著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Psychology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
下ごしらえと包装が済んでいて、温めるだけ、あるいはそのまま食べられる「調理済み食品」は、手軽さから広く利用されるようになっています。その一方で、食品の安全性や栄養、添加物について心配する声も上がっています。中国では、著名なインフルエンサーと外食チェーンとの論争や、学校給食への導入に多くの保護者が反対した出来事をきっかけに、特に子どもの食事をめぐって議論が広がりました。
研究チームが注目したのは「親としての保護動機」です。これは、子どもを危険から守るために自分の行動を変えようとする心の働きを指します。著者らは、この心の働きが人類の進化の過程で子どもの生存を守るために備わったものだとする考え方に立っています。そのうえで、この動機が強い人ほど調理済み食品を買いたいと思わなくなるのか、そうだとすれば何がその間をつないでいるのかを明らかにしようとしました。
何を調べたか
研究チームは2025年9月、中国のオンライン調査サービスを使ってアンケートを行い、985人の消費者から有効な回答を得ました。著者らは、こうした保護の心の働きは子どもがいない人にも生じうるという先行研究を踏まえ、子どもの有無を問わず成人を対象にしています。子どもの有無や将来子どもを持つ可能性、論争を知っていたかどうかなどは、結果への影響を差し引くための項目として分析に組み込みました。
質問票では、保護動機の強さ、調理済み食品に感じる「リスク」(買った場合に悪い結果が起きそうだという不安や不確かさ)、購入意向を尋ねました。あわせて、ふだん健康にどれだけ気を配っているかを示す「健康意識」と、原材料表示や加工方法、産地といった具体的な製品情報をどれだけ重視するかを示す「情報感度」も尋ねています。なお、この調査はある一時点での回答を集めたものなので、示されるのは項目どうしの関連です。
主な結果
分析の結果、親としての保護動機が強い人ほど、調理済み食品の購入意向が低い傾向がみられました。この関係は、感じるリスクを介して説明できることも分かりました。保護動機が強い人ほど調理済み食品にリスクを感じやすく、リスクを強く感じる人ほど購入意向が低いという流れです。リスクの感じ方を考慮すると、保護動機と購入意向の直接の結びつきは統計的にはっきりしなくなりました。
さらに、この流れの強さは人によって違いました。健康意識が高い人では、リスクを介した関係がはっきり現れましたが、健康意識が低い人でははっきりしませんでした。情報感度は逆の働きを示しました。製品情報をあまり重視しない人ではリスクを介した関係が明確でしたが、情報をよく重視する人でははっきりしませんでした。著者らは、具体的な情報に目を向ける人は、漠然とした「守りたい」という気持ちよりも製品ごとの情報に基づいてリスクを判断するためではないかと考えています。また補足の分析では、実際に子どもがいるかどうかによって、保護動機とリスクの感じ方との関係は大きく変わりませんでした。
研究が示すこと
これまでの調理済み食品の研究は、価格や味、信頼感など、目の前の商品評価に関わる要因を主に扱ってきました。この研究は、子どもを守ろうとするより根本的な動機も、リスクの感じ方を通じて調理済み食品の受け止め方と結びついていることを示しました。また、その結びつきは健康への関心が高い人で強く、具体的な製品情報を重視する人では弱いことも報告しています。食品の選択には、便利さと子どもの安全への配慮のせめぎ合いが関わっているといえます。
著者:Shaofeng Yuan(Faculty of Economics, Business School, Liaoning University)、Weike Wu(Faculty of Economics, Asia-Australia Business College, Liaoning University)、Yidan Ma(Faculty of Economics, Business School, Liaoning University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shaofeng Yuan, Weike Wu, Yidan Ma. From protection to rejection: the role of parental protection motivation in pre-prepared food consumption. Frontiers in Psychology 2026-10-14. DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1928184. 原著ライセンス:CC BY.