著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。

掲載誌:Inflammatory Bowel Diseases

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性的な炎症が起こる病気の総称です。症状が強まる「活動期」と、落ち着いた「寛解期」を繰り返すことがあります。研究チームによると、IBDの患者では栄養不良がよく見られ、経過の悪さや生活の質の低下と関連しています。

栄養状態の評価には、身長と体重から求める体格指数(BMI)がよく使われます。しかしBMIでは、体の中身が筋肉なのか脂肪なのかといった体組成までは分かりません。また、IBD患者の栄養状態やエネルギー必要量についてのデータは限られていると著者らは述べています。

そこで研究チームは、活動期のIBDで入院している患者、活動期で外来通院している患者、寛解期の患者を対象に、栄養状態とエネルギー必要量を調べました。あわせて、食事からとるエネルギーやたんぱく質の量との関係も検討しました。

何をどのように調べたか

研究は一つの医療機関で行われ、患者を前向きに追跡する形をとりました。栄養状態の指標には「除脂肪量指数(FFMI)」を使いました。これは、体重から脂肪を除いた筋肉や骨などの量(キログラム)を、身長(メートル)の2乗で割った値で、単位はkg/m²です。体に微弱な電流を流して体組成を推定する生体電気インピーダンス・ベクトル解析(BIVA)という方法で求めました。

エネルギー必要量は、呼吸で取り込む酸素と吐き出す二酸化炭素を測ってエネルギー消費量を推定する「間接熱量測定」で調べました。たんぱく質の必要量と、実際の食事からのエネルギー摂取量やたんぱく質摂取量も評価しています。

活動期の患者は、調査開始時と12週後の2回評価し、その変化を追いました。さらに、その結果を寛解期の患者と比べました。

主な結果

寛解に至った後、入院していた患者(14人)ではFFMIが1.1 kg/m²増えました。外来の患者(12人)の増加は0.4 kg/m²で、入院患者の増加のほうが統計的に有意に大きかったと報告されています。

一方、BMIの変化には両グループで有意な差はありませんでした。安静時のエネルギー消費量の減少幅にも有意な差は見られませんでした。

また、寛解後の入院患者と外来患者では、エネルギーの摂取と消費の差し引きであるカロリーバランスが、もともと寛解期にあった患者(11人)と同程度になっていたといいます。

この研究が示すこと

著者らは、活動期に入院していた患者のほうが、寛解後に外来患者よりもBIVAで評価した栄養状態の大きな改善を示したと結論づけています。BMIの変化が同程度で、エネルギー消費も安定していた中での結果です。BMIだけでは見えにくい体組成の変化を、BIVAで求めたFFMIによってとらえられる可能性があり、IBD患者の栄養評価に役立つかもしれないと述べています。

ただし、対象者は少なく、探索的な研究です。そのため著者ら自身も、今回の結果は確定的なものではなく、仮説を生み出すものとして受け止めるべきだとしています。

原著論文の著者・所属:Tessa C Oude Vrielink(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,)、Peter B F Mensink(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,)、Inge Oude Meijers(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,)、Marita Klein Jäger(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,)、Job van der Palen(Department of Epidemiology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,; Section Cognition, Data and Education, Faculty of Behavioural, Management and Social Sciences, University of Twente , Enschede,)、Henri Braat(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,)、Wouter Tobias van Haaften(Department of Gastroenterology and Hepatology, Medisch Spectrum Twente , Enschede,; Department of Gastroenterology and Hepatology, University Medical Center Groningen, University of Groningen , Groningen,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tessa C Oude Vrielink, Peter B F Mensink, Inge Oude Meijers, et al. Comparative assessment of nutritional status and energy expenditure in relation to dietary intake in hospitalized and outpatient patients with inflammatory bowel disease across disease phases. Inflammatory Bowel Diseases 2026-08-04. DOI: 10.1093/ibd/izag171. 原著ライセンス:CC BY.