著者の所属・活動拠点の国は、モロッコ、エジプトです。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

農業利用の可能性を、培養と遺伝情報から調べる

研究チームは、テンサイの根の周りの土壌から分離したセレウス菌の一株「CBS-B5」を対象に、環境への適応力や代謝の特徴、植物の生育を支える可能性、安全性に関わる遺伝的特徴を調べました。セレウス菌の仲間には植物と関わって暮らすものがある一方、病原性を持つものもあるため、有用性と安全性の両面を捉えることが研究の目的です。

著者らは、培養による性質の確認に加え、ゲノム全体の配列解析、近縁菌との遺伝子の比較、培養中に作られる代謝物の分析を組み合わせました。遺伝子から予測される能力と、実験で観察できる性質を照らし合わせる方法です。

高い塩分への耐性と、熱を受けた後の回復

培養試験では、CBS-B5は塩化ナトリウム濃度10%までの培地で目に見える増殖を示しました。また、65℃までの熱にさらした後にも増殖の回復が確認されました。これは、試験条件下で高い塩分に耐え、熱ストレス後に生育を再開できたという結果であり、65℃で継続的に生育することを示したものではありません。

ゲノム解析では、浸透圧の変化や熱などへの対応に関わる遺伝子が見つかりました。また、鉄を取り込むための物質の合成に関わる遺伝子も一部確認されました。一方、植物が利用しにくいリン酸を溶かす代表的な経路の遺伝子は見つからず、植物の生育支援に関わる能力が一様にそろっているわけではないことも報告されています。

遺伝子の広がりにくさと、安全性は別の問題

著者らは、抗菌薬への耐性に関わる遺伝子の多くが、遺伝情報の移動に関わる要素から離れていることなどから、これらが別の細菌へ広がる可能性は相対的に低いと解釈しました。代謝物の分析でも、試験した培養条件では毒素に関連する化合物は確認されませんでした。

ただし、赤血球を壊すβ溶血活性が認められ、毒素に関わるnheABCやcytKなどの遺伝子も存在しました。論文は、これらを農業利用に向けた安全性上の重要な検討事項としています。また、植物の生育促進や根への定着は直接試験されていません。今回の研究が示したのは、CBS-B5の環境適応に関わる性質と利用につながり得る遺伝的な能力であり、植物への効果や安全性が確立したということではありません。

原著論文の著者・所属:Al-Sayed Al-Soudy(Chemical and Biochemical Sciences-Green Process Engineering, College of Chemical Sciences and Engineering, Mohammed VI Polytechnic University)、Wessam M. Rslan(Agricultural Genetic Engineering Research Institute, Agricultural Research Center)、Bouchra Soulaimani(Agrobiosciences Program, College of Agriculture and Environmental Sciences, University Mohammed VI Polytechnic)、Omar Hajjaji(Chemical and Biochemical Sciences-Green Process Engineering, College of Chemical Sciences and Engineering, Mohammed VI Polytechnic University)、Haytham M. Abd-Elhalim(Agricultural Genetic Engineering Research Institute, Agricultural Research Center)、Badr Eddine Drissi(Agrobiosciences Program, College of Agriculture and Environmental Sciences, University Mohammed VI Polytechnic)、Mansour Sobeh(Agrobiosciences Program, College of Agriculture and Environmental Sciences, University Mohammed VI Polytechnic)、Rachid Daoud(Chemical and Biochemical Sciences-Green Process Engineering, College of Chemical Sciences and Engineering, Mohammed VI Polytechnic University)、Rachid Benhida(Chemical and Biochemical Sciences-Green Process Engineering, College of Chemical Sciences and Engineering, Mohammed VI Polytechnic University; Institute of Chemistry, Nice UMR7272, Côte d'Azur University, French National Centre for Scientific Research (CNRS))、Morad M. Mokhtar(Chemical and Biochemical Sciences-Green Process Engineering, College of Chemical Sciences and Engineering, Mohammed VI Polytechnic University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Al-Sayed Al-Soudy, Wessam M. Rslan, Bouchra Soulaimani, et al. Multi-omics characterization of a rhizosphere-derived Bacillus cereus CBS-B5 strain reveals genomic stability, metabolic versatility, and biosafety-related genomic features for agricultural applications. Frontiers in Microbiology 2026-09-04. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1857756. 原著ライセンス:CC BY.