この研究は、ドイツ、フランスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

慢性的な便秘は、腹部と脳の相互作用にかかわる不調のひとつとして広く知られており、生活の質を下げるだけでなく、医療費の面でも負担になると報告されています。治療の第一歩としては薬ではなく、食事や生活習慣の見直しが取られることが多く、その中には十分な水分をとることも含まれます。

研究チームは、水分補給のなかでも「硫酸塩とマグネシウムを多く含むミネラルウォーター」に注目しました。こうした水は便通を助ける可能性が指摘されてきたものの、その効果を裏づける研究はまだ少ないと著者らは述べています。そこで本研究は、この種のミネラルウォーターを毎日飲むことの効果と安全性を、実際の生活の場で検証することを目的としました。

どのように調べたか

研究チームはドイツ全国を対象に、参加者が自宅で取り組む形の試験を行いました。参加者も研究者も、どちらの水が配られたか分からない「二重盲検」という方法をとり、参加者は無作為に二つのグループへ振り分けられました。オンラインでの選考を経て157人が割り付けられ、年齢は18歳から75歳、国際的な診断基準(ローマIV基準)にもとづいて慢性便秘に当てはまる人が対象です。参加者の大半は女性で、便秘の程度は中等度または重度の人が多くを占めていました。

試験はまず1週間の準備期間から始まり、その間は全員がミネラル分の少ない湧水を飲んで、1日あたりの水分量を一定以上に保ちました。続く3週間の介入期間には、一方のグループが硫酸塩(1リットルあたり1,450ミリグラム)とマグネシウム(同89ミリグラム)を多く含むミネラルウォーターを1日1リットル、もう一方のグループが硫酸塩・マグネシウムの少ない対照用の水を同量飲みました。どちらのグループも1日あたり合計1.5リットル以上の水分をとることとされ、食事や運動、服用中の薬はそれまで通り続けるよう求められました。

主要な評価項目は、3週間後の1週間あたりの排便回数の変化です。参加者は毎日、排便の回数や便の状態(ブリストル便形状スケール)、飲んだ水分量を記録しました。このほか副次的に、便の硬さ、症状や生活の質を測る質問票、消化管の通過時間、下剤の使用、安全性なども調べられています。評価はすべて参加者自身の報告にもとづくものです。

報告された主な結果

あらかじめ主要評価項目として登録されていた3週間後の時点では、排便回数の変化に二つのグループの間で統計的に意味のある差は見られませんでした(p = 0.144)。一方、追加で行われた2週間後の分析では、硫酸塩・マグネシウムを多く含む水のグループのほうが排便回数の増加が大きく、週あたり平均1.31回の増加に対し、対照群は0.34回でした(p = 0.043)。この傾向は、便秘の程度が中等度から重度の人に限って分析すると、より明確になったと報告されています(p = 0.022)。

効果が現れるまでの日数にも差がありました。排便回数について「反応あり」とみなせる状態に達するまでの期間の中央値は、硫酸塩・マグネシウムを多く含む水のグループで9日、対照群で16日でした(p = 0.042)。中等度から重度の人だけを見ると差はさらに大きく、8日と16日でした。

一方で、便の硬さ、便秘に伴う症状、生活の質、消化管の通過時間については、二つのグループの間に統計的に意味のある差は見られませんでした。ただし著者らは、これらの項目でも両グループとも時間とともに改善が見られたと記しています。安全性の面では、どちらの水もよく受け入れられ、報告された有害事象は軽度で一時的なものにとどまりました。

この研究が示すこと

著者らは、十分な水分補給とあわせて硫酸塩とマグネシウムを多く含むミネラルウォーターを1日1リットル飲むことで、2週間の時点で排便回数が改善し、効果が現れるまでの期間が短くなったと結論づけています。同時に、登録された主要評価項目である3週間後の時点ではグループ間の差が統計的に有意ではなかったことも、論文のなかではっきりと示されています。

この試験の特徴は、参加者が自宅で日常生活を送りながら取り組む形で行われた点にあります。研究チームは、こうした条件のもとで得られた結果として、硫酸塩とマグネシウムを多く含むミネラルウォーターが、慢性便秘に対する安全で薬に頼らない食事上の選択肢となりうることを示唆するものだと述べています。

著者:Katharina Mansouri(Institute of Food and One Health, Leibniz University Hanover, Hanover, Germany)、Thierry Hanh(Independent Researcher, Paris, France)、Ronja Meyer(Institute of Food and One Health, Leibniz University Hanover, Hanover, Germany)、Andreas Hahn(Institute of Food and One Health, Leibniz University Hanover, Hanover, Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katharina Mansouri, Thierry Hanh, Ronja Meyer, et al. Daily consumption of sulfate- and magnesium-rich mineral water enhances bowel function in adults with chronic constipation: a randomized double-blind real-world trial. Frontiers in Nutrition 2026-09-24. DOI: 10.3389/fnut.2026.1924028. 原著ライセンス:CC BY.