著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Frontiers in Plant Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

パパイヤは種子で増やせて生育サイクルも短いため、異なる親系統を掛け合わせた一代雑種(F1)を品種づくりに利用しやすい果樹です。一方で、これまでの育種は収量や病害・環境ストレスへの強さが中心で、果実の栄養面や食味の改良はあまり進んでいなかったと著者らは指摘しています。また、パパイヤは皮が薄く傷みやすいため、収穫後の日持ちも重要な改良目標とされています。

研究チームは、栄養性と食味にかかわる果実の性質について、どの親系統が優れた形質を子に伝えやすいか、どの組み合わせの雑種が親を上回るかを明らかにし、改良に役立つ親と交配の組み合わせを見つけることを目指しました。

何をどのように調べたか

研究では、形や果実の性質が異なる6つの近交系(自殖などで遺伝的にそろえた系統)を親として用い、すべての親を互いに掛け合わせる「ダイアレル交配」を行いました。どちらを母親にするかを入れ替えた正逆の組み合わせも含めて、30通りのF1雑種が作られました。親と雑種は3反復の圃場試験で栽培され、同じ熟度で収穫した果実が分析されました。

調べた性質は、甘さの目安となる可溶性固形物含量(糖度)、ポリフェノールの一種である総フェノール含量と総フラボノイド含量、試薬を用いて測る抗酸化活性、色素成分であるβ-カロテン、リコペン、総カロテノイド、果肉の硬さ、そして室温(約25℃)で保存したときの日持ち日数です。日持ちは、重量が20%を超えて減り、過熟やかびの発生が見られるまでの日数として記録されました。

解析の中心となったのは、遺伝育種の基本的な指標です。「一般組合せ能力」は、ある親がさまざまな相手と交配したときに平均して子にどれだけ良い性質を伝えるかを示し、「特定組合せ能力」は、特定の親同士の組み合わせが平均的な予想を超えてどれだけ良い結果を出すかを示します。さらに、雑種が両親の平均や優れた方の親をどの程度上回るか(雑種強勢)も算出されました。

主な結果

親と雑種の間には、調べたすべての性質で大きなばらつきがあり、多くの性質で雑種の平均値が親を上回ったと報告されています。例えば、糖度が最も高かったのは雑種P-9-12×P-9-5(12.80°Brix)で、総フェノールと総フラボノイドが最も多かったのは雑種P-7-9×P-9-5でした。

親系統の中では、P-9-12が糖度、抗酸化活性、β-カロテン、リコペン、総カロテノイド、果肉の硬さ、日持ちについて子に良い性質を伝えやすい親と評価されました。一方、P-9-5は総フェノールと総フラボノイドを高める親として優れていました。

雑種強勢の大きさは多くの性質で低~中程度でしたが、リコペンや総カロテノイドでは大きな値が見られました。組み合わせごとに得意な性質は異なり、すべての性質で優れた単一の雑種はありませんでした。著者らは、糖度ではPN×P-7-2、リコペンではP-7-2×P-9-5、日持ちではP-7-2×PS3などを有望な組み合わせとして挙げています。また、果肉の硬さについては、優れた方の親を上回る雑種が一つもありませんでした。

研究が示すこと

著者らは、パパイヤ果実の品質や栄養にかかわる性質には、親から足し算的に受け継がれる遺伝の働きと、特定の組み合わせで現れる遺伝の働きの両方が関与していると結論づけています。特に果肉の硬さは、雑種の組み合わせに頼るよりも、良い親を選ぶことで改良しやすい性質だと考察されています。

この研究は、性質ごとに適した親と交配の組み合わせが異なることを具体的に示し、栄養面に優れ日持ちのよいパパイヤ雑種を育成する余地が大きいことを示した成果として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Preeti Singh(Department of Horticulture (Fruit Science), Bihar Agricultural University)、Jai Prakash(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Sanjay Kumar Singh(Indian Council of Agricultural Research)、Amit Kumar Goswami(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Kanhaiya Singh(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Satyabrata Pradhan(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Chaithra T. S.(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Laya Prasanna(Division of Fruits and Horticultural Technology, Indian Agricultural Research Institute (ICAR))、Zakir Hussain(Division of Vegetable Science, Indian Agricultural Research Institute (ICAR), New Delhi, India)、Naveen Kumar Maurya(Department of Fruit Science, College of Horticulture and Forestry, Acharya Narendra Deva University of Agriculture and Technology, Kumarganj, India)、Hidayatullah Mir(Regional Horticulture Research Sub-Station, Bhaderwah, Sher-e-Kashmir University of Agricultural Sciences and Technology of Jammu)、Subodh Kumar Sinha(ICAR-National Institute for Plant Biotechnology, New Delhi, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Preeti Singh, Jai Prakash, Sanjay Kumar Singh, et al. Combining ability analysis and heterosis for antioxidants, carotenoids and shelf life in papaya (Carica papaya L.). Frontiers in Plant Science 2026-10-26. DOI: 10.3389/fpls.2026.1920679. 原著ライセンス:CC BY.