著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、南アフリカです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

米国の食事ガイドラインは、食物繊維や微量栄養素を多く含む全粒穀物を食事に取り入れるよう勧めています。一方で、大学生は他の年代より全粒穀物の摂取量が少ないとされています。大学時代は長く続く食習慣が形づくられる時期であり、同時に2型糖尿病の危険因子が生じうる時期でもあります。

研究チームが注目したのが、全粒穀物の一つであるソルガム(モロコシ)です。抗酸化作用をもつ植物由来成分を多く含み、健康面での可能性が指摘されていますが、人の健康への効果はまだ十分に調べられておらず、一般にもあまり知られていません。また、栄養情報はSNSを通じて専門家以外からも広く発信され、その多くは不正確だと指摘されています。

そこで著者らは、大学生と大学院生を対象に、全粒穀物とソルガムについての知識、前糖尿病のリスクとそれに関連する要因、健康状態や生活習慣を調べました。前糖尿病とは、血糖値が糖尿病と診断されるほどではないものの、正常より高い状態を指します。あわせて、全粒穀物に対する受け止め方や食べ方、主な栄養情報の入手先も尋ねています。

どのように調べたか

調査は米国南部の大学に在籍する18〜44歳の学生を対象に、オンラインのアンケートで行われました。ある一時点の状態を調べる横断研究です。質問票は45問で構成され、回答者の属性、前糖尿病リスク、全粒穀物とソルガムの知識と受け止め方、全般的な健康状態、身体活動量を尋ねました。413人が参加し、回答の欠けが多い人を除いた248人分が分析されました。

前糖尿病リスクは、米国疾病対策センター(CDC)などが提供する「前糖尿病リスクテスト」で評価されました。年齢、糖尿病の家族歴、高血圧、運動不足、過体重や肥満などの項目に当てはまると点数が加算され、1点以上であれば「リスクの可能性あり」と判定されます。これは追加の検査を受けるべき人を見つけるためのふるい分けの道具であり、血液検査などで前糖尿病を確定したものではありません。体格の判定には、自己申告の身長と体重から計算した体格指数(BMI)が使われました。

主な結果

リスクテストに基づくと、参加者の63%が前糖尿病のリスクありと判定されました。平均点は男性が1.70点、女性が0.64点で、男性の方が統計的に有意に高い結果でした。複数の要因を同時に考慮した分析では、30歳以下の学生はそれより年長の学生に比べてリスクありと判定されるオッズ(起こりやすさの指標)が低く、肥満の学生は標準体重の学生に比べてそのオッズが約4倍でした。参加者の45.2%が過体重または肥満に当たりました。

全粒穀物については、92.3%が言葉を聞いたことがあり、81.9%が1日の推奨摂取量を知っていました。しかし、半数以上は全粒穀物の食品をどう見分ければよいか分かっていませんでした。自由記述の回答では、参加者は全粒穀物を栄養素や食物繊維、健康、米やパンと結びつけて捉えていました。病気の予防に役立つと考えている人もいた一方で、食べる主な理由は病気の予防ではなく、満腹感を長持ちさせることや減量でした。

ソルガムについての認知はさらに限られており、知っていたのは27%にとどまりました。自由記述の回答では、参加者はソルガムを主に家畜の飼料や家畜、グルテンを含まないことと結びつけていました。94%以上は人が食べるために調理しやすいかどうかを知らず、54%は食品産業での使われ方を知りませんでした。それでも、65.7%はソルガムが人の食べ物として健康的だと受け止めていました。

生活面では、自己申告で身体活動量が多いと答えた人が63.7%いましたが、健康状態を「とても良い」と評価した人は42.7%でした。また、主な栄養情報の入手先として最も多く挙げられたのはSNSでした。

この研究が示すこと

著者らは、「全粒穀物」という言葉を知っていても、何が全粒穀物に当たるのかを理解しているとは限らず、ソルガムについては知識の不足がさらに大きいと指摘しています。前糖尿病リスクが年齢や肥満と関連していたことも合わせ、大学生の段階から栄養に関する知識の不足に目を向ける必要があることを示す結果です。

ただし、身長・体重や身体活動量はいずれも自己申告で、血液検査による確認は行われていません。対象は1つの大学の学生に限られ、一時点の調査であるため、因果関係を示すものでもありません。それでも、栄養情報の多くをSNSに頼る学生が多いという結果について、著者らは、科学的な根拠に基づく専門家主導の栄養教育が必要であることを示すものだとしています。

原著論文の著者・所属:Andrea Sosa-Holwerda(Department of Nutritional Sciences, Texas Tech University, Lubbock, TX 79409, USA)、Surya Raj Niraula(Department of Nutritional Sciences, Texas Tech University, Lubbock, TX 79409, USA; Institute for One Health Innovation and Center of Excellence in Obesity & Cardiometabolic Research, Texas Tech University and Texas Tech University Health Sciences Center, Lubbock, TX 79430, USA)、Wilna Oldewage-Theron(Department of Nutritional Sciences, Texas Tech University, Lubbock, TX 79409, USA; Department of Sustainable Food Systems and Development, University of the Free State, Bloemfontein 9301, South Africa)、Naima Moustaid-Moussa(Institute for One Health Innovation and Center of Excellence in Obesity & Cardiometabolic Research, Texas Tech University and Texas Tech University Health Sciences Center, Lubbock, TX 79430, USA; School of Veterinary Medicine, Texas Tech University, Amarillo, TX 79106, USA)、Leslie Thompson(Department of Animal and Food Sciences, Texas Tech University, Lubbock, TX 79409, USA; Institute for One Health Innovation and Center of Excellence in Obesity & Cardiometabolic Research, Texas Tech University and Texas Tech University Health Sciences Center, Lubbock, TX 79430, USA)、Oak-Hee Park(Department of Nutritional Sciences, Texas Tech University, Lubbock, TX 79409, USA; Institute for One Health Innovation and Center of Excellence in Obesity & Cardiometabolic Research, Texas Tech University and Texas Tech University Health Sciences Center, Lubbock, TX 79430, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andrea Sosa-Holwerda, Surya Raj Niraula, Wilna Oldewage-Theron, et al. Mapping Knowledge Gaps: A Needs Assessment of Sorghum, Whole Grains Knowledge and Prediabetes Risk. Nutrients 2026-08-12. DOI: 10.3390/nu18162634. 原著ライセンス:CC BY.