著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。
掲載誌:Polish Journal of Food and Nutrition Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられがちな茎をクッキーに生かせるか
ツボクサ(学名Centella asiatica)は、アジアや南アフリカで伝統的に薬草として使われてきたセリ科の植物です。いくつかの国では生野菜として食べられ、飲料にも加工されています。一方で茎は捨てられるか家畜の飼料にされることが多く、著者らによれば、食品の材料として使った例はこれまで報告されていませんでした。この茎には食物繊維や、フラボノイドを含むフェノール化合物(ポリフェノール類)が多く残っている可能性があります。
クッキーは日持ちがよく人気のある菓子ですが、糖分や脂肪が多く食物繊維が少ないため、栄養の偏りが指摘されてきました。そこで研究チームは、ツボクサの茎を乾燥させて粉にした「ツボクサ茎粉末」を作り、クッキーの小麦粉(薄力粉)の一部をこの粉末に置き換えられるかを調べました。あわせて、加工の副産物を活用して廃棄物を減らすことも狙いとしています。
どのように調べたか
研究チームは、ベトナムの畑で収穫したツボクサの茎を洗浄・乾燥して粉砕し、粉末にしました。まず、この粉末と薄力粉について、たんぱく質、でんぷん、食物繊維、ポリフェノール類、葉緑素(クロロフィル)の量や抗酸化力、水や油を抱え込む性質を比べました。
次に、粉全体に占めるツボクサ茎粉末の割合を0%、5%、10%、15%、20%(重量比)とした5種類のクッキーを焼きました。いずれのレシピも、砂糖の代わりに甘味料のイソマルトとアセスルファムカリウムを使っています。焼き上がったクッキーについて、栄養成分、大きさ・硬さ・色、60人の消費者による好ましさの評価を調べました。
さらに、試験管内で消化を再現する実験も行いました。でんぷんがどれだけ速くブドウ糖に分解されるかを測定し、そこからグリセミック指数(GI。食後の血糖値の上がりやすさを表す指標)を推定しました。また、口・胃・腸の順に消化を模擬し、腸の段階でクッキーからポリフェノール類やクロロフィルがどれだけ溶け出すかを測りました。これらはいずれも人が実際に食べて測定したものではなく、試験管内での推定値です。
主な結果
ツボクサ茎粉末は薄力粉に比べて、でんぷんがおよそ7分の1と少なく、総食物繊維は約12倍、ポリフェノール類の総量は約20倍、フラボノイドの総量は約21倍でした。また、薄力粉には含まれないクロロフィルを含んでいました。
この粉末を加えるほどクッキーの食物繊維とポリフェノール類、フラボノイド、クロロフィルは増えました。置き換え率20%では総食物繊維が約3倍になり、でんぷんは約36%、エネルギー量は約9%減りました。著者らは、国際的な食品規格(コーデックス)の表示基準に照らすと、5%置き換えのクッキーでも「食物繊維が多い」と表示できる水準に達すると述べています。抗酸化力も大きく高まりました。
試験管内で推定したGIは、粉末を加えないクッキーで56.8となり、「中程度」に分類されました。これに対し、5〜20%の粉末を加えたクッキーはすべて56未満の「低GI」に入りました。20%置き換えのクッキーでは、GIが粉末なしに比べて約10%低くなりました。著者らは、でんぷんの割合が下がったことが主な理由と考えています。
腸の段階を模擬した消化実験では、粉末入りクッキーから溶け出したポリフェノール類の総量が粉末なしの5.8〜7.7倍、フラボノイドの総量が4.7〜6.5倍に達しました。溶け出したクロロフィルも粉末の割合とともに増えました。ただし、消化前と比べるとクロロフィル量は少なくなっており、著者らは酸性の消化条件で分解されたためと考えています。
一方で、粉末が増えるほどクッキーは小さく薄くなり、硬さは20%置き換えで約1.4倍になりました。色も暗く緑がかりました。消費者による評価では、15%までなら「受け入れられる」範囲でした。ただし、よりはっきり好まれるには10%までにとどめるのが望ましいという結果でした。参加者の多くは、好ましさが下がった理由として、クッキーが小さくなったことと硬くなったことを挙げました。
研究が示すこと
この研究は、ふだん捨てられているツボクサの茎を粉にしてクッキーの小麦粉の一部と置き換えると、食物繊維やポリフェノール類が増え、試験管内で推定したGIが低い区分に入ることを示しました。食感や色の変化から、加える量には好ましさとの兼ね合いがあることも明らかになりました。著者らは、ツボクサの茎が焼き菓子の材料として有望であり、食品の副産物を無駄なく使う取り組みにもつながると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Dien Quang Long(Ho Chi Minh City University of Technology , Ho Chi Minh City University of Technology (HCMUT) , 268 Ly Thuong Kiet Street , Dien Hong Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam; Vietnam National University -Ho Chi Minh City (VNU-HCM) , Vo Truong Toan Street , Linh Xuan Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Huu Quoc Pham(Ho Chi Minh City University of Technology , Ho Chi Minh City University of Technology (HCMUT) , 268 Ly Thuong Kiet Street , Dien Hong Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam; Vietnam National University -Ho Chi Minh City (VNU-HCM) , Vo Truong Toan Street , Linh Xuan Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Quang Vinh Ha(Ho Chi Minh City University of Technology , Ho Chi Minh City University of Technology (HCMUT) , 268 Ly Thuong Kiet Street , Dien Hong Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam; Vietnam National University -Ho Chi Minh City (VNU-HCM) , Vo Truong Toan Street , Linh Xuan Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Nu Minh Nguyet Ton(Ho Chi Minh City University of Technology , Ho Chi Minh City University of Technology (HCMUT) , 268 Ly Thuong Kiet Street , Dien Hong Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam; Vietnam National University -Ho Chi Minh City (VNU-HCM) , Vo Truong Toan Street , Linh Xuan Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Thi Thu Tra Tran、Van Viet Man Le
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dien Quang Long, Huu Quoc Pham, Quang Vinh Ha, et al. Centella asiatica (L.) Urb. Stem-Enriched Cookies: Reducing Glycemic Index and Improving Phenolic and Chlorophyll Release in the Intestine. Polish Journal of Food and Nutrition Sciences 2026-10-20. DOI: 10.31883/pjfns/240547. 原著ライセンス:CC BY.