著者の所属・活動拠点の国は、中国、南アフリカです。

掲載誌:PLoS ONE

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

霊芝として知られるマンネンタケ属(Ganoderma)のきのこは、中国の古い医薬書にも記録があり、東アジアで長く利用されてきました。現在、中国で人工栽培の主流となっているのはGanoderma sichuanense(以前はG. lingzhiと呼ばれていた種)です。一方、近縁のG. sessileは中国の野生の森林に広く分布していますが、大規模な商業栽培には至っていません。研究チームによると、栽培に使われる菌株(同じ種の中で系統の異なる株)の間では、栽培上の性質や製品の品質が大きく異なります。

著者らは、これまでの菌株評価には三つの課題があったと指摘しています。一つの生化学的指標や形の特徴だけに頼る評価が多いこと、調査地域が限られていて全国の主要産地を網羅していないこと、そしてこの二つの種を並べて比べた研究が少ないことです。そこで研究チームは、中国各地の菌株を集め、種の判別から生育、収量、成分、重金属までをまとめて比較し、優れた菌株を選び出すことを目指しました。

何をどのように調べたか

研究チームは、中国の複数の森林地帯と栽培地域から、統一した基準で18菌株を集めました。栽培用の純粋培養株と、野生の子実体(一般に「きのこ」として目に見える部分)から研究室で分離した野生株の両方が含まれます。

まず、各菌株がどの種に属するかを確かめました。種の判別には、子実体や胞子の形の観察に加えて、三つの遺伝子領域の塩基配列を比べる系統解析を用いました。系統解析とは、DNA配列の似かたから生物どうしの類縁関係を枝分かれ図として推定する方法です。

続いて、寒天培地の上で菌糸(きのこの本体をなす糸状の細胞)が広がる速さと、栽培用の培地での生育や子実体の収量を調べました。さらに、乾燥させた子実体について、多糖類、トリテルペン類、フラボノイド類といった成分の量と、二種類の試験法による抗酸化能を測定しました。あわせて、カリウムと亜鉛、カドミウムと鉛の含有量も測定しています。

主な結果

系統解析の結果、18菌株のうち11株がG. sichuanense、7株がG. sessileと判定されました。著者らは、G. sichuanenseと結びつけられてきた栽培地域に、二つの種が混在していることが確認されたと報告しています。形にも違いがありました。G. sichuanenseは傘が厚めで柄が長く(約7〜11cm)、胞子は楕円形で表面がなめらかでした。G. sessileは柄が短く(約2〜4cm)、胞子は丸みを帯びて表面にしわや突起が見られました。

生育については、寒天培地での菌糸の伸びの速さが、実際の栽培培地での生育を必ずしも予測しないことが示されました。HZ-TS株はどちらの条件でも速い生育を保ちました。また、菌糸の成長が速い株が高収量とは限らず、収量が最も多かったのは22GL-12株(乾燥重量で1袋あたり52g)、次いでHZ-PJ株(同39g)でした。HZ-PJ株は子実体の形成が最も早い株でもありました。著者らは、G. sessileの株は生育期間が短く、G. sichuanenseの株は収量に関わる性質で優れていたと考察しています。

成分では、多糖類の含有量がHZ-PJ株で最も多く、乾燥重量1gあたり12.72mgでした。トリテルペン類はHZ-TS株で最も多く、1gあたり12.2mgと、ほかの株より有意に高い値でした。HZ-TS株はフラボノイド類も多く含んでいました。抗酸化能については、二つの試験法の両方で高い値を示した株が複数ありました。

重金属については、同じ条件で栽培したにもかかわらず、元素の蓄積量が菌株によって大きく異なりました。研究チームは、測定値を中国の食用きのこに関する食品安全基準と比較しました。その結果、大半の株は基準を満たしていましたが、22GL-6株など一部の株では鉛の値が基準をやや上回りました。

研究が示すこと

著者らは、HZ-PJ株とHZ-TS株を、目的に応じた商業栽培の有力な候補と位置づけています。HZ-PJ株は子実体の形成が早く、収量が多く、多糖類も多いという特徴を併せ持ちます。HZ-TS株はトリテルペン類とフラボノイド類が多く、実験室でも栽培培地でも安定して生育しました。あわせて著者らは、重金属の蓄積の差は環境だけでなく菌株にも左右されるとし、菌株選びが安全基準を守るうえで重要な手段になると述べています。

なお著者らは、実験が比較的管理された条件で行われたため、さまざまな野外環境や培地での性能はまだ確かめられていないこと、性質の違いを生む遺伝的なしくみは分かっていないことを限界として挙げています。いくつかのG. sessile株の分類については、さらなる検証が必要だとも記しています。

この研究は、正確な種の判別と、生育・収量・成分・重金属という複数の指標を組み合わせることで、根拠に基づいて栽培菌株を選ぶための枠組みを示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Rujia Liang(Changchun University)、Chaoan He(Changchun University)、Keling Liu(Changchun University)、Yuhao Zhang(Changchun University)、Shuyu Han(Changchun University)、Xiaofen Li(Changchun University)、Ye Fu(Changchun University)、Yuan Ren(Corn Research Institute, Changchun Academy of Agricultural Sciences, Changchun, Jilin Province, China.)、Odeshnee Naicker(University of Venda)、Chunlan Zhang(Changchun University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rujia Liang, Chaoan He, Keling Liu, et al. Phylogenetic analysis and screening of elite cultivated Ganoderma strains in China. PLoS ONE 2026-10-23. DOI: 10.1371/journal.pone.0360043. 原著ライセンス:CC BY.