掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームによると、中東・北アフリカ地域では経済の変化や欧米型の食文化の広がりによって、10代の食生活が大きく変わりつつあります。イラクでは長年の紛争や経済的な困難も重なり、やせすぎ(低栄養)と過体重・肥満の両方が若者の間で問題になっていると論文は述べています。

一方で、これまでのイラクの研究は戦争や貧困に伴う栄養不良に焦点を当てたものが多く、比較的安定した都市部でファストフードや加工食品が広がっている状況はあまり調べられてこなかったといいます。そこで著者らは、イラク中部の都市カルバラで、高校にあたる中等準備学校の生徒の食習慣と栄養状態を明らかにし、生活習慣との関係を調べることを目指しました。

どのように調べたか

調査は2025年4月8日から5月30日にかけて、カルバラ市中心部の公立校4校(男子校2校、女子校2校)で行われました。ある一時点の状況を切り取って調べる「横断研究」と呼ばれる方法です。600人に質問票を配り、16〜19歳の493人(男子53.8%、女子46.2%)の回答が分析の対象となりました。

質問票は国連食糧農業機関(FAO)の手引きをもとに、イラクの若者の食文化に合わせて作られたもので、食品ごとの食べる頻度、食事の回数や朝食の有無、水分摂取、運動、スクリーン(画面)を見る時間、健康的な食事を妨げる要因などを尋ねました。身長と体重は研究者が世界保健機関(WHO)の手順に沿って測定しました。

体格の評価には「年齢・性別ごとのBMI」を用いています。BMIは体重と身長から計算する体格の指標ですが、成長期の若者では年齢や性別によって標準的な値が異なるため、WHOの成長基準と照らし合わせて、やせ、標準、過体重、肥満の4区分に分類しました。

主な結果

体格の分類では、やせが20.3%、標準が65.1%、過体重が7.7%、肥満が6.9%でした。平均BMIは男子が22.5、女子が20.9と男子の方が高く、やせは女子に多く(女子24.1%、男子17.0%)、肥満は男子に多い(男子10.6%、女子2.6%)という違いが報告されています。

食品の摂取頻度では、白いパン、スナック菓子、カフェイン入り飲料をよく口にする生徒がそれぞれ7割を超えていました。対照的に、全粒粉パンや全粒穀物を頻繁に食べる生徒は2割に満たず、魚を週4回以上食べると答えた生徒はおらず、魚をまったく食べないという生徒が47.7%に上りました。飲み物では紅茶が最もよく飲まれていました。

食事の取り方にも課題が見られました。朝食を「ほとんど、またはまったく食べない」生徒が31.2%おり、食事を抜くことも珍しくありませんでした。水分摂取では男女差がはっきりしており、「のどが渇いたときだけ飲む」と答えた割合は女子で35.1%と、男子の19.2%を大きく上回りました。著者らはこれを女子の水分補給習慣が不十分であることを示すものとしています。

生活習慣と体格の関係では、運動不足との関連が最も目立ちました。1日30分以上の運動をする日が週に1日もない生徒の割合は、やせや標準の群では約3割だったのに対し、過体重の群では65.8%、肥満の群では76.5%に達しました。スクリーンを見る時間の長さや外食の頻度も体格と統計的に関連していましたが、朝食の頻度や食事の回数などは関連が認められませんでした。なお、この研究は一時点の調査であり、示されたのは関連であって、どちらが原因かまでを示すものではありません。

健康的な食事を妨げる要因としては「時間がない」と「味の好み」がそれぞれ27.4%で最も多く挙げられ、時間がないという回答は学年が上がるほど増えていました。健康的な食事を後押しするものとしては、家族の支えが44.2%で最も多く挙げられました。

研究が示すこと

この研究は、比較的安定したイラクの都市部でも、高校生の間で精製された主食や間食、カフェイン飲料に偏った食事、朝食抜き、運動不足といった傾向が広がっていること、そしてやせと肥満が同じ集団の中に併存していることを具体的な数字で示しました。著者らは、こうした結果を踏まえ、地域の文化に合った学校での栄養教育と、それを支える政策が必要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Hibba Essa Umran1*, Prof. Dr. Ali Abdulridha Abutiheen2, Dr. Manal Ali Hasan3

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hibba Essa Umran1*, Prof. Dr. Ali Abdulridha Abutiheen2, Dr. Manal Ali Hasan3. ASSESSING DIETARY HABITS AMONG PREPARATORY SCHOOL STUDENTS IN KARBALA CITY / 2025. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-08-01. DOI: 10.5281/zenodo.21713723. 原著ライセンス:CC BY.