著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。
掲載誌:British Journal Of Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
オランダの食生活は肉や乳製品などの動物性食品が多く、生活習慣病の一因になるとともに、温室効果ガスの排出や水資源の利用を通じて環境にも負荷をかけていると、研究チームは指摘しています。オランダ保健評議会は、たんぱく質の摂取源を、現在推定される動物性60対植物性40から、2030年までに少なくとも50対50へ、最終的には40対60へ移すよう勧めています。
一方で、育った時代の社会や文化の違いによって、食習慣は世代ごとに異なる可能性があります。しかしオランダでは、幅広い年齢層をまとめて比べた研究が中心で、「世代」という区分で食事の質と環境負荷を細かく比べた研究は限られていました。そこで研究チームは、ジェネレーションX、ベビーブーマー、サイレント世代の3世代で、食事の健康さと環境への影響、そしてその違いを生む食品群を比較しました。
何をどのように調べたか
分析には、オランダのドゥーティンヘム市で1987〜1991年に始まった長期の住民追跡調査「ドゥーティンヘム・コホート研究」のうち、2018〜2023年に実施された調査回のデータが使われました。対象は成人2348人で、ある一時点の状態を世代間で比べる横断的な分析です。参加者は生まれ年によって、サイレント世代(1930〜1945年生まれ)、ベビーブーマー(1946〜1964年生まれ)、ジェネレーションX(1965〜1975年生まれ)に分けられました。
食事内容は、過去1年間にどの食品をどのくらいの頻度と量で食べたかを尋ねる食物摂取頻度質問票で把握されました。食事の質は二つの物差しで評価されています。一つは、オランダの2015年版食事指針にどれだけ沿っているかを点数化した「DHD15指数」で、今回は質問票で評価できなかったコーヒーと塩を除く13項目、0〜130点で計算され、点数が高いほど指針に沿っていることを示します。もう一つは、たんぱく質のうち動物性食品と植物性食品から得た割合の比です。
環境への影響は、食品が生産・加工・包装・販売・調理・廃棄されるまでの負荷を見積もる「ライフサイクル評価」のデータを各食品に結び付けて算出されました。指標は、温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)と「ブルーウォーター消費量」です。ブルーウォーターとは、川や湖、地下水から取られ、蒸発したり製品に取り込まれたりして元の水域に戻らない水を指します。分析は男女別に行われ、学歴、喫煙、身体活動などの影響を統計的に調整しました。食べる量そのものの違いを考慮するため、1000キロカロリーあたりの値でも比較しています。
主な結果
全体として、世代間の違いは大きくはないものの、いくつかの傾向が報告されました。女性では、調整後のDHD15指数の平均がジェネレーションXで約81点、ベビーブーマーとサイレント世代で約83〜84点と、上の世代ほどやや高い傾向が見られましたが、統計的には有意とまでは言えない境界的な結果でした。男性では、ジェネレーションXがたんぱく質のうち植物性食品から得る割合が最も高く(約38%)、サイレント世代(約34%)より高い傾向が統計的に確認されました。女性では、この割合に世代差は見られませんでした。
1日あたりの温室効果ガス排出量の絶対値は、上の世代ほど低く、サイレント世代はジェネレーションXと比べて男性で18%、女性で11%低いと報告されています。ただし男性では、1000キロカロリーあたりで比べるとこの差はほぼ消えました。研究チームは、上の世代ほど食べるエネルギー量が少ないことが、排出量の絶対値の低さを一部説明していると解釈しています。女性では、1000キロカロリーあたりでもサイレント世代の排出量がやや低い傾向が残りました。ブルーウォーター消費量も、男性では絶対値が上の世代ほど低かった一方、エネルギー量で揃えると差は弱まりました。
食品群別に見ると、違いの中身が浮かび上がります。ジェネレーションXでは、牛肉や鶏肉などの一部の肉類、フライドポテトやスナック菓子、清涼飲料水といった加工食品・飲料、米による環境負荷が大きく、男性ではナッツ類による負荷も大きい傾向がありました。これに対して上の世代では、乳製品、チーズ、紅茶、果物による負荷が相対的に大きくなっていました。たとえば女性の果物摂取量は、ジェネレーションXの1日約156グラムに対し、サイレント世代では約201グラムでした。
研究から見えてきたこと
この研究は、同じ地域に暮らす成人でも、世代によって食事の健康さや環境負荷、そしてその内訳となる食品の選び方に、控えめながら違いがあることを示しました。若い世代では植物性たんぱく質の割合が高い面がある一方で肉や加工食品による負荷が大きく、上の世代では乳製品や果物の比重が大きいというように、改善の余地がある点は世代ごとに異なります。著者らは、こうした違いを踏まえ、世代に合わせた食事の働きかけが、より健康的で持続可能な食生活を後押しする可能性があると述べています。
原著論文の著者・所属:Elma de Wolf(Wageningen University & Research)、Annemien Haveman-Nies(Wageningen University & Research)、Reina E. Vellinga(National Institute for Public Health and the Environment)、H. Susan J. Picavet(National Institute for Public Health and the Environment)、W.M. Monique Verschuren(National Institute for Public Health and the Environment; University Medical Centre Utrecht)、Sander Biesbroek(Wageningen University & Research)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Elma de Wolf, Annemien Haveman-Nies, Reina E. Vellinga, et al. Generational differences in healthy and sustainable eating: the Doetinchem Cohort Study. British Journal Of Nutrition 2026-10-22. DOI: 10.1017/s0007114526109295. 原著ライセンス:CC BY.