著者の所属・活動拠点の国は、カナダです。

掲載誌:Journal of Stored Products Research

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:粒の間の空気を差し引いた性質を知る

高周波(RF)加熱は、電磁波のエネルギーで食品や農産物を内部から温める技術です。論文によると、収穫後の豆類の害虫駆除や、水分の少ない食品の殺菌などで検討されてきました。研究チームは、豆類の一種であるソラマメもこうした処理の候補になると位置づけています。

高周波でどれだけ温まるかは、材料の「誘電特性」で決まります。主な指標は二つあります。一つは電気エネルギーをためる度合いを表す「誘電率」です。もう一つは、そのエネルギーを熱として失う度合いを表す「誘電損失係数」です。どちらも水分、温度、周波数によって変わります。

ただし、豆のような粒状の材料を容器に詰めて測ると、豆そのものと粒の間にある空気をまとめた値になります。この値は詰まり具合によっても変わります。そこで著者らは、空気の影響を補正し、豆自体が持つ「固有の」誘電特性を推定することを目指しました。さらに、その値を条件から計算できる予測モデルの作成にも取り組みました。

何をどう調べたか

研究チームは、カナダで入手したソラマメ(品種Snowbird)の丸ごとの種子を使いました。水を加えて、水分含量を10.34〜20.14%の範囲で6段階に調整しました。水分含量は、水を含めた全体の重さに占める水の割合で表しています。周波数は5〜40.68 MHz、温度は20〜100 ℃の範囲で、詰めた状態の誘電特性を測定しました。

豆を詰めた層では、どの水分段階でも粒の間の空気がほぼ半分の体積を占めていました。そのため空気の補正が欠かせません。著者らは、豆と空気の混ざり方を表す三つの「混合モデル」(CRI、LLL、LE)を比較しました。あわせて、測定値と密度のばらつきが推定値にどの程度の不確かさを生むかを、乱数を使った多数回の試算(モンテカルロ法)で評価しました。

その結果、誘電率の相対的な不確かさの中央値は、CRIが12.3%で最も小さくなりました。LLLは13.5%、LEは21.8%でした。研究チームは、粒状材料での既存研究の裏付けとこの結果をもとに、CRIを基準の方法として採用しました。

主な結果:水分と温度が高いほど大きく変化

CRIで推定した豆固有の誘電率と誘電損失係数は、周波数が高くなるほど小さくなりました。また、水分と温度が上がるほどおおむね大きくなりました。その変化は、水分と温度がともに高い条件で最も顕著でした。推定値の範囲は、誘電率が4.21〜83.14、誘電損失係数が0.36〜85.46です。たとえば27.12 MHz、水分20.14%の条件では、25 ℃から100 ℃に温度を上げると、誘電率が21.84から57.43に増えました。

著者らは次の点も指摘しています。水分の多い豆では、加熱が進むにつれて高周波エネルギーをより強く吸収する可能性があります。一方で、実際の温度上昇は電界の分布や詰まり具合、熱や水分の移動にも左右されます。そのため、この結果だけで加熱が暴走的に進むことが示されたわけではないとしています。

予測モデルについては、誘電率を周波数の対数で表すモデルが、全データへの当てはめでR²=0.9955を示しました。R²は1に近いほど予測が実測に合うことを示す指標です。データの一部を外して予測する検証(交差検証)でも0.9943でした。ただし、ある水分段階のデータを丸ごと外して予測した場合は0.9493に下がりました。

誘電損失係数では、三つのモデルを比べました。項の多い拡張型の経験式は、当てはめ(R²=0.9834)でも交差検証(0.9803)でも最も精度が高くなりました。しかし、水分段階を丸ごと外すと、式を一つに決めることができませんでした。一方、物理的な考え方に基づくべき乗則のモデルは、精度ではやや劣りました。それでも水分段階を外した検証でR²=0.7032を保ちました。項の少ない簡略型の経験式では、同じ検証で−0.0509にとどまりました。

この研究が示すこと

著者らは、詰めた丸ごとのソラマメについて、複数の産業用高周波周波数、水分、温度にわたり、粒間の空気の補正方法を比較しながら系統的に特性を調べた研究は初めてだとしています。得られたデータとモデルは、調べた条件の範囲内であれば、ソラマメの高周波加熱をシミュレーションする材料になると論文は述べています。

使い分けについて、著者らは次のように推奨しています。拡張型の経験式は、測定した6つの周波数で水分と温度の間を補う用途に限ります。5〜40.68 MHzの他の周波数を扱う場合や、測っていない水分条件への頑健さが必要な場合は、べき乗則のモデルを使います。また、空気を差し引いた固有の値は、豆を直接測ったものではなく、混合モデルに依存する推定値です。調べた範囲を超えて当てはめるには独立した検証が必要だという点も、研究から読み取れる重要な注意点です。

原著論文の著者・所属:Oladimeji Azeez(Department of Chemical and Biological Engineering, University of Saskatchewan, Canada)、Suka Thangaraju(Department of Chemical and Biological Engineering, University of Saskatchewan, Canada)、Oon-Doo Baik(Department of Chemical and Biological Engineering, University of Saskatchewan, Canada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oladimeji Azeez, Suka Thangaraju, Oon-Doo Baik. Intrinsic dielectric properties of faba bean for radio-frequency heating applications: Characterization and modeling. Journal of Stored Products Research 2026-10-29. DOI: 10.1016/j.jspr.2026.103289. 原著ライセンス:CC BY.