この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Environment and Climate Change

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

イネの生産を長く支え、土の肥沃さを保つには、養分をバランスよく与えることが欠かせません。とくに酸性の赤色土・ラテライト質土壌では、養分が作物に利用されにくかったり、土にとどまりにくかったりすることがあります。イネの生育を促すために窒素はよく施用されますが、著者らによれば、その効果はリンとカリウムが十分に供給されているかどうかに左右されます。

論文が指摘するのは、窒素の量を一定にしたうえでリンやカリウムを減らしたり与えなかったりしたとき、短期的に収量・土壌肥沃度・経済性にどのような結果が生じるのかが、西ベンガル州パスチム・メディニプルの雨季作(カリフ)イネについては十分に明らかにされていない、という点です。そこで研究チームは、この地域の赤色・ラテライト質土壌の条件下で、窒素・リン酸・カリの組み合わせを変えたときのイネの生育、収量、収穫後の土壌の化学性、そして採算性を評価することを目的としました。

調べ方

研究チームは2025年の雨季作の期間に、パスチム・メディニプルにあるミドナプル・シティ・カレッジの農業試験圃場で野外試験を行いました。試験は乱塊法(ほ場のばらつきの影響を抑えるため、区画をまとめて配置し処理を割り付ける実験計画)で設計され、7つの処理区を3回繰り返して配置しています。

肥料を施したすべての処理区で窒素は1ヘクタールあたり80キログラムに固定し、リン酸(P₂O₅)とカリ(K₂O)については推奨量、減量、無施用のいずれかを組み合わせました。処理区は窒素:リン酸:カリの順に、T1が80:40:40、T2が80:40:20、T3が80:40:0、T4が80:20:40、T5が80:0:40、T6が80:20:20、そしてT7は肥料を与えない0:0:0(対照区)です。評価した項目は、生育、収量構成要素、収量に加え、収穫後の土壌のpH、電気伝導度(EC)、有機炭素、可給態の窒素・リン・カリウム、さらに経済的な収益でした。

報告された主な結果

著者らの報告では、生育や収量に関わる多くの項目でT1(80:40:40)が最も高い値を示しました。玄米(籾)収量はT1が1ヘクタールあたり5.06トンで最も高く、続いてT2が4.84トン、T4が4.73トンでした。一方、肥料を与えなかったT7は2.19トンで最も低い値でした。T1は対照区に比べて収量を131.1%増加させましたが、統計的にはT2およびT4と同等の水準であったと報告されています。リンまたはカリウムを与えなかった処理区では、全般に生育と収量が低下しました。

収穫後の土壌分析では、養分を与えた処理区のほうが、可給態の窒素・リン・カリウムと有機炭素が比較的高い値を示しました。経済面でもT1が最も良好で、粗収益は1ヘクタールあたり139,363ルピー、純収益は86,279ルピー、費用便益比(B:C比)は1.63でした。

この研究が示すこと

この試験の条件下では、窒素・リン・カリウムをバランスよく供給することが、イネの生産性だけでなく、収穫後の土壌の化学的な状態や経済的な収益の面でも良い結果につながった、と論文は述べています。同時に著者らは、より広い範囲への推奨につなげるには、複数の作期・複数の地点での評価が必要だとしています。

養分を減らしても収量が保てる場面があるのかどうかは、その土地の土壌の性質と切り離せません。今回の報告は、酸性の赤色・ラテライト質土壌という条件のもとで、窒素だけを確保してもリンとカリウムを欠けば生育と収量が落ちうることを、実際の圃場のデータとして示したものといえます。

著者:Barun Sahoo(Department of Agriculture, Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Krisanu Mondal(Department of Agriculture, Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Shrabanti Maity(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Anirban Bhowmik(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Tapan Das(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Soumyajyoti Das(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Sudip Bhattacharya(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)、Pratonu Bandyopadhyay(Department of Biological Science (Agriculture), Midnapore City College, Kuturiya, Paschim Medinipur, West Bengal, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Barun Sahoo, Krisanu Mondal, Shrabanti Maity, et al. Agronomic Performance and Soil Chemical Responses of Kharif Rice to Balanced and Reduced P and K Supply in the Red and Lateritic Soils of Paschim Medinipur, West Bengal, India. International Journal of Environment and Climate Change 2026-09-21. DOI: 10.9734/ijecc/2026/v16i105692. 原著ライセンス:CC BY.