著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:The Open Agriculture Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

将来の環境を見据えて作物を選ぶ

研究チームは、土壌の状態と今後の気象条件を踏まえ、種をまく前の作物選びを支援する仕組み「AgriSphere」を提案しました。現在の環境だけでなく、その変化の予測も作物の推薦に取り入れることが研究の目的です。

仕組みの土台となるのは、センサーをインターネットにつなぐIoT技術です。研究チームは、土壌中の窒素・リン・カリウム、酸性・アルカリ性の程度を示すpH、気温、湿度を測り、クラウド上に保存する試作システムを構築しました。これらの情報と降雨データを組み合わせ、AIによる予測や作物の推薦に利用する設計です。

22種類の作物を対象に予測手法を比較

モデルの学習と評価には、公開されている2,200件の作物推薦データを使いました。対象はイネやトウモロコシ、バナナなど22種類で、各作物に100件のデータがあります。入力は土壌の主要な養分、気温、湿度、pH、降雨量の7項目です。研究チームはデータの80%を学習用、20%をテスト用に分け、環境条件を予測する手法と、その条件から作物を分類する手法を比較しました。

作物の分類では、複数の判断用の木を組み合わせる「ランダムフォレスト」と、深層学習の一種であるCNNが約99%の正解率を示したと著者らは報告しています。ランダムフォレストは、分類の取りこぼしと誤判定の両方を評価するF1スコアでも0.995と、比較した手法の中で最も高い値でした。また、入力項目の優先度を調べた分析では、降雨量、湿度、カリウムが作物の推薦に大きく関わる項目として挙げられました。

環境予測と推薦をつなぐ実演

実演では、土壌の養分の値を入力すると、モデルが気温23.13℃、湿度81.20%、pH6.57、降雨量201.11ミリメートルという条件を予測し、それに合う作物としてイネを推薦しました。さらに、その後12か月の気温、湿度、降雨量、pHの推移を予測する例も示しました。これはモデルによる予測と推薦の結果であり、推薦どおりに栽培した場合の収量を示したものではありません。

著者らは、使用したデータが地域ごとの多様な農業条件を十分に表しているとは限らず、異なる季節や土壌での大規模な現地検証も十分には行っていないとしています。この研究が示したのは、土壌と気象の観測、将来の環境予測、作物の推薦を一つにつなぎ、作付け前の判断を支える仕組みです。

原著論文の著者・所属:Shreya Sriram(School of Artificial Intelligence , Amrita Vishwa Vidyapeetham , Coimbatore , Tamil Nadu , India)、Prajeesh C B、Delphin Raj、Anju S Pillai、Raghu T V、Manikandan V M

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shreya Sriram, Prajeesh C B, Delphin Raj, et al. AgriSphere: A Smart Agriculture Framework Integrating IoT and Artificial Intelligence for Adaptive Crop Selection. The Open Agriculture Journal 2026-09-11. DOI: 10.2174/0118743315503187260909160504. 原著ライセンス:CC BY.