この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目指した研究か

パストラミは、塩漬けにした肉を洗浄・圧搾・乾燥し、チェメン(フェヌグリーク)を主体とした衣をまとわせてさらに乾燥させる、加熱処理を経ない伝統的な食肉製品です。著者らによれば、トルコでは牛肉からつくるのが一般的で、食文化上も重要な位置を占めています。一方で赤身肉の生産コストは高く、代替となる原料の探索が続いています。

この研究で著者らが取り組んだのは、七面鳥のむね肉を原料にしたパストラミ(以下、七面鳥パストラミ)の製造です。論文では、七面鳥むね肉はたんぱく質が多く結合組織が少ないこと、脂肪とコレステロールが鶏肉に比べて少ない傾向にあることが、原料としての利点として挙げられています。著者らは、牛の枝肉に代わる原料の選択肢を示すこと、そして七面鳥肉の消費を広げることを研究の狙いとしています。

どのように調べたか

著者らは、カイセリ市場で入手した七面鳥むね肉を伝統的な手順で加工し、およそ1か月の工程を経て七面鳥パストラミを製造しました。比較対象には、同じくカイセリ市場で購入した市販のアントリコット(リブロース)パストラミとスライスパストラミを用いています。

評価は四つの側面から行われました。水分・pH・食塩・灰分・水分活性・たんぱく質・脂肪・色といった理化学的性質、細菌や酵母・カビの数を数える微生物学的検査、機器で硬さや噛みごたえを測るテクスチャー(食感)分析、そして20名の訓練された評価員による官能評価です。ここでいう水分活性とは、食品中の水がどれだけ微生物に利用されやすい状態にあるかを示す指標で、低いほど微生物が増えにくくなります。さらに著者らは、これら多数の測定値をまとめて整理するために、主成分分析と階層的クラスター分析という多変量統計手法を用いました。前者は多くの指標を少数の軸に要約して試料間の違いを見やすくする方法、後者は似た性質をもつものどうしをグループにまとめる方法です。

報告された主な結果

理化学的性質では、3種類のパストラミの水分は45.25〜48.95%、pHは5.88〜5.96、食塩は7.43〜9.62%、灰分は8.09〜12.24%、水分活性は0.78〜0.85の範囲でした。著者らは、水分は規格上限の50%を下回り、pHもパストラミとして適切な範囲にあったと述べています。一方で食塩量については、市販品は規格に適合していたものの、製造した七面鳥パストラミは規格を外れる値であったと報告し、塩の注入による添加や洗浄時間の延長といった対応を挙げています。

たんぱく質は七面鳥パストラミが38.80%で3試料中もっとも高く、アントリコットが37.94%、スライスが34.62%でした。脂肪はスライスが2.03%と最も低く、七面鳥パストラミが4.40%、アントリコットが17.91%でした。色については、七面鳥パストラミは明るさを示すL*値が44.31と高く、赤みを示すa*値は7.48と低い値でした。著者らは、この赤みの弱さを七面鳥むね肉のミオグロビン(肉の赤い色素たんぱく質)濃度が牛肉より低いことによるものと説明しています。

微生物学的検査では、中温性好気性細菌数は七面鳥パストラミで3.48 log cfu/gと最も低く、市販のアントリコットが6.62 log cfu/g、スライスが6.40 log cfu/gでした。大腸菌群と腸内細菌科はアントリコットでのみ検出され、酵母・カビはスライスでのみ検出されています。著者らは、調べた試料はいずれもトルコ食品規格の食肉製品通達で定められた範囲内であったとしたうえで、管理された条件下で製造した七面鳥パストラミより市販品の微生物数が高かったことは、工程と衛生管理の標準化が最終製品の安全性に影響することを示唆する、と述べています。

食感については、噛みごたえ(チューイネス)の値が七面鳥パストラミで最も良好だったと報告されています。官能評価では、アントリコットが外観・色・香り・風味・総合的な受容性のいずれでも最も高い評価を受けました。七面鳥パストラミとスライスパストラミは総合的な受容性と風味で統計的に同程度で、七面鳥パストラミの色と外観の得点は市販品を下回りました。もろさ(脆性)の項目では3種類の間に統計的な差は認められなかったとされています。主成分分析と階層的クラスター分析の結果からは、七面鳥パストラミを特徴づける指標は主としてテクスチャープロファイル分析のパラメータであると結論づけられました。

この研究が伝えること

著者らの報告は、七面鳥むね肉が伝統的なパストラミの原料として扱えること、そして出来上がった製品がたんぱく質と食感の面で市販品に見劣りしない特徴をもつことを示しています。同時に、色の薄さや食塩量という課題も具体的な数値とともに明らかにされました。原料を変えたときに何が保たれ、何が変わるのかを複数の側面から並べて示した点に、この研究の意義があります。

著者:Mustafa Çavuş(Food Technology Program, Food Processing Department, Safiye Çıkrıkçıoğlu Vocational School, Kayseri University, Kayseri, Türkiye)、Hasan Cankurt(Food Engineering Department, Faculty of Chemistry and Metallurgy, Yıldız Technical University, Istanbul, Türkiye)、Tarık Ertürk(Culinary Arts Program, Hotel, Restaurant and Catering Services Department, Develi Hüseyin Şahin Vocational School, Kayseri University, Kayseri, Türkiye)、Kemal Durusu(Food Technology Program, Food Processing Department, Safiye Çıkrıkçıoğlu Vocational School, Kayseri University, Kayseri, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mustafa Çavuş, Hasan Cankurt, Tarık Ertürk, et al. Production of pastrami from turkey meat, and based on its physicochemical, microbiological, textural, and sensory characteristics using multivariate statistical analyses. Frontiers in Nutrition 2026-09-18. DOI: 10.3389/fnut.2026.1943445. 原著ライセンス:CC BY.