著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サルコペニアとは、年齢とともに骨格筋の量や筋力、身体機能が少しずつ全体的に低下していく状態です。論文によると、転倒や骨折、日常生活での自立の低下につながるおそれがあり、インドネシアでは高齢者の増加とともに対策の必要性が高まっています。

著者らは、筋肉の維持にかかわる栄養素として、たんぱく質とビタミンDに注目しました。高齢者では食欲の低下などによりたんぱく質の摂取が不足しやすく、皮膚でビタミンDをつくる力も弱まります。それにもかかわらず、こうした栄養について十分な知識や関心を持つ高齢者は多くないといいます。さらに、記憶力の低下や見え方の変化、デジタル機器の使いこなしの差が、健康情報を伝える上での壁になります。

そこで研究チームは、伝え方の異なる三つの教育媒体を用意しました。うちわの形をしたポスター、WhatsAppで送る動画、冊子です。これらが、たんぱく質とビタミンDに関する高齢女性の知識と、実際の摂取状況をどう変えるかを調べることを目的としました。

何をどのように調べたか

調査は2024年9月から10月に、西ジャワ州ブカシ県タンブン・スラタン郡で行われました。対象は、定期的な宗教の勉強会に参加する50歳以上の女性30人です。10人ずつ三つのグループに分け、それぞれにうちわ型ポスター、WhatsApp動画、冊子のいずれかを用いた7日間の教育を行いました。三つのグループはいずれも教育を受けており、何も受けないグループは設けていません。各グループについて、教育の前と後の変化を比べています。

知識は、たんぱく質に関する4問とビタミンDに関する6問からなる、計10問の質問票で測りました。論文では、食べ方の「態度」を実際の摂取状況で捉えています。具体的には、2日分の食事内容を聞き取って記録し、たんぱく質とビタミンDがどの程度足りているかを計算しました。たんぱく質は、インドネシアの栄養摂取基準に対する割合で示しています。

主な結果

知識は、三つの媒体すべてで教育の後に統計的に有意に高まりました。10点満点の平均点は、うちわ型ポスターのグループで5.2点から7.5点、WhatsApp動画のグループで6.1点から7.5点に上がりました。最も大きく伸びたのは冊子のグループで、5.0点から8.8点になりました。教育の後、冊子のグループでは知識が「良い」に分類される人が10人中7人に増えています。

一方、実際の摂取については媒体によって結果が分かれました。たんぱく質の充足度が有意に改善したのは、うちわ型ポスターのグループだけでした。このグループの平均値は、摂取基準の67.3%から106.1%に上がりました。WhatsApp動画と冊子のグループでは、有意な変化はみられませんでした。

ビタミンDの充足度は、うちわ型ポスターと冊子の二つのグループで有意に改善しました。WhatsApp動画のグループでは有意な変化は認められませんでした。

著者らは、この違いの背景について次のように考察しています。うちわは日常生活の中で繰り返し手に取られるため、印刷された絵や情報に何度も触れることになり、それが食品選びの変化を後押しした可能性があるといいます。動画については、デジタル機器への慣れの差や、情報が流れていく速さが、高齢者が内容を日々の食事に生かす妨げになった可能性を挙げています。

研究から見えてくること

この研究で示されたのは、知識が増えることと、毎日の食事が変わることは必ずしも同じではないという点です。冊子は理解を深めるうえで最も効果的でした。一方、たんぱく質とビタミンDの両方で摂取の改善がみられたのは、生活の中で使われるうちわ型ポスターでした。著者らは、高齢者への栄養教育では、デジタル媒体だけに頼るのではなく、身近で実用的な印刷媒体を組み合わせることが大切だと結論づけています。この結果は、1地域の30人を対象とした7日間の調査から得られたものです。

原著論文の著者・所属:Aura Putri Fadiah(Universitas Singaperbangsa Karawang)、Ratih Kurniasari(Universitas Singaperbangsa Karawang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aura Putri Fadiah, Ratih Kurniasari Pengaruh Media Edukasi terhadap Pengetahuan dan Sikap Lansia dalam Asupan Protein dan Vitamin D untuk Pencegahan Sarkopenia. Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi 2026-08-24. DOI: 10.57213/antigen.v4i3.1100. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。