著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:ACS Omega

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ワインやジュースの製造でブドウを搾った後に残る皮や種などの搾りかすは副産物として生じますが、体内外で生理的な働きを持つとされる成分(生理活性成分)を多く含んでいます。研究チームは、この搾りかすから有用な成分を効率よく取り出す条件を見つけ、その抽出液を使って環境に配慮した「スマート」な素材を作ることを目指しました。ここでいうスマートな素材とは、周囲の状態に応じて色が変わるなど、状態を知らせる性質を持つ素材を指します。

なお、この紹介は論文の抄録に記載された内容に基づいています。

抽出条件の最適化と抽出液の特徴

著者らは、抽出時の温度(41〜69℃)と時間(0.8〜3.2時間)の二つの条件を組み合わせて変え、その影響を調べました。用いたのは中心複合回転計画と呼ばれる実験計画法で、限られた回数の実験から、複数の条件が結果にどう影響するかを効率よく見積もるための手法です。

こうして得られた最適化抽出液について、論文は高いフェノール類含量(没食子酸換算で1リットルあたり163.99ミリグラム)、アントシアニン含量(シアニジン-3-グルコシド換算で1リットルあたり136.46ミリグラム)、そして抗酸化活性(DPPH法で69.21%)を報告しています。フェノール類は植物に広く含まれる成分群で、アントシアニンはブドウの皮などの赤紫色のもととなる色素です。DPPH法は、試験用の不安定な分子(ラジカル)をどれだけ消去できるかで抗酸化の働きを測る方法です。

でんぷんフィルムとストローとしての試験

研究チームは、この抽出液を、ババスという植物の果実の中果皮から得たでんぷんで作るフィルムに加えました。完成したフィルムは、pHが2の強い酸性や13の強いアルカリ性という極端な条件で色が変わったと報告されています。アントシアニンを含む抽出液を加えたことで、状態の変化を色で示すフィルムになったということです。

また、抽出液を加えたフィルムは、加えていないでんぷんフィルム(比較対照)と比べて、水をはじきやすい性質、抗酸化活性、そして引っ張ったときに切れるまでどれだけ伸びるかを示す破断伸びが向上したとされています。さらに、このフィルムを無糖のコーラ用のストローとして試したところ、2時間にわたって形を保ったと報告されています。

研究が示すこと

著者らは、ブドウの搾りかすから取り出した成分を加えたでんぷんフィルムが、色の変化で状態を知らせる食品包装や、食べられるストローの素材として有望だと結論づけています。捨てられがちな副産物を、機能を持つ素材づくりに生かせる可能性を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Luis Fernando Zitei-Baptista(Faculty of Philosophy, Sciences and Letters of Ribeirão Preto , , , ,)、Maisa Mitiko Takahashi(Faculty of Philosophy, Sciences and Letters of Ribeirão Preto , , , ,)、Ivone Yanira Choquetico Iquiapaza(Faculty of Philosophy, Sciences and Letters of Ribeirão Preto , , , ,)、Delia Rita Tapia-Blácido(Faculty of Philosophy, Sciences and Letters of Ribeirão Preto , , , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luis Fernando Zitei-Baptista, Maisa Mitiko Takahashi, Ivone Yanira Choquetico Iquiapaza, et al. Optimizing Extraction of Bioactive Compounds from Grape Pomace to Produce an Eco-Friendly Smart Straw. ACS Omega 2026-10-15. DOI: 10.1021/acsomega.6c05389. 原著ライセンス:CC BY.