この研究は、イギリス、オランダ、ベルギー、デンマークの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Journal of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品や飲み物に加えられる砂糖のとりすぎは、肥満や糖尿病、むし歯などとの関連が指摘されています。その対策として、砂糖の数百倍の甘さを持ち、カロリーがほとんどない「高甘味度甘味料(非栄養性甘味料)」で甘みを補う方法が提案されています。ステビア由来の成分(ステビオール配糖体)やアスパルテーム、スクラロースなどがその例です。

これまでに、甘味料そのものの環境負荷を調べた研究は複数あり、同じ甘さで比べると甘味料は砂糖より環境負荷が小さい傾向が示されてきました。必要な量がごくわずかで済むためです。食品に使った場合の評価についても、著者らは飲料とヨーグルトを対象にした研究を1件把握しています。しかし、食事全体で加えた砂糖を置き換えた場合の環境への影響を調べた研究は、著者らの知る限りありませんでした。SWEETプロジェクトの一環として行われた本研究は、この空白を埋める第一歩として、食事全体で加えた砂糖を甘味料などに置き換えたときの環境影響を試算し、あわせてこの種の研究を進めるうえでの課題を整理することを目的としています。

何をどのように調べたか

研究チームは、オランダ全国食品消費調査(2019〜2021年)のデータから、18〜50歳の成人のうち1日2200kcalを超えて摂取していた143人(男性72人、女性71人)の食事を分析対象としました。当初は肥満の人の食事を対象にする予定でしたが、摂取量の申告が少なめになる傾向が見られたため、エネルギー摂取量の多い人を選ぶ方法に切り替えています。

比較したのは二つの食事です。一つは実際に報告された食事で、加えられた砂糖を含む「砂糖食」です。もう一つは、その砂糖をすべてステビア由来の甘味料(レバウディオシドAを主成分とする混合物)と、砂糖の量やかさを補う増量材に置き換えた「甘味料食」です。甘味料は少量で強い甘みを出せますが、そのままでは砂糖が担っていた量や食感を補えません。そこで、固形の菓子類などには糖アルコールのソルビトール、液状の糖にはマルチトールを含むシロップ、飲み物には水、ヨーグルトには牛乳を組み合わせるといった置き換えのルールを定めました。

環境負荷は、原料の栽培から加工、輸送、包装、調理、廃棄までを通して評価する「ライフサイクルアセスメント」という方法で算出しました。対象としたのは、地球温暖化への影響(温室効果ガス排出量)、土地利用、陸域の酸性化、淡水と海洋の富栄養化、水の消費量の六つの項目です。

さらに、専用のソフトウェアを使い、もとの食事からの変化をできるだけ小さく抑えながら、栄養の推奨量を満たす食事、さらに2030年に向けた食料システムの温室効果ガス目標(1人1日あたり2.04kg二酸化炭素換算)も満たす食事へと組み替える計算も行いました。

主な結果

対象者の平均エネルギー摂取量は1日2866kcalで、加えられた砂糖は推定で1日54.1g、総エネルギーの約8%でした。これをすべて置き換えた甘味料食では、エネルギー摂取量が1日2728kcalと約5%減り、糖類(単糖類と二糖類)の摂取量は1日125gから71gに減りました。

一方、食事全体の環境負荷はほとんど変わりませんでした。温室効果ガス排出量はどちらも1日4.18kg二酸化炭素換算で変化がなく、土地利用も同じでした。酸性化と淡水の富栄養化は約1%、海洋の富栄養化は約3%減った一方、水の消費量は約11%増えました。

食品群ごとに見ると、変化の向きは分かれていました。アルコールを含まない飲み物などでは甘味料と水の組み合わせが砂糖より排出量が少なく、温室効果ガスが減りました。反対に、ケーキや甘いビスケット、砂糖菓子では、甘味料とソルビトールの組み合わせが砂糖より排出量が多く、増加しました。著者らは、飲み物での削減分が固形食品での増加分によって相殺された結果、全体としてほぼ変化がなかったと説明しています。

栄養の推奨量に合わせて食事を組み替える計算では、どちらの食事も温室効果ガス排出量が13〜14%減り、1日約3.65kgになりました。ただし豆類が増えたことなどから、水の消費量は3〜9%増えました。2030年の気候目標も条件に加えると、肉の摂取が減ったことなどにより、すべての項目で削減がより大きくなり、水の消費量も砂糖食で11%、甘味料食で15%減りました。

組み替えに必要な食事の変化の大きさは、砂糖食と甘味料食でほぼ同じでした。研究チームは、栄養基準や温室効果ガス目標を満たすために必要な努力は、出発点の食事がどちらであっても変わらないと報告しています。

この研究が示すこと

著者らは、加えた砂糖をすべて置き換えるのは現実的ではなく、本研究はあくまで理論上の試算であり、起こりうる変化の最大幅を示すものだと位置づけています。また、砂糖をすべてテンサイ由来と仮定したこと、加えた砂糖の量を過小評価した可能性があること、置き換えのルールを単純化したことなど、多くの前提が結果に影響しうることも認めています。

そのうえで本研究は、甘味料に置き換えるだけでは食事全体の環境負荷は必ずしも下がらず、何を増量材として使うかが結果を左右することを示しました。飲み物のように負荷が減る食品と、菓子類のように増えうる食品があることも明らかになりました。著者らは、固形食品ではソルビトールが常に最適とは限らず、より負荷の小さい代替材料を用いた丁寧な配合の見直しによって、環境負荷を減らせる可能性があると述べています。

著者:James R. Suckling(Centre for Environment and Sustainability, University of Surrey, Guildford, UK)、Alessandra C. Grasso(Mérieux NutriSciences | Blonk, Rotterdam, The Netherlands)、E. Koukouna(Mérieux NutriSciences | Blonk, Rotterdam, The Netherlands)、J. M. Groen(Mérieux NutriSciences | Blonk, Rotterdam, The Netherlands)、Marcelo Tyszler(Mérieux NutriSciences | Blonk, Rotterdam, The Netherlands)、Stephen Morse(Centre for Environment and Sustainability, University of Surrey, Guildford, UK)、M. Raats(Institute for Sustainability, University of Surrey, Guildford, UK)、SIAN B. ASTLEY(EuroFIR AISBL, Brussels, Belgium)、Jason C. G. Halford(Department of Psychology, University of Liverpool, Liverpool, UK)、Joanne Allison Harrold(Department of Psychology, University of Liverpool, Liverpool, UK)、Anne Raben(Department of Nutrition, Exercise and Sports, Clinical Research, University of Copenhagen, Copenhagen University Hospital – Steno Diabetes Center Copenhagen, Copenhagen, Herlev, Denmark)、J. Scholten(Mérieux NutriSciences | Blonk, Rotterdam, The Netherlands)、Corey E. Scott(Cargill, B.V, Amsterdam, The Netherlands)、Richard Murphy(Centre for Environment and Sustainability, University of Surrey, Guildford, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):James R. Suckling, Alessandra C. Grasso, E. Koukouna, et al. Environmental impact ramifications of replacing added sugar with non-nutritive sweeteners in a high-calorie Dutch diet: the SWEET project. European Journal of Nutrition 2026-10-07. DOI: 10.1007/s00394-026-04127-z. 原著ライセンス:CC BY.