著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:BMC Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

手術前の栄養状態に注目した理由

がん患者では栄養不良がよく起こり、なかでも大腸がんを含む消化器のがんで多いことが知られています。研究チームは、手術前に栄養状態が悪いと術後の合併症や入院期間の長期化などにつながる恐れがあり、手術自体も炎症や代謝の負担を通じて栄養状態を悪化させうることから、手術前の段階で栄養の問題を見つけることが重要だと述べています。

一方で、イランでは大腸がん患者の手術前の栄養状態だけに焦点を当てた研究はほとんどありませんでした。そこで著者らは、手術を控えた大腸がん患者の栄養状態を総合的に評価し、栄養面のリスクが高い人を見つけることを目的としました。

どのように調べたか

研究は、イラン・マシュハドの病院の外科で2023年10月から2025年1月にかけて行われました。腫瘍の切除手術のために入院した18歳以上の大腸がん患者105人(平均年齢57.5歳)が対象です。ある時点の状態をまとめて調べる「横断研究」と呼ばれる方法で、時間を追って経過を見たものではありません。

栄養状態の評価の中心には、PG-SGAという質問票が使われました。体重の減り方、食事の量、食事に影響する症状、日常の活動能力、診察所見などを点数化するもので、がん患者の栄養評価に推奨されている道具です。PG-SGAには、栄養状態を「良好(A)」「中等度または疑いのある栄養不良(B)」「重度の栄養不良(C)」に分ける方法と、合計点で対応の必要性を判断する方法の二つがあり、論文では合計9点以上を「栄養面で緊急の対応が必要なリスクが高い状態」として扱っています。著者らは、この二つは関連するものの別々の分類であり、互いに置き換えられないと説明しています。

このほか、身長・体重や腕の周囲長、体の組成(脂肪以外の組織量を身長で補正した「除脂肪量指数」など)、握力、直近3日間の食事内容、腹痛や食欲不振といった症状、血液検査も調べました。そのうえで、合計9点以上のリスクの高さとどんな要因が結びついているかを統計的に分析しました。

主な結果

論文によると、A・B・Cの分類では54.3%が中等度から重度の栄養不良(BまたはC)にあたり、そのうち重度(C)は21.9%でした。合計点による分類では40%が9点以上で、緊急の対応が必要な高リスクと判定されました。

筋肉に関しては、握力が弱い人が78.1%にのぼった一方、除脂肪量指数から筋肉量の減少と判断された人は26.7%でした。貧血は82.9%に見られました。よく見られた症状は腹痛、消化不良、腹部の張り、便秘、食欲不振などでした。食事の面では、エネルギーの摂取が必要量の8割に届かない人が約半数、たんぱく質が推奨量に届かない人は8割を超えていました。いくつかのビタミンやミネラルも摂取量が基準を下回っていましたが、著者らは、これは食事から見積もった摂取量の不足であり、血液検査で欠乏を確かめたものではないと断っています。

PG-SGAの点数が高い(栄養状態が悪い)ことと関連していたのは、65歳を超える年齢、経済状況の低さ、がんであることを本人が知らないこと、腫瘍の種類、貧血、血液中のアルブミン(栄養状態の目安となるたんぱく質)の低さ、エネルギーやたんぱく質の摂取不足でした。また、BMI、日常の活動能力、腕の周囲長、体内の水分量、除脂肪量指数が低いほど点数が高い傾向がありました。

複数の要因をまとめて分析すると、除脂肪量指数が高いほど、またアルブミンが高いほど、9点以上の高リスクに該当しにくいという関連が示されました。腺がん以外の種類の腫瘍も高リスクとの関連が見られましたが、該当者が5人と非常に少なく、推定は不確かだと著者らは述べています。分析に使った要因の数に対して該当者が多くないため、この解析は探索的なものと位置づけられています。

この研究が示すこと

この研究からは、大腸がんの手術を待つ患者のかなりの割合が、中等度以上の栄養不良や栄養面の高いリスクを抱えていたことが分かります。著者らは、BMIが標準範囲であっても栄養不良が否定されるわけではなく、体の組成や筋力なども含めて評価する意義があると論じています。

研究チームは、手術前の早い段階で栄養のスクリーニングを行ってリスクのある患者を見つけ、さらに総合的な栄養評価を通じて一人ひとりに合った対応につなげることが大切だと結論づけています。なお、今回示されたのは各要因と栄養状態との関連であり、原因と結果の関係を確かめたものではありません。

著者:Zohre Abdolahi(Department of Clinical Nutrition, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, PO Box 9177948564, Paradise Daneshghah, Azadi Square, Mashhad, Mashhad, Iran)、Abbas Abdollahi(Endoscopic and Minimally Invasive Surgery research center, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Maryam Emadzadeh(Clinical Research Development Unit, Ghaem Hospital, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Mohammad Moeini Nodeh(Devision of hematology, Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Nafiseh Alizadeh(Department of Clinical Nutrition, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, PO Box 9177948564, Paradise Daneshghah, Azadi Square, Mashhad, Mashhad, Iran)、Mahsa Chaji(Student Researcher Committee, Varastegan Institute of Medical Science, Mashhad, Iran)、Fatemeh Shahabi(Endoscopic and Minimally Invasive Surgery research center, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Sara Movahed(Department of Clinical Nutrition, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, PO Box 9177948564, Paradise Daneshghah, Azadi Square, Mashhad, Mashhad, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zohre Abdolahi, Abbas Abdollahi, Maryam Emadzadeh, et al. Comprehensive assessment of nutritional status in colorectal cancer patients before surgery: a cross-sectional study. BMC Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.1186/s40795-026-01507-w. 原著ライセンス:CC BY.