この研究は、アメリカ、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Current Research in Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

家畜の腸炎や肺炎、敗血症といった感染症を防ぎ、抑えるための手段として、抗生物質に代わるプロバイオティクスへの関心が高まっています。プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届いて健康に役立つと期待される微生物のことです。

ところが、商業的に流通しているプロバイオティクス菌株の多くはヒト由来です。著者らは、微生物には宿主特異性、つまりもともと住んでいた動物の種類に適応する性質があるため、ヒト由来の菌株を家畜に与えても定着効率や機能の発揮が限られる可能性があると指摘しています。そこで本研究では、健康な乳用子牛から分離したビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)12株を対象に、消化管でのストレス耐性と抗菌活性に注目して、プロバイオティクスとしての可能性を評価しました。

調べた内容と報告された結果

研究チームはまず、ゲノムの比較解析と系統解析を行いました。その結果、これらのウシ由来分離株は、これまでに報告されてきたヒト由来・動物由来・食品由来の菌株とは分かれた、独自の遺伝的な系統を形成していたと報告されています。著者らはこれを、宿主に応じた進化を反映するものと述べています。

次に、試験管内でのストレス耐性試験が行われました。人工胃液、低いpH、胆汁酸塩、リゾチーム(唾液や涙などに含まれる、細菌の細胞壁を分解する酵素)への曝露、高浸透圧という条件を試したところ、すべての分離株が高い生存率を保ったと報告されています。

さらに、腸に留まる能力に関わる性質も調べられました。細胞表面の疎水性、自己凝集能、ムチン(腸の粘液を構成する成分)への付着、バイオフィルム形成という指標に基づき、これらの株は定着・付着の能力が高かったとされています。抗菌活性試験と競合試験では、複数のB. longum株が、サルモネラ・エンテリカのTyphimuriumおよびDublinという血清型(同じ菌種の中で、表面の性質によって区別されるタイプ)の増殖を効果的に抑えたと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、宿主に由来するB. longum株が、消化管での生存性の高さと、主要な腸管病原体に対する強い拮抗作用をあわせ持つと結論づけています。そのうえで、腸の抵抗力を高めるための次世代プロバイオティクス候補として有望であると述べています。

プロバイオティクスを選ぶ際に「どの動物から分離された菌か」という視点が重要になりうることを、遺伝的な系統の違いと機能の両面から示した研究といえます。

著者:Bugil Choi(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Yuting Zhai(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Suyeun Noh(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Jonathan Crabill(Emerging Pathogens Institute, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Katherine Kim(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Miju Kim(Department of Food Science & Biotechnology, Kyung Hee University, Yongin 17104, Republic of Korea)、Sangnam Oh(Department of Functional Food and Biotechnology, Jeonju University, Jeonju 55069, Republic of Korea)、Younghoon Kim(Department of Agricultural Biotechnology and Research Institute of Agriculture and Life Science, Seoul National University, Seoul 08826, Republic of Korea)、Sam Churl Kim(Division of Applied Life Science (BK21Four, Institute of Agriculture & Life Science), Gyeongsang National University, Jinju 52828, Republic of Korea)、Min‐Jin Kwak(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)、Kwangcheol C. Jeong(Department of Animal Sciences, IFAS, University of Florida, Gainesville, FL 32611, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bugil Choi, Yuting Zhai, Suyeun Noh, et al. Host-associated Bifidobacterium longum exhibit gastrointestinal resilience and antagonistic activity against Salmonella serovars. Current Research in Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.crfs.2026.101580. 原著ライセンス:CC BY.