この研究は、サウジアラビアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:The North African Journal of Food and Nutrition Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

炭酸飲料、インスタント麺、スナック菓子、ナゲットなど、工業的に強く加工された「超加工食品」は手軽で安く、おいしいことから、世界的に食事の中で占める割合が高まっています。先行研究では、超加工食品を多く摂ることと心血管・代謝系の病気などとの関連が報告されており、人々がなぜこうした食品を選ぶのかを理解することが課題になっています。

この論文は、サウジアラビア北部にあるノーザン・ボーダー大学の学生を対象に、超加工食品を食べる行動に影響する心理的・社会的な要因を調べたものです。著者は、行動を説明する代表的な心理学の枠組みである「計画的行動理論」を使いました。この理論では、実際の行動の最も重要な手がかりは「その行動をしようという意図」であり、意図は三つの要素から形づくられると考えます。行動への好意的・否定的な評価(態度)、家族や友人など周囲からの期待や社会的な圧力(主観的規範)、そしてその行動を自分でどの程度コントロールできると感じているか(知覚された行動コントロール)です。著者はこの枠組みに「栄養に関する知識」を加え、知識の多さによってこれらの要因と行動の結びつきが変わるのかを検討しました。

どのように調べたか

研究は、ある一時点で回答を集める横断研究として行われ、サウジアラビア国籍の学生384人がオンライン質問票に回答しました。質問票では、年齢や性別、専攻などの基本情報に加え、超加工食品についての知識、計画的行動理論の各要素への考え方、そして代表的な超加工食品13品目をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねました。食べる頻度は「まったく食べない」から「毎日」までの6段階で答えてもらい、13品目の合計点(0〜65点)を超加工食品の摂取頻度の指標としました。

回答者は知識の得点によって、知識が低い群、中程度の群、高い群のほぼ同じ人数の三つに分けられました。そのうえで、各要素の間の関係をまとめて推定する構造方程式モデリングという統計手法を用い、全体と知識の群ごとに、何が意図や実際の摂取頻度と結びついているかを分析しました。

主な結果

超加工食品についての知識は、性別、婚姻状況、専攻と関連していました。知識が高い群には女性の割合が多く、健康関連の分野を専攻する学生も多く含まれていました。

知識が高い学生ほど、超加工食品が「安全だ」という評価は低い傾向にありました。一方で、ソーシャルメディアが超加工食品を勧めている、地域の集まりでは超加工食品を食べるのが普通だ、といった社会的な影響を強く感じている傾向もみられました。行動コントロールの感覚や、食べようとする意図の強さには、知識の群による有意な差はありませんでした。実際の摂取頻度は知識の群によって異なり、知識が低い群で最も高く(平均34.52点)、中程度の群(26.35点)と高い群(27.15点)では低い値でした。

構造方程式モデリングでは、回答者全体で、態度が意図を強く予測していました(標準化係数0.59)。また、超加工食品を食べるかどうかを自分でコントロールできると感じている学生ほど、摂取頻度が低いという関連がみられました(同マイナス0.22)。意図を説明するモデルの説明力は比較的高かった一方、実際の摂取頻度を説明するモデルの説明力はどの群でも小さいものでした。

特に知識が高い群では、意図も行動コントロールの感覚も実際の摂取頻度を有意に予測せず、モデルが説明できた摂取頻度のばらつきはわずか1%でした。著者はこれを、この群で「意図と行動の隔たり」が際立っていることを示す結果と位置づけています。

この研究が示すこと

この研究は、栄養知識が超加工食品に対する安全性の評価や社会的影響の受け止め方と関わる一方で、知識の多い学生では「食べようとする意図」と「実際に食べる頻度」の結びつきが弱く見えることを報告しています。著者は、知識の提供だけでは食行動を十分に変えられない可能性を指摘し、教育に加えて、習慣づくりや食環境の工夫を組み合わせた取り組みが必要だと結論づけています。

著者:Abeer Ahmad Bahathig(Northern Border University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abeer Ahmad Bahathig. The Moderating Role of Nutrition Knowledge in an Extended Theory of Planned Behavior Model of Ultra-Processed Food Consumption Among University Students in Saudi Arabia. The North African Journal of Food and Nutrition Research 2026-09-20. DOI: 10.51745/najfnr.10.22.86-98. 原著ライセンス:CC BY.