著者の所属・活動拠点の国は、コロンビアです。

掲載誌:PLOS Global Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品の安全は世界の公衆衛生を支える重要な柱です。著者らによると、食品が原因の病気には世界で毎年6億人以上がかかり、およそ42万人が亡くなっています。その負担は、上下水道などの衛生基盤や監視の仕組みに課題が残る低・中所得国でより大きいとされます。

研究チームが注目したのは「そのまま食べる食品」です。これは、食べる前に加熱などを追加で行わない料理や飲み物を指します。調理や取り扱いの途中で入り込んだ微生物が、食べる人にそのまま届くおそれがあります。対象は、公的な監視の対象となる飲食店や施設で作られたり扱われたりした食品です。工場で包装された市販品は含みません。

調査地はコロンビアのオリノキア地方、とくにメタ県です。高温多湿の熱帯気候で、都市部と農村部の差が大きい地域です。それにもかかわらず、公的監視データを使って関連する要因を分析した研究は、これまで少なかったといいます。そこで著者らは、行政の監視で集められた7年分のデータを使いました。そして、どんな条件の食品が微生物の基準を満たさないことと関連しているのかを明らかにしようとしました。

何をどう調べたか

研究チームは、2017年から2023年にメタ県の公衆衛生検査機関が検査した食品試料1,868件の結果を、さかのぼって分析しました。これらは、定期的な衛生監視の中で採取されたものです。採取地は32の市町村(メタ県内29、近隣県3)にわたります。このうち最終的な判定が有効だった1,846件を、要因の分析に用いました。

検査項目は二種類です。一つは、取り扱いや衛生状態の悪さを示す「衛生指標菌」です。これには大腸菌群、大腸菌、一般生菌(中温で増える細菌全般)、カビ・酵母が含まれます。もう一つは、食中毒を起こす病原菌です。サルモネラ、リステリア・モノサイトゲネス、セレウス菌、黄色ブドウ球菌の仲間(コアグラーゼ陽性ブドウ球菌)が調べられました。国の基準を一項目でも満たさない場合を「基準不適合」としました。

分析では、採取年、市町村の区分、施設の種類、食品の種類を組み合わせました。市町村は、県都ビジャビセンシオ、中規模の市町村、農村・散在型の市町村に分けました。食品は、加熱調理された料理、生または手作業の多い食品(ジュース、サラダなど)、汁物や温かい飲み物、乳製品・甘味などに分けました。そのうえで、主な分析には多変量ロジスティック回帰という統計手法を使いました。ほかの条件の影響を差し引いて、各要因と不適合との関連を見る方法です。

主な結果

分析対象の試料のうち39.5%が、少なくとも一つの微生物基準を満たしていませんでした。項目別に多かったのは衛生指標菌です。基準超過の割合は、大腸菌群が29.0%、一般生菌が12.7%、大腸菌が12.3%でした。一方、病原菌の検出は少なく、セレウス菌が2.2%、黄色ブドウ球菌の仲間が1.8%、サルモネラが0.2%でした。リステリアは検出されませんでした。著者らは、不適合の大部分は特定の病原菌の検出によるものではないと報告しています。主に衛生指標菌の基準超過によるものだったということです。

要因の分析で最も強く関連したのは食品の種類でした。ジュースやサラダのような生または手作業の多い食品は、加熱調理された料理と比べて、基準不適合となるオッズ(起こりやすさを表す指標)が約8.4倍でした。また、農村・散在型の市町村で採取された試料では約1.3倍、2020年に採取された試料では約1.8倍と、不適合のオッズが高いことも示されました。なお、2020年は採取数が少なかった年です。

施設の種類は、単純な比較では不適合と関連が見られました。しかし、ほかの条件をそろえた分析では、明確な関連は残りませんでした。年ごと、施設ごと、市町村ごとの傾向を探る補助的な分析も行われました。そこでは、多くの場面で衛生指標菌が目立つという共通の傾向が見られました。これらはいずれも観察データに基づく「関連」の報告です。個々の要因が不適合を引き起こしたことを、直接示したものではありません。

研究が示すこと

この研究は、熱帯の低・中所得国の地域を対象に、公的な監視データを分析しました。その結果、そのまま食べる食品が微生物の基準を満たさないことに、食品の種類、地域の特性、採取年が関わっていることを示しました。とりわけ、生のまま手を多く加えて作る食品で、不適合が起こりやすい傾向が際立っていました。

著者らは、不適合の多くが衛生指標菌によるものだった点を重視しています。そのため、監視の対象には病原菌の検出だけでなく、調理や取り扱いの衛生状態と工程管理も含めるべきだと述べています。そして、こうした知見は、危険度の高い食品や地域を優先して監視する方法を支える根拠になると結論づけています。

原著論文の著者・所属:L. Marcela Montilla Rodríguez(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta; GRIVI Research Group, Faculty of Medicine, Universidad Cooperativa de Colombia)、Jorge Alejandro Obando Bastidas(GEDOVAZ Research Group, Faculty of Business Administration, Universidad Cooperativa de Colombia)、Hugo Andrés Rodríguez Fajardo(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Astrid Magaly Mora López(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Shirley Viviana Tique Aragón(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Dora Patricia Rozo Cruz(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Edgar Calderón Vega(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Norma Cristina Pavas Escobar(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta; GRIVI Research Group, Faculty of Medicine, Universidad Cooperativa de Colombia)、Laura Nathalia Obando Vargas(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Jean Paul Farfán(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)、Marina Sthella Gonzalez Robayo(GISSME Research Group, Secretaría de Salud del Meta, Villavicencio, Colombia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):L. Marcela Montilla Rodríguez, Jorge Alejandro Obando Bastidas, Hugo Andrés Rodríguez Fajardo, et al. Factors associated with microbiological non-compliance in ready-to-eat foods: A seven-year analysis of official food safety surveillance data in a tropical low- and middle-income country. PLOS Global Public Health 2026-10-05. DOI: 10.1371/journal.pgph.0006492. 原著ライセンス:CC BY.