk, Poland; Institute of Sustainable Processes, University of Valladolid, Dr. Mergelina s/n., 47011 Valladolid, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abraham Josué Nevárez-Ramírez, Mónica I. García-Aranda, Rene Cabezas, et al. Unlocking the Potential of Rosmarinus officinalis L.: Modern and Sustainable Strategies for the Extraction of Bioactive Metabolites for Cosmetic and Functional Food Applications. Foods 2026-09-14. DOI: 10.3390/foods15183247. 原著ライセンス:CC BY.