著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、アメリカです。

掲載誌:Performance Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

1日の量は足りていても、1食ごとではどうか

アスリートは筋肉の成長や回復のために、一般の人より多くのたんぱく質を必要とします。国際スポーツ栄養学会は、体重1kgあたり1日1.4〜2.0gを推奨しています。一方で、1日の合計量が足りていても、各食事に偏りなく配分されているか、筋肉づくりに必要なアミノ酸を十分に含む「質の高い」たんぱく質かどうかは別の問題です。

たんぱく質の質とは、体内で作れず食事からとる必要がある「必須アミノ酸」を、どれだけ過不足なく供給できるかを指します。動物性たんぱく質は必須アミノ酸のバランスがよく消化もされやすい傾向があります。植物性たんぱく質は特定のアミノ酸が少なかったり消化されにくかったりしますが、量を増やしたり、穀物と豆類のように組み合わせたりすることで補えるとされています。

従来の評価指標は食品を1つずつ評価するもので、実際の食事のように複数の食品を組み合わせて食べる場面や、食べる量を反映できませんでした。そこで研究チームは、1食単位でたんぱく質の量・消化のされやすさ・アミノ酸の構成・体重に応じた必要量をまとめて評価する指標「MPQS(食事たんぱく質品質スコア)」を用い、オランダのエリート選手と準エリート選手の朝食・昼食・夕食を評価しました。

503人の選手の食事記録を分析

この研究は、2012〜2015年に実施されたオランダのスポーツ栄養調査のデータを改めて分析したものです。国内選手権以上のレベルで競技し、週9時間以上練習する選手が、前日に食べたものを詳しく思い出して記録するオンライン調査に2〜3日分回答しました。最終的に503人(男性299人、女性204人)が分析対象となり、持久系、チーム系、筋力系の競技の選手が含まれていました。

MPQSは、1食あたり体重1kgにつき0.4gのたんぱく質をとることを想定した必須アミノ酸の必要量を基準に計算されます。最も不足している必須アミノ酸に注目して点数をつけ、100が「十分」、100未満は少なくとも1つの必須アミノ酸が不足、100を超えると余裕があることを意味します。研究チームはさらに、どの食品グループがスコアの高さと関連しているかを統計的に調べ、すべての食事と完全に植物性の食事とに分けて分析しました。

朝食と植物性中心の食事でスコアが低い傾向

選手たちの1日のたんぱく質摂取量は、男女とも体重1kgあたり約1.5gで、推奨範囲に入っていました。それにもかかわらず、1食ごとのMPQSは基準に届かないことが多くありました。中央値は朝食71、昼食93、夕食147で、MPQSが100未満だった割合は朝食71%、昼食54%、夕食31%でした。

肉や魚を含む食事ではスコアが高く、ベジタリアン向けの食事では低く、動物性食品を一切含まない完全植物性の食事では最も低い値(中央値は朝食25、昼食21、夕食21)となり、基準の100に達することはまれでした。

関連の分析では、食事全体のエネルギー摂取量が多いほどスコアが高い関係が最も強く見られました。肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品はスコアの高さと結びつき、朝食であることや植物性たんぱく質の割合が高いことはスコアの低さと結びついていました。完全植物性の食事に限ると、ナッツや種子類、パンに塗る塩味系のスプレッド、肉や乳製品の代替食品がスコアの高さと関連していました。また、いも類とナッツ類、穀物と豆類などの組み合わせの多くもスコアの高さと関連していた一方、ナッツ類とスプレッドの組み合わせなど、負の関連を示すものもありました。

「1日の合計」だけでは見えないこと

著者らは、1日のたんぱく質摂取量が推奨を満たしていても、各食事で必須アミノ酸が十分にとれているとは限らないことを示したとしています。特に朝食や植物性たんぱく質に頼る食事で不足が目立ち、たんぱく質の質は個々の食品よりも、食事全体の組み合わせによって左右されると論じています。

ただし、著者らはいくつかの限界も挙げています。食事内容は本人の記憶に基づく自己申告であり、筋たんぱく質の合成を直接測定したわけではありません。MPQS自体も、アスリートの体内の反応や長期的な適応との関係はまだ確認されていません。また、分析は関連を示すもので因果関係を示すものではなく、データは2012〜2015年当時の食品に基づいています。こうした前提のもとで、この研究は、食事を1日の合計量だけでなく「1食ごとの質」という視点から見直す意味を示しています。

原著論文の著者・所属:Alice Ricco(Amsterdam UMC, Amsterdam, The Netherlands; Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands)、Pol Grootswagers(Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands)、Marco Mensink(Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands)、Floris Wardenaar(College of Health Solutions, Arizona State University, Phoenix, AZ, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alice Ricco, Pol Grootswagers, Marco Mensink, et al. Meal Protein Quality Score (MPQS) assessment of protein adequacy across meals in Dutch elite and sub-elite athletes. Performance Nutrition 2026-10-16. DOI: 10.1186/s44410-026-00031-z. 原著ライセンス:CC BY.