著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Antioxidants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:ほうれん草のビタミンEはどうすれば吸収されやすいか

ビタミンEにはいくつかの種類がありますが、人にとって必須とされるのはα-トコフェロールです。α-トコフェロールは細胞膜の脂質が酸化で連鎖的に傷むのを止める抗酸化物質として働きます。論文によると、米国では成人の大半が推奨摂取量の1日15mgに届いていません。

ほうれん草などの濃い緑の葉物野菜はα-トコフェロールを含む食品として知られています。ただし、体に取り込まれる割合(生物学的利用能)が低いとされています。この成分は植物細胞の膜の中に埋め込まれているうえ、葉物野菜には脂質がほとんど含まれていません。脂溶性ビタミンは、小腸で胆汁などの働きによって「ミセル」と呼ばれる微小な粒に取り込まれてから吸収されます。脂質が少ない食品ではこの過程が進みにくいと考えられてきました。

一方、脂肪を一緒にとるとα-トコフェロールの吸収が高まるかについては、これまでの研究で結果が一致していませんでした。また、多くの研究はサプリメントに使われる形のビタミンEを用いており、植物に含まれる天然の形とは異なります。そこで研究チームは、卵を一緒に食べるとほうれん草由来のα-トコフェロールの吸収が高まるかを調べました。あわせて、卵の量、脂質の種類、食べるタイミングがどう影響するかも検討しました。

どのように調べたか:重水素で「目印」をつけたほうれん草

研究チームは、重水素(水素の重い同位体)を含む水でほうれん草を水耕栽培しました。こうして、植物自身が作るα-トコフェロールに目印をつけました。この方法を「内因性標識」と呼びます。卵や油にもα-トコフェロールは含まれますが、血液中の成分のうちどれがほうれん草由来かを、この目印によって区別できます。

試験には健康な成人が参加し、同じ人がすべての条件を順番に試すクロスオーバー方式で行われました。各回の試験では、約100gの標識ほうれん草(標識α-トコフェロール5mg相当)を食べました。主な目的の試験には8人が参加し、条件は6つでした。ほうれん草のみ、ゆで卵1個・2個・3個と同時、卵白2個分と同時、そして卵2個と同じ脂肪量(9.6g)の大豆油と同時です。その後、追加の探索的な試験として5人が参加し、卵を3時間後に食べる条件と、卵1個を同時に食べてさらに3時間後にもう1個食べる条件を試しました。

食後72時間にわたって何度も採血し、血液中の標識α-トコフェロールの濃度の変化を測りました。研究チームは、濃度曲線の下の面積(体内に取り込まれた総量の目安)、最高濃度、摂取量に対して吸収された割合の推定値などを比べました。各試験の前には食事を統一し、試験の間には少なくとも1週間の間隔を置きました。

主な結果:決め手は量でも脂質の種類でもなく「同時に食べること」

ほうれん草だけを食べたとき、吸収された割合の推定値は約2.4%と低い値でした。卵を同時に食べると、血液中に現れる標識α-トコフェロールの総量、最高濃度、吸収割合がいずれも有意に高くなりました。しかし、卵を1個から2個、3個に増やしても、それ以上の上乗せは見られませんでした。体から消えていく速さ(半減期など)は条件間で変わらず、研究チームはこの差を吸収の増加によるものと解釈しています。

脂質の種類による違いも見られませんでした。リン脂質を多く含む卵と、中性脂肪が主体の大豆油で、結果に差はありませんでした。さらに、脂肪をほとんど含まない卵白と一緒に食べた場合も、卵や油の場合と差がありませんでした。

タイミングを調べた探索的な試験では、卵を3時間遅れて食べると、ほうれん草だけの場合と差がなくなりました。その値は、卵を同時に食べた場合より有意に低いものでした。卵を同時に1個食べ、3時間後に追加で1個食べても、同時に1個食べた場合を上回りませんでした。

著者らはこれらの結果を次のように解釈しています。一緒に食べた食品が胆汁の分泌などの消化の働きを促し、それによって吸収が高まった可能性がある。卵白でも同様だったことから、脂肪そのものの供給より消化の刺激が重要と考えられる。また、吸収が起こる時間帯は食後の限られた時間に集中しているとみられる。

研究が示すこと

この研究は、内因性標識を用いて、ほうれん草という食品そのものに含まれるα-トコフェロールの吸収を人で直接測定したものです。結果からは、ほうれん草のビタミンEは単独では吸収されにくいものの、他の食品と同時に食べると吸収が高まることが示されました。その際、脂肪の量や種類よりも、食べるタイミングが重要だったと著者らは報告しています。

ただし、タイミングに関する結果は少人数での探索的な検討です。また、試験は無作為化されていませんでした。さらに著者らは、今回の吸収割合の推定方法では、実際の吸収量が低めに見積もられている可能性にも触れています。これらの点を踏まえつつ、この研究は、野菜を多く食べるだけでなく「何と一緒に、いつ食べるか」がビタミンEの取り込みに関わりうることを示しています。

原著論文の著者・所属:Shahabeddin Rezaei(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Sisi Cao(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Min Zeng(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Maria L. Antonius(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Jillian T. Pierson(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Ariana H. Bond(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Allyson Q. McHenry(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Joshua J. Blakeslee(Department of Horticulture and Crop Science, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)、Richard S. Bruno(Human Nutrition Program, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shahabeddin Rezaei, Sisi Cao, Min Zeng, et al. Co-Ingestion Timing, Rather than Food Matrix or Dose, Determines α-Tocopherol Bioavailability from Intrinsically Labeled Spinach in Healthy Adults: A Crossover Pharmacokinetic Study. Antioxidants 2026-08-28. DOI: 10.3390/antiox15091076. 原著ライセンス:CC BY.