著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Journal of Food Process Engineering

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究のねらい

インゲンマメなどの乾燥豆は栄養価の高い食材として知られています。一方で、レクチンと呼ばれる成分も含みます。レクチンは大量に食べると栄養の吸収を妨げたり、免疫反応を引き起こしたりすることがあり、栄養の働きを妨げる「抗栄養成分」の代表例とされています。品種によって種皮の色や大きさ、含まれる成分は異なるため、加工条件が品種ごとにどう影響するかを知ることが重要です。

焙煎は豆類で広く使われる加熱加工です。しかし著者らによれば、焙煎の温度と時間の組み合わせが、ポリフェノールなどの植物由来成分、抗酸化能、抗栄養成分にどう影響するかは、これまで十分に明らかになっていませんでした。研究チームは、豆の粉を作る際の焙煎条件を最適化することを目指しました。

何を調べたか

対象は、クランベリー豆、ネイビー豆、ピント豆、イエロー豆の4種のインゲンマメ品種とヒヨコマメの計5種類です。豆は12時間水に浸した後、50℃で乾燥させ、試験規模のオーブンで焙煎しました。焙煎温度は150〜220℃、時間は10〜20分の範囲で組み合わせています。

焙煎後の豆粉では、総フェノール量、総フラボノイド量、2種類の方法による抗酸化能、プロアントシアニジン(ポリフェノールの一種)、カロテノイドなどを測定しました。レクチンについては、ウサギの赤血球を凝集させる働きの強さを調べています。

研究チームは「応答曲面法」という統計的な実験計画の手法を使いました。少ない試験回数で温度と時間の組み合わせを効率よく試し、その結果を数式で表すことで、どの条件が望ましいかを推定します。論文によると、多くの測定項目で、この数式は実際のデータとよく一致しました。

主な結果

焙煎の条件は、測定したすべての項目に有意な影響を与えていました。最適な条件は、ほとんどの品種で220℃・20分でした。ただしイエロー豆だけは、同じ20分でもより低い150℃が最適と報告されています。

品種ごとの差も目立ちました。総フェノール量が最も大きく増えたのはネイビー豆で、増加率は最大514%でした。ネイビー豆は、鉄を還元する力で測る抗酸化能でも最も高い値を示しています。クランベリー豆では総フラボノイド量が大きく増え、もう一つの抗酸化能の指標も高い値になりました。

レクチンは焙煎後、すべての品種で大きく減り、要旨では最大85%の減少と報告されています。品種による違いもありました。ピント豆とヒヨコマメは比較的低い温度で減少しましたが、クランベリー豆はレクチンがなくなるまでに最も高い温度を必要としました。著者らは、特にイエロー豆とクランベリー豆では、レクチンを確実に失活させるために品種に合わせた条件調整が必要だと述べています。

研究が示すこと

この研究は、焙煎の温度と時間を適切に選ぶことで、豆粉の抗酸化能を高めながらレクチンを減らせることを示しました。著者らは、有用な成分の保持と抗栄養成分の低減は二者択一ではなく、両立できる傾向がみられたとしています。

同時に、最適な条件は豆の品種によって異なることも分かりました。著者らは、こうした焙煎豆粉が機能性食品の素材として利用できる可能性を示しています。ただし、健康への効果を実際に確かめるには、生体での検証が今後必要だと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Olumide O. Fashakin(Department of Biosystems and Agricultural Engineering Michigan State University East Lansing Michigan USA; Department of Biosystems and Agricultural Engineering Michigan State University East Lansing MI USA)、Karen Cichy(USDA‐ARS, Sugarbeet and Bean Research Unit East Lansing Michigan USA)、Ilce G. Medina‐Meza(Department of Biosystems and Agricultural Engineering Michigan State University East Lansing Michigan USA; Department of Biosystems and Agricultural Engineering Michigan State University East Lansing MI USA; University of Kansas Medical Center Department of Internal Medicine Kansas City Kansas USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Olumide O. Fashakin, Karen Cichy, Ilce G. Medina‐Meza. Optimization of Roasting Enhances Bioactive Profiles, Antioxidant Activity, and Reduces Lectin Content in Bean Flours: Implications for Functional Plant‐Based Ingredients. Journal of Food Process Engineering 2026-10-29. DOI: 10.1111/jfpe.70838. 原著ライセンス:CC BY.