著者の所属・活動拠点の国は、エチオピアです。
掲載誌:Journal of Hunger & Environmental Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
エチオピアでは、2021年にモバイルマネーサービス「Telebirr」が始まってから、モバイルマネーの利用が急速に広がりました。モバイルマネーとは、携帯電話を使ってお金を送ったり受け取ったり、蓄えたりできる仕組みです。一方で、こうした普及が農村の家庭の食料事情とどう結びついているかについては、まだ証拠が限られていました。
研究チームは、エチオピア中部の小規模農家を対象に、モバイルマネーの利用と家庭の食料の確保との関係を調べました。あわせて、その関係がどのような経路を通じて生じているのかも検討しています。
何を調べたか
著者らは、エチオピア中部のアダア地区とアダマ地区に住む小規模農家560世帯について、ある一時点で集めたデータを分析しました。家庭の食料事情は「食料消費スコア」という指標で測られています。これは、どのような種類の食品をどれくらいの頻度で食べているかをもとに、食生活の状態を点数で表すものです。
分析では、モバイルマネーを使う世帯と使わない世帯との違いを考慮しながら両者を比べる統計手法が用いられました。さらに、モバイルマネーと食料事情を結ぶ仲立ちとして、三つの経路が検討されました。お金を蓄えて必要なときに使えるようにする「貯蓄による家計の平準化」、「送金の受け取り」、そして種子や肥料などの農業資材を手に入れるための「信用(借り入れ)の利用」です。
主な結果
単純に比べると、モバイルマネーを利用する世帯と利用しない世帯の食料消費スコアの差は16.26点でした。これに対し、世帯の条件の違いを考慮した分析では、モバイルマネーの利用は8.81点高い食料消費スコアと関連していました。
研究チームによると、この条件を考慮した差のうち49%は、検討した三つの経路で説明されました。内訳は、貯蓄による家計の平準化が28%、送金の受け取りが12%、農業資材向けの信用の利用が9%でした。三つの経路の中では、貯蓄の寄与が最も大きかったことになります。
なお、この研究は一時点のデータに基づくもので、報告されているのはモバイルマネーの利用と食料消費スコアとの関連です。
この研究が示すこと
この研究は、エチオピア中部の農村で、モバイルマネーの利用がよりよい食料消費と結びついており、その結びつきの半分近くが貯蓄、送金、借り入れという経路、とりわけ貯蓄を通じて説明されることを報告しています。著者らは、この結果が対象を絞った貯蓄の仕組みや、モバイルマネーの窓口となる代理店網の拡充を支持するものだと述べています。デジタルなお金の仕組みが、どのような経路で日々の食卓とつながりうるのかを考える手がかりとなる研究です。
原著論文の著者・所属:Alem Shumiye(Arts and Humanities, Addis Ababa, Ethiopia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alem Shumiye. Digital money, analogue hunger? Mobile financial inclusion and the transmission pathways to rural household food security in Central Ethiopia. Journal of Hunger & Environmental Nutrition 2026-10-20. DOI: 10.1080/19320248.2026.2741935. 原著ライセンス:CC BY.