著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Acta Scientiarum Polonorum Technologia Alimentaria
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
ジャスミン茶は、緑茶にジャスミンの花の香りを移して作る中国の代表的なお茶です。花の香りとすっきりした味わいが特徴ですが、緑茶由来のポリフェノール(特にカテキン類)やカフェインがいれる際に溶け出し、強い苦味や渋味の原因になることがあります。
中国・蘇州理工学院の研究チームは、家庭でもすぐに調整できる「いれ方」の条件に注目しました。湯の温度、浸出時間、茶葉と水の比率、使う水の種類が、ジャスミン茶の苦味・渋味とお茶に溶け出す成分にどう影響するかを調べ、苦味と渋味の少ないいれ方の条件を見つけることを目的としています。
何をどのように調べたか
材料には市販の一級ジャスミン茶を使いました。水は、水道水、ミネラルウォーターのエビアン、2種類の精製水(ワハハ、Cestbon)、ワトソンズの蒸留水の5種類です。論文の測定では、水道水とエビアンは水に溶けている物質の量が多い「硬水」寄り、精製水と蒸留水はその量がごく少ない「軟水」に分類されました。
いれたお茶は、訓練を受けた評価者が苦味と渋味の強さを9段階で採点しました。あわせて、お茶に溶け出したポリフェノールとカフェインの量を、中国の国家規格に基づく方法で測定しています。研究チームは、茶葉そのものの品質ではなく、いれ方による溶け出し方の違いを見るために、浸出液の成分に絞って分析しました。
まず条件を一つずつ変えて影響を確かめ、次に「応答曲面法」で複数の条件を同時に組み合わせて最適な組み合わせを探しました。応答曲面法は、いくつもの要因を組み合わせた実験の結果から全体の傾向を表す式を作り、最もよい条件を予測する統計的な手法です。評価の指標には、官能評価の苦味・渋味とポリフェノール量をまとめた総合スコアを使いました。スコアが高いほど、苦味とポリフェノール量の両方が低いことを意味します。
主な結果
条件を一つずつ変えた実験では、湯の温度が高いほど苦味と渋味が強く感じられ、試した温度の中では60℃が最も弱く、100℃が最も強くなりました。浸出時間は1分が最も弱く、5分が最も強いという結果でした。お茶に溶け出すポリフェノールも、温度が高いほど、時間が長いほど多くなりました。水に対する茶葉の割合が小さいほどポリフェノールは減りましたが、官能評価の苦味・渋味には比率による有意な差は見られませんでした。
水の種類はポリフェノールの溶け出し方に大きく影響しました。最も多かったのは蒸留水で茶葉1グラムあたり28.57ミリグラム、最も少なかったのは水道水で18.62ミリグラムでした。ミネラルを含む水道水とエビアンでは、精製水や蒸留水より有意に少なくなりました。研究チームは、カルシウムやマグネシウムなどの成分がポリフェノールと結びつき、溶け出しにくくしている可能性を挙げています。また、水道水とエビアンでいれたお茶は色が明らかに濃くなりました。
苦味の評価とポリフェノール量の間には強い正の相関(相関係数0.847)があり、試した条件の範囲では、ポリフェノールが苦味の主な要因であると著者らは述べています。一方、カフェイン量と苦味の評価の間には有意な相関は見られませんでした。
応答曲面法による分析では、総合スコアに最も大きく影響したのは水の種類で、水の種類と湯の温度の間には有意な相互作用、つまり組み合わせによって効果が変わる関係が認められました。モデルが予測した最適条件は、湯温55℃、浸出時間0.5分、茶葉1グラムに対して水70ミリリットル、エビアンを使用する組み合わせでした。この条件で3回確認実験を行ったところ、総合スコアの平均は90.74で、予測値の90.25とよく一致しました。
この研究が示すこと
この研究は、ジャスミン茶の苦味と渋味がお茶に溶け出したポリフェノールの量と強く関係し、その溶け出し方が温度や時間だけでなく使う水の種類にも左右されることを示しました。比較的低い温度で短時間、ミネラルを含む水でいれることが、苦味を抑える一つの手がかりになるという報告です。
ただし著者らは、今回の最適条件がほかの種類のお茶にも当てはまるかどうかは、さらに確かめる必要があるとしています。
原著論文の著者・所属:Yifan Liu(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)、Jingsheng Wang(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)、Xiao Chen(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)、Keqing Quan(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)、Wanqi Wang(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)、Yang Liu(College of Biology and Food Engineering , Suzhou University of Technology Nansanhuan Road , Changshu City , Jiangsu Province , China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yifan Liu, Jingsheng Wang, Xiao Chen, et al. Optimization of a low-bitterness brewing process for jasmine tea using response surface methodology [pdf]. Acta Scientiarum Polonorum Technologia Alimentaria 2026-11-03. DOI: 10.17306/j.afs.001521. 原著ライセンス:CC BY.