著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、モザンビークです。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:安価な副産物を放牧羊の飼料に使えるか
羊を牧草地で育てる放牧は、畜舎で飼う方式に比べて施設や設備、人手、飼料にかかる費用を抑えられます。放牧中の子羊には、穀物などを中心とした「補助飼料(サプリメント)」を与えることがあります。著者らによると、補助飼料は体重の増加を早め、出荷までの期間を短くし、肉の質を高めることもあります。
反すう動物(牛や羊など、胃で草を発酵させて消化する動物)の補助飼料には、従来トウモロコシや大豆かすが主に使われてきました。しかし国際価格が年ごとに変動するため、代わりになる飼料や副産物が探されています。その候補の一つが、アブラヤシの実の核(種子)から油を搾った後に残る「パーム核かす」です。繊維が多く、油分も残っており、パーム油の加工地域では安く手に入ります。
これまでパーム核かすの研究は、主に畜舎で飼う小型反すう動物を対象としており、放牧条件でのデータは限られていました。研究チームは、牧草地で育つ子羊の補助飼料にパーム核かすを加えても、成長・健康・肉質を満足できる水準に保てるのではないかと考え、その影響を調べました。
何を調べたか:配合量を4段階に変えて120日間飼育
研究チームは、生後およそ150日、平均体重約25キロの去勢していないサンタイネス種の雄の子羊40頭を、4つのグループに無作為に分けました。各グループの補助飼料には、乾燥重量1キロあたり0グラム、150グラム、300グラム、450グラムのパーム核かすを配合しました。補助飼料は1日平均150グラムの体重増加を目標に設計されています。
子羊は毎朝、体重に応じた量の補助飼料を個別に与えられた後、日中はマサイグラスという牧草の放牧地で過ごしました。15日間の慣らし期間の後、120日間の試験を行っています。
調べた項目は多岐にわたります。食べた量と消化率、日中の行動(草を食べる時間や反すうする時間)、体重の増え方、体に取り込んで残した窒素の量(たんぱく質の利用の目安)、血液中のたんぱく質や肝臓の状態を示す酵素、そして試験後に食肉処理した枝肉の重さや、背中の筋肉(ロース部分)の脂肪交雑、成分、pH、解凍時の水分の減り、色などです。
主な結果:食べる量と増体は減ったが、血液の指標は安定し、肉の赤みが増した
パーム核かすの配合が増えるほど、子羊が食べた補助飼料や全体の飼料の量は直線的に減り、それに伴ってたんぱく質や繊維などの摂取量も減りました。一方、飼料の消化率はほとんどの成分でグループ間に差がなく、脂肪分の消化率だけは配合に伴って高まりました。著者らは、パーム核かすが小型反すう動物に好まれにくいとする過去の報告や、実際に食べ残しが見られたことを、摂取量が減った背景として挙げています。また、反すうの時間も配合が増えるほど短くなりました。
体重の増え方は、配合量に対して一直線ではなく曲線的に変化しました。回帰式による試算では、1日あたりの増体が最も低くなるのは配合量が1キロあたり268グラム付近で、その値は約80グラムでした。最終体重も配合量291グラム付近で最も低く、約31.2キロと見積もられました。
窒素の摂取量や、ふんや尿への排出量は配合とともに減りましたが、摂取した窒素のうち体に残った割合や、胃の中の微生物が作るたんぱく質の量には差がありませんでした。血液中の総たんぱく質とグロブリンは配合とともに減ったものの、著者らによれば羊の正常範囲内にとどまりました。アルブミンや尿素、肝臓の状態を示す酵素には変化がなく、研究チームはパーム核かすが肝臓の障害を引き起こした兆候はないと述べています。
肉については、枝肉の重さや歩留まり、肉の成分、pH、解凍時の水分の減り方はグループ間で同程度でした。その中で、肉の赤みを示す色の値は配合に伴って高まり、試算では配合量422グラム付近で最大になりました。明るさや黄色みは変わっていません。著者らは、パーム核かすに含まれる抗酸化作用をもつフェノール化合物が赤みに関わっている可能性を考察していますが、これは推測として示されたものです。
研究が示すこと
著者らは、放牧中の子羊の補助飼料にパーム核かすを1キロあたり450グラムまで配合すると、食べる量と成長が落ちる可能性があるものの、血液の指標には影響せず、肉の赤みを強めると結論づけています。赤みは消費者にとって魅力となりうる点だとしています。
そのうえで研究チームは、パーム核かすは成長を最大化する目的よりも、牧草が乏しくなる乾期などに放牧中の家畜を維持するための飼料として役立つ可能性があると述べています。安価な副産物を放牧羊に使う際に、何が得られ、何を犠牲にしうるかを具体的に示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Bruna Yasnaia de Souza Oliveira(School of Veterinary Medicine and Animal Science, Universidade Federal da Bahia, Salvador 40170-110, Brazil)、Kennyson Alves de Souza(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Lopes César Mugabe(Faculty of Agronomic and Forestry Engineering, Universidade Zambeze, Mocuba 2403, Mozambique)、Fabiana Lana de Araújo(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Rosani Matoso Silva(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Mailin Vasconcelos dos Santos Lima(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Emmanuel Emydio Gomes Pinheiro(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Daniele Rebouças Santana Loures(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)、Adriana Regina Bagaldo(Center for Agricultural, Environmental and Biological Sciences, Universidade Federal do Recôncavo da Bahia, Cruz das Almas 44380-000, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bruna Yasnaia de Souza Oliveira, Kennyson Alves de Souza, Lopes César Mugabe, et al. Inclusion of Palm Kernel Cake in Supplements for Grazing Lambs on Growth Performance, Digestibility, Nitrogen Balance, Blood Metabolites and Meat Quality. Animals 2026-10-20. DOI: 10.3390/ani16203306. 原著ライセンス:CC BY.