著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ソルガム(モロコシ)は乾燥や塩分に強い穀物で、半乾燥地などの条件が厳しい土地でも広く栽培されています。論文によると、穀粒の約65〜80%はでんぷんです。食料や飼料としてだけでなく、バイオエタノール、生分解性素材、接着剤やフィルムなどの原料となる工業用でんぷん作物としても注目されています。

でんぷんの性質は品種だけでなく、栽培方法によっても変わります。なかでもリンは、植物がエネルギーを使う仕組みや、でんぷんを合成する酵素の働きに深く関わる養分です。小麦や緑豆では、リンの量が穀粒の成分やでんぷんの性質に影響することが報告されてきました。一方、ソルガムについては、でんぷんの蓄積量、合成酵素、分子構造、粒の形、結晶構造、加工特性への影響をまとめて調べた研究は限られていました。そこで研究チームは、リン施肥の量によってソルガムでんぷんの合成、構造、機能性がどのように変わるかを、複数のスケールにわたって調べました。

どのように調べたか

実験は2023年、中国遼寧省瀋陽市の圃場で行われました。ソルガム品種「遼雑82」を使い、リン肥料を1ヘクタール当たり五酸化二リン換算で0、40、80、160kg施す4つの区(P0〜P3)を設けました。各区は3反復で、合計12区画です。肥料には過リン酸石灰を用いました。

研究チームは、穀粒が実る過程でのでんぷん量と合成酵素の活性に加え、収穫したでんぷんを多面的に分析しました。分析した項目は、でんぷん粒の大きさ、分子量、アミロペクチン(枝分かれの多いでんぷん分子)の鎖の長さの分布と枝分かれの度合い、結晶構造、水への溶けやすさと膨らみやすさ、加熱したときの粘りの出方(糊化特性)、熱に対する性質などです。

主な結果

リンを施すと、でんぷんの蓄積が促されました。ただし最も多く施したP3区では、実りの初期に蓄積が速まったものの、その効果は21日以降に弱まりました。最終的なでんぷん含量は無施肥区をわずかに上回る程度でした。論文によると、80kgのP2区では合成酵素の活性とアミロース含量が比較的高くなりました。

構造面では、アミロペクチンの枝分かれ度がP2区で最も高い5.89%でした。P3区では4.39%に下がり、無施肥区と同程度でした。どの区のでんぷんも結晶の型(A型)は変わりませんでした。一方、結晶の割合はP2区で最も低い16.68%となり、P3区ではわずかに上昇しました。分子の局所的な並びの規則性を示す指標も、P2区では無施肥区より11.85%低下しました。P2区では、糊化(加熱で結晶構造が崩れ、のり状になる現象)が始まる温度と、糊化に必要なエネルギーも最も低くなりました。

加工に関わる性質も変わりました。水への溶けやすさは無施肥区の19.42%から、P3区で最も高い25.36%まで上がりました。一方、粒の膨らみやすさは低下し、P3区で最も低くなりました。糊化特性を見ると、P2区は冷却後の最終粘度と、冷えたときの粘度の戻りが比較的高い特徴を示しました。P3区は最高粘度と加熱中の粘度低下がともに最も大きく、最高粘度に達するまでの時間も短くなりました。相関分析からは、こうした機能の違いが、でんぷんの総量だけでなく、アミロース含量、アミロペクチンの鎖の構成、粒の大きさ、結晶の秩序の変化とそろって関連していることが示されました。

この研究が示すこと

著者らは、80kgのP2区が低い結晶秩序や低い糊化温度といった特徴を示した一方、160kgのP3区は最も高い粘度を示したことから、適切なリン施用量は普遍的な最適値として一つに決まるわけではないと述べています。でんぷんにどのような機能を求めるか、その用途によって変わりうるという見方です。

あわせて著者らは、いくつかの限界も挙げています。使用した過リン酸石灰にはカルシウムと硫黄も含まれるため、観察された変化をリンだけの効果とは断定できません。また、試験は1品種、1地点、1作期で行われたものです。施用量は4段階のみで、施肥量と各特性の関係を描いた回帰分析は、試験の範囲内での探索的な記述にとどまるとしています。それでもこの研究は、リン施肥がソルガムでんぷんの量、構造、加工特性を連動して変えうることを示しました。用途に応じた施肥管理を考えるための手がかりとなる成果です。

原著論文の著者・所属:Baizhi Chen(Sorghum Research Institute, Liaoning Academy of Agricultural Sciences, Shenyang 110161, China)、Linlin Yang(Sorghum Research Institute, Liaoning Academy of Agricultural Sciences, Shenyang 110161, China)、Fulai Ke(Sorghum Research Institute, Liaoning Academy of Agricultural Sciences, Shenyang 110161, China)、Kai Zhu(Sorghum Research Institute, Liaoning Academy of Agricultural Sciences, Shenyang 110161, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Baizhi Chen, Linlin Yang, Fulai Ke, et al. From Phosphorus Nutrition to Starch Functionality: Effects of Phosphorus Fertilization on Sorghum Starch Biosynthesis, Multiscale Structure, and Processing Properties. Foods 2026-10-15. DOI: 10.3390/foods15203651. 原著ライセンス:CC BY.